飯田亮介のレビュー一覧

  • 素数たちの孤独

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    まずタイトルがいいです。理系が大好きな素数ですよ。タイトル買いでした。

    幼少期のスキー事故で足が不自由になり、拒食症の少女アリーチェと、ある過去の罪を背負い、自傷癖のある数学の天才少年マッティアの幼少期から大人になるまでの物語です。

    マッティアが数学専攻なので、双子素数という話がでてきて、間に一つだけ偶数をはさむ素数のペアのことらしいですが、まるで主人公の二人のようでした。

    二人を取り巻く周りの人たちも苦しんでいる素数たち。心理描写が美しい。分かり合えない苦悩を数学にかけてるのがおしゃれだなあと思います。

    孤独な二人がお互いを必要としながらも、不器用な接し方しかできない、二重螺旋のよう

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    2025年11月22日
  • 失われた女の子 ナポリの物語4

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    小説としてここまで客観的な視点が入らない物語も中々無いのではないか。
    作中はエレナが自分とリラの人生を一から振り返り、書き連ねている形のため、全巻通してエレナの心情や苦悩、空想も含め全て赤裸々に語られていた。
    2人の波瀾万丈な人生を描いてはいるが、客観的に語られていればここまで惹きつけられる内容にならなかったと感じた。
    エレナの細部にまで渡る心情の描写、最後の最後まで囚われたかのように自身とリラを比較し続けてしまう想いが綴られてこその魅力になっている。

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    2025年03月15日
  • 逃れる者と留まる者 ナポリの物語3

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    ネタバレ

    エレナはナポリを離れ結婚生活を始めるが、思い描いていた結婚生活を送ることができずにいた。そこで何十年も思い続けているニーノとの再会を果たす。国内の情勢の変化に伴い混沌とした環境で苦しむリラを支え、自らの著作活動も進まず、夫への愛情も見失い、子育てにも苦しむエレナはニーノと愛人関係に落ちてしまう。家族との訣別を決心しニーノと旅行に出かけるシーンで今回は幕を閉じるが、エレナとリラの人生はどのような顛末を迎えるのか。最終巻も楽しみにしたい。
    かつて暮らした街から逃れてもなおリラの幻想からは逃れられず、どれだけリラから離れようとしても節目節目でエレナの前に立ちはだかるリラ、死んでくれとまで願うほど憎む

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    2025年02月26日
  • 狼の幸せ

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    面白くて1日で読み終えた。本を読みながら、トーマチーズ、マリオ・リゴーニ・ステルンの小説に出てくる「マリオ風ジャガイモ」などを食べたくなった。
    シルヴィアがファウストにプレゼントする「富嶽三六景」。この小説ではモンテローザ山麓の移り変わる四季と登場人物の日々の暮らしが「富嶽三六景」のように描かれている。

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    2024年09月29日
  • 狼の幸せ

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    神々しく険しい山陵と様々な思惑が交わる麓の人々の生活、あとがきにもあるように富嶽三十六景のような美しい対比だった

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    2024年09月07日
  • 狼の幸せ

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    山に登りたくなる、山の麓に住んで暮らしてみたくなる作品。淡々とした文章だけど、その文章や表現の中に作者の山に対する気持ちや山に関わる人のことが描かれていた。
    心を穏やかにさせてくれる作品だった。再読したい。

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    2023年07月29日
  • 狼の幸せ

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    訳者です。コロナ禍でひととの触れ合いが難しい日々に執筆していたため、互いに寄りそい、触れ合う人々の優しさ・温かさを「狼」では描きたくなった、そんなことを作者はどこかのインタビューで答えていました。だから本作はいわば「帰りたい山」への郷愁の物語なのかもしれません。

    早川のnoteで訳者あとがきを公開しています。

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    2023年06月07日
  • 素数たちの孤独

    購入済み

    久々に読みごたえのある良作

    イタリアベストセラーというのが半分驚き。
    というのも中身がけっこう暗めで、マイノリティの話なので、そんな大勢に読まれるのか、と・・・。

    しかしながら読書好きは東西問わず、重さ、孤独が好きなのかもしれない。
    感情移入しながら読んでしまう。

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    2021年11月13日
  • リーマン・トリロジー

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    大傑作。NTL版より初代三兄弟以降の登場人物が多く、同じ登場人物でもその葛藤がより丁寧に描かれていたりもして、7,500円の価値は充分にある。マッシー二の他の作品も気になる。

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    2021年09月08日
  • コロナの時代の僕ら

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    静謐な文章だ。しかし、訳者あとがきであるように著者あとがきの「コロナウイルスが過ぎたあとも、僕が忘れたくないこと」にはかなりの熱量が込められている。コロナウイルスが過ぎ去った後には、「いったい何に元どおりになってほしくないのか」を考えている。元どおりになってほしいことではない。元どおりになってほしくないことだ。この視点はとても重要なことだと思う。

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    2021年08月15日
  • コロナの時代の僕ら

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    感染症とは僕らの様々な関係を侵す病だ…

    この災いに立ち向かう為に
    僕らは何をすべきだったのだろう
    何をしてはいけなかったのだろう

    そしてこれから何をしたらよいのだろう


    コロナ時代を生きる人々へ
    イタリアを代表る小説家が送る
    痛切で、誠実なエッセイ集


    何を守り 何を捨て 僕らはどう生きていくべきか


    2020年春ローマにて
    非常事態下で綴られたイタリア作家の叫び
    今読むべき傑作エッセイ




    物理学を専攻した作家パオロ・ジョルダーノ氏は
    この危機を「忘れたくない」と繰り返す


    ウイルスの不安や驚きに満ちた
    緊急事態の今だから
    ヒリヒリと感じる事を…


    落ち着いた私たちはたちま

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    2021年06月08日
  • 失われた女の子 ナポリの物語4

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    HBOでドラマ化もされたイタリアのベストセラー、ナポリの物語全4巻。とにかくはちゃめちゃに長い本なのだがあらゆる時間を削っても読ませるドライブがある。貧困と暴力にまみれたナポリのある地区。幼馴染みの女の子二人の幼少期から60年以上に渡る愛憎の物語。

    このお話は主人公のレヌーとリラの友情物語として紹介されることが多いようだけど、ただの友情物語では終わらず、猟奇的な「地区」に翻弄され縛り付けられる人間たちを群像劇的に描いた物語として読んだ。
    主人公はレヌーでありリラであるけれど、同じ地区に暮らす女たちの物語であり、ソラーラ兄弟の物語でもある。

    地区での日常が書かれる中に、イタリアならではの家族

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    2021年05月25日
  • コロナの時代の僕ら

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    ウイルスは変異するもの。ウイルスが変異した責任を問える相手はどこにもいない。ウイルスはただ変異するものなんだから。

    ただ……科学が万能だと信じられていた時代は過去のものだとわかってたけど、どう対応したらいいか、どの情報が正確なのか、どの意見が妥当なのか、そもそも耳を貸すべき専門家が誰なのかもわからず、身動きもできない状況に陥るとは……

    私にはもとから日常と呼べる日々は無かったけれど、それでも日常を手に入れるべく、どうにかやっていくしかない。

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    2021年04月18日
  • 老いた殺し屋の祈り

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     どこかかつて観た記憶のある映画のシーンが、深い水の底から浮き上がってくるような感覚。それが本作のいくつかのページで感じられたものである。語り口や物語の進め方が上手いのは、この作家が初の小説デビューにも関わらず、映画の脚本家としてならした経歴の持ち主だからだろう。

     作家が自分の物語として作り上げた「老いた殺し屋」オルソのキャラクター作りだけで既に小説を成功に導いているように思えるが、やはり彼の旅程を彩る派手なバイオレンス、また、彼が救い出す母子との交情の陰と陽のようなものが、この作品に、とても奥行きを与えているように思える。とりわけ少年と孤独な老人の間の不思議な絆ができあがってゆく風景は、

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    2021年04月05日
  • 素数たちの孤独

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    ネタバレ

    なんの話か?と思うような断片的なエピソードが重なり、人物像があらわれてくる。
    エピソードの中にはかなり生理的に受け付け難いものもあり、主人公たちが受ける心の傷を理解できる。
    理解はできるけれど、なんで、もう、そんなにも不器用なの?なんでそんなに、あちこちつまづくの?さらっと流して行けないの???
    と言いたくなるような不器用すぎる人生にイライラしっぱなし。
    拒食気味で偏屈なアリーチェと、自閉症気味のマッティア。
    他人も巻き込んで、はた迷惑ながんこさ。
    拒食で出産を拒否する妻に絶望して去っていく、アリーチェの夫ファビオは被害者とも思う。
    その時に、アリーチェは9年ぶりにマッティアに連絡を取る。魂の

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    2020年09月06日
  • 素数たちの孤独

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    過去の傷を引き摺る男女の人生を辿りながら、その出会い、交錯、別れ、再会を繊細な筆致で綴る傑作。処女作で権威あるイタリア文学賞を受賞し、人口6000万人のイタリアで200万部を売り上げたのも納得。物語全体の完成度の高さはもちろんのこと、一文一文の表現の巧みさまで語り尽くしたくなる作品です。原語が読めたら、もっと素敵なのでしょう。

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    2020年07月04日
  • 失われた女の子 ナポリの物語4

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    終わってしまった…読み終わったばかりでまだ咀嚼しきれていないけれど、とりあえず読みながら考えていたのは、これほど女性の友情をリアルに率直に描いた作品を読んだのは初めてかもということ。全く違う個性の他人同士がお互いに惹かれ合い、気が合い、友達になる。相手への共感や憧れ、好意、信頼だけでなく、相手には負けなくないという気持ちや嫉妬、反発もある関係。お互いに相手の全てを受け入れられるわけではなく、嫌悪感を持つところもあったりする。長い人生の中で親密な時もあれば離れる時もある。それでもお互いが唯一無二の存在である。とてもとても複雑な、一筋縄ではいかない関係。ある意味、恋愛関係よりも濃くて深いかもしれな

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    2020年07月01日
  • 失われた女の子 ナポリの物語4

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    いよいよ最終巻。1〜2巻の華やかな展開に比べ、3巻はフェミニズム、政治を中心に勝ち目のない絶望的な圧で喘ぐ2人にこちらも息ができなかった。4巻は2人の安定な暮らしの危うさとリナの脆さの秘密がちらりと見えてそして。読み終えてしまった。初めて「リラとわたし」を手に取って夢中でページを繰った、2人に出会えたあの日に戻れたらと思う。

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    2020年05月31日
  • コロナの時代の僕ら

    jun

    購入済み

    新コロナは全生態系の危機

    未だ新コロナの感染が拡がる状況の中で、グッド・タイミングの出版です。物理学出身である著者の数学的な説明も簡潔で判り易く、しかしあまり数学的、或いは統計的なデータの解析を展開する事無く、人類史的・文化的・文明的な洞察に溢れています。今回のパンデミックが国境を超えた全人類の危機というだけでなく、地球上の全生態系の危機と捉えなければならないと考えさせられます。

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    2020年05月09日
  • 失われた女の子 ナポリの物語4

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    3年がかりで刊行された「ナポリの物語」が、遂に完結した。してしまった。最終巻を読みながら、残り少なくなっていくページが惜しくて惜しくて。ずっと、このなかにいて、リラとエレナを見ていたかった。
    最終章を読み終えて、一巻の冒頭へ戻り、また反芻して。。面白い本は、読み始めて数秒でブラックアウトする感覚があり、このシリーズはずっとそんな幸せな感覚のなかで読んだ。ページを開くと、私もナポリの町に居る。貧困と、暴力と、噂話と、男達女達の駆け引きと、金と、クスリと、ありったけの生にまみれたあの「地区」へ、私も運ばれていく。

    リラと私、ことエレナの手記として始まるこの長い物語。リラは極端で、野生動物のように

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    2020年04月22日