浦雅春のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
表題作「桜の園」はチェーホフ最後の作品だそう。
本人はコメディとして書き、一部の人からは悲劇と評された、と巻末の読書ガイドには解説がある。自分にとってはどちらでもなく、歴史ドラマのようだった。
農奴解放以降も土地に縛られ続ける農民と、徐々に力を付ける商人と、じわじわ没落する貴族地主。貴族が競売で土地を失い、それを商人が買う、桜の木は切り倒されて、別荘地として開発される。貴族が土地を去る最終日までが描かれる。
悲劇といえば悲劇だが、それまでご先祖様を含めて充分に恩恵に与っただろうから、悲劇性はない。貴族の養女と商人の縁談がうまく行きそうで行かない辺りはコメディっぽくはあった。
他の二篇はドタバタ劇で、吉本新喜劇のようなテイスト。 -
Posted by ブクログ
ネタバレものすごい閉塞感が溢れる戯曲。かみ合わない会話、実らない恋、中年の危機。生きていく意味を見いだせない空虚さを抱えた登場人物がたくさん出てくるが、同時に「人生に意味なんてない」という答えと「でも生きていかなくてはいけない」というあきらめが語られている。救いも希望もないけど、あきらめはあるのだ。
今ちょうど仕事を辞めたばかりで日々もやもやそわそわしてるので、三人姉妹のイリーナの「人間は誰でも、骨身を惜しまず、額に汗して働かなくてはならないって。人が生きている意味も目的も、その人の仕合わせも歓びも、そこにあるの。」という台詞には肩身の狭い思いがした。でも、働いてみたって後のイリーナのようにただただくたびれて虚無になって、生きる意味も歓びも実感できないんだけどね。
個人的にはワーニャ伯父さんのような生きていく意味が見いだせないという辛さよりは、チェーホフ自身の「人生に意味なんてない」というあきらめのほうが共感できる。鬱にただ耐え続けることが人生というこの感じ、そうありたくはないけど水のように自然に飲み込めるんだよな。寒い地域出身の鬱っぽい人間だからか、ロシア文学は昔から危険な親和性を感じるし、たぶん読まないほうがいいのだろう。どんどん暗くなるほうに引っ張られていく。 -
Posted by ブクログ
「小説は問題を提起しても答えは与えない」というチェーホフのスタンスが相変わらず(他の作品と同じで)示されている。教訓となるわけでも無いし、決して登場人物に共感できるわけでもない。にも関わらず、チェーホフ作品に惹かれるのは、彼の生きた時代におけるチェーホフのスタンスが現代に通じる点にあると思う。革命前夜の時代、教養はあるが社会で実際に役割を持つことはできない貴族、貧しい暮らしに喘ぐ下層階級、誰もが今の社会に不満を持っているのに、どうにもならないという諦観を持ってしまっている(直接的な批判を加えることをことごとく避けているチェーホフ作品において「しまっている」という表現はそぐわないかもしれない)。作品の中にこのような人々の姿が現れているが、これは問題に答えを与えないチェーホフにも同様である。チェーホフの作品にはこの時代のロシアの抱える問題が忠実に描かれているが、そこには革命への意欲などは全く感じられない。淡々としているのである。これが現代にも通じると思い、作品には共感しないがチェーホフには共感してしまうのだ。今の時代に問題ならいくつも挙げられる。だがそれをどう解決するかといえばお手上げ。自分の無力を漠然と感じるしかない。チェーホフ作品には「冷めた」現代人に通ずるところがある気がするのだ。
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・『鼻』、場面が奇妙すぎて、ちょいちょい誤読してるのかと思った。「鼻が制服を着て歩いてる」って言われましても。想像力が追いつけないよ。
・『鼻』の締め方良すぎる。この話と同じくらいわけのわからんこと、現実でもたしかに起こるわ。
・『外套』、まじめな小心者が舞い上がった直後に落とされるの辛い。終盤の怪奇小説パートでなんだか救われた。世間を見返してやれてよかったね。
・『査察官』、フレスタコフのしょうもないクズっぷりが清々しくて好き。登場人物がみんな親近感の湧くクズ。慌てふためくクズを遠目に観察する感じのブラックコメディ。
・落語調の訳の主張が強すぎたな...。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ『桜の園』
日常の中のありふれた悲劇、って感じの書き方がかなり好き。
何かの本で読んだ、「『桜の園』で桜の木を切り倒す斧の音を忘れられる人は居ないだろう」って言葉を思い出しながら読んだ。戯曲としても見てみたい。
解説を読んで「その通りだな」って思ったけど、チェーホフは日常を切り取ってる。どれだけ重たい話し中でも、誰か階段を踏み外したり、テーブルクロスのソースのしみを眺めたり。そこがチェーホフの魅力。
『プロポーズ』は特に何も思わなかったです。魅力的な喜劇だと思う。
寂寥感?とか、桜の園目当てに読んだので。
『熊』
こっちもかなり好き。これも相当な喜劇だけど。
女性が魅力的だから刺さったんだと思う。強くて、正直で可愛い人。良かった。
解説、チェーホフ作品をまだ『かもめ』しか読んでないので、ざっと読み飛ばしてしまいました……。またゆっくり読める日が来れば。 -
Posted by ブクログ
この新訳は落語調になっているときいたのでどうなんだろうと多少心配しながら読んだが、話となかなかあっていて読みやすく面白かった。
別の訳で読んだことがある人はどうおもうかはわからないけど…私はこれがはじめてだったので違和感は感じなかった。
『鼻』は、ある日鼻が顔からなくなっていてその鼻が服を着てそのへんを歩き回っており…という話でシュール。
これは落語調じゃなければ余計意味わからん…って思いそうな話ではあった。
『外套』は、貧しい役人が頑張って新しい外套を手に入れるものの…という話。
これは語り口のおかげで笑える場面も多かったが、基本的にはロシアの下層民の憐れさ、それでも生きているし尊重すべきであるというのがえがかれているのかなとおもった。
そういうところがドストエフスキーにも影響を与えたのかな、と。
一番面白かった。
『査察官』は、ドタバタ勘違いコメディな戯曲。
査察官でもなんでもない男を査察官だと勘違いした村の人々は…という話。
想像してたのはもっと暗い話だったのでこんなギャグみたいな話だったのかとびっくり。
いままでは検察官と訳されてたらしいけど査察官のほうがあってるらしい?
たしかに読んでみるとこれは検察官ではないよな、とおもった。