オノレ・ド・バルザックのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
パリの死刑執行人の家系サンソン家4代目当主の、人生と苦悩。
サンソン家に直接取材し、多くの資料を基に書いたのは、
若き日のバルザック。本邦初訳。
・はじめに・・・翻訳にあたった経緯が書かれている。
1830年に共著二巻本で出版。バルザックと共著者の
書いた部分を振り分けた本を基に翻訳、等。
全14章。
・シャルル―アンリ・サンソン関係略年表
・サンソン家関連文献・資料案内
サンソン家歴代当主の残した手記や日記等の多数の資料と、
5代目当主から聞き取った記録から、サンソン家4代目
シャルル―アンリに成り代わって語る、死刑執行人の姿。
敬虔な彼を偏見と誤った情報が苦しめる。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ読むのにとても時間がかかり挫折しそうだったが、真ん中のヴォートランの秘密辺りから加速。
解説に「主人公はパリ」と書いてあるのにとても納得。途中気になった、登場人物の他の作品での展開もあるらしい。
ゴリオ爺さんの最後、溺愛する娘たちに看取られず悲しすぎた(自分は家族の愛に感謝し、大切にしようと思った)。ウージェーヌ、身の丈に合ってない社交界に入るのだが、ゴリオ親子を見てこの世界に闘いを挑む最後は救われる。
しかし、この時代のパリの文化はすごい…。夫人を平気で誘惑。きらびやかなパーティー。贅沢な暮らし(光と影)。調べたら、ショパンの時代も重なっている。 -
Posted by ブクログ
大学生の身でありながら学問はさぼりがちで
人妻訪問にばかり精をだす
ウージェーヌ・ラスティニャックがそうするのは
社交界で人脈を作ることこそ、出世の早道と信ずるからであるが
なにしろそのためには金がかかるのだった
そんな彼の前に、二人の男が現れては破滅し、去っていく
ジャック・コランとゴリオ爺さんだ
一人は、資産家の娘を篭絡してしゃぶりつくすことをそそのかす悪党
もう一人は、娘たちへの愛情だけを杖に生きてる惨めな老人
ウージェーヌは、そのどちらにも一定の共感を抱くが
しかし、どちらの示す道をも選ぶつもりはなかった
いわば父性との決別
それがナポレオン・ボナパルト斃れし後の
フランス共和主義の気 -
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Posted by ブクログ
すべてを愛す
裏返しは盲目
カミュの紹介から。
流れるような矢継ぎ早の表現に絡め取られて、煙にまかれてしまいそうになる。
同じパリに生きる人間を描いているというのに、サガンのそれとはまるで違う。サガンはたった数人の人間関係を持続させることで、気怠いパリの空気を吐き続けた。
バルザックは、その気怠さを金と愛の汚泥から容赦なく叩きつける。
描かれる人間それぞれに人生(ドラマ)を与えていて、きちんと役割をこなす。美しいものは美しく、汚れたものはとことん汚く、その予定調和さにどこか嫌悪を覚えてしまう。パリのみせる二面性があまりにもクリアなのだ。
ヴォートランの存在は作品全体に色濃く印象を与えていて、 -
Posted by ブクログ
オノレ・ド・バルザックのシニカルに満ちた役人論エッセイです。王政から民主政への過渡期の時代において、必然的に導入されることになった官僚制について、いち早くその本質を見極め、滑稽に描写したものになっています。
訳者の鹿島茂の指摘通り、官僚機構が非効率で無駄が多い理由として、バルザックは間接選挙で支配者が決まる民主国家そのものの構造にあるとしていて、「賞罰を心得た君主に仕える」のではなく、民主国家に仕えるということは、「すべての人びと」が主人である国家に仕えるということであり、それは「『だれにも』仕えないというに等しい」のであって、報酬と名誉が満たされない以上、だれだって真面目に働こうという気持ち -
Posted by ブクログ
フランス七月王政期あたり、フランスが近代国家の形を成しはじめた頃の、役人の生態を描くエッセイ。付録にバルザックの小説抄訳とフロベール・モーパッサンのエッセイがついている。それらの時代背景等については、巻末の訳者解説223頁~229頁に実にうまくまとめられている。現代のサラリーマン的な生活様式が、たしかに200年近く前に生まれたことが、同時代を生きた筆者たちの筆により確認できる。月並みだが、本当に今の役人・サラリーマンと変わらないと思った。またバルザックの抄訳小説では、「小さな政府」論が展開されており、そうした論が近代的な政府の成立とほぼ同時に生まれていたことに驚きもした。
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