飯田亮介のレビュー一覧
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良書ではあると思うものの、気候変動や紛争、原爆など様々な現代問題を取り上げているとあって期待していた分、肩すかしの内容だった。もう一歩を期待していた。
どれに対しても明確な答えには行きつかないし、原爆については日本人としてはもう少し丁寧に扱って欲しい題材とすら思ってしまった。単なる物語の構成の一つにされているような感覚があった。
"ひとはたったひとりの男の子の物語によって全世界を嘆くことができる。"という帰結は物語への希望を示していて納得感はあるものの、その"物語"が生み出せていないのが現代なのではないか?
物語の力を信じたいと思う一方で、世界を変え -
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Posted by ブクログ
いわゆる自伝的小説。
英語ではauto fiction というらしい。
半分事実がもとで半分フィクション。
主人公の周りに起こるいくつもの話が進行していくから入り込むのに少し時間はかかるけど、入ってしまうと中々面白い。
読んだ第一印象は「正直な人だなぁ」。
あまり人に語らないような暗い部分をうまく表現している。物語が進むにつれて、本人が抱える不安だったり葛藤だったりが自分にも、そして社会にも当てはまることに気がついて、その機会(気がつく機会)を与えてくれたことに感謝する。
読みやすい読みづらいで言ったら読みづらいけど、良い読書時間だった。 -
Posted by ブクログ
pp.80-81
「科学に置ける聖なるものは真理である」(『シモーヌ・ベイユ選集III』冨原眞弓訳、みすず書房)哲学者のシモーヌ・ベイユはかつてそう書いた。しかし、複数の科学者が同じデータを分析し、同じモデルを共有し、正反対の結論に達する時、そのどれが真理だというのだろう。
今回の流行で僕たちは科学に失望した。ただ僕らは忘れているが、実は科学とは昔からそういうものだ。いやむしろ、科学とはそれ以外のかたちではありえないもので、疑問は科学にとって真理にもまして聖なるものなのだ。今の僕たちはそうしたことには関心が持てない。専門家同士が口角泡を飛ばす姿を、僕らは両親の喧嘩を眺める子どもたちのように下か -
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ネタバレ著者の前作「帰れない山」のように、この本も季節と時間によって移り変わる山の美しい描写が良い。そして、おいしそうな山の食事!夏に樵たちのコックをするファウストの章が一番好きだ。パスタ、肉、じゃがいも。焼ける唐松のにおい。サントルソや樵たちががやがや食事する。何気ない章なんだけど、武骨なのにさわやかで、思い切りそこの空気を吸い込みたくなるような魅力がある。
この本の中では、毎日たくさんの人が食事をしては去っていき、山と人は移り変わっていく。景色を変えながらも、山はいつでもそこにそびえ立って人々を見下ろしている。たった一年ではあるけれど、4人の主人公もまた場所を変え、生活が変わり、移り変わっていくの -
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Posted by ブクログ
コロナについて書かれたエッセイと言うことで、気になって買ってみた。筆者はイタリア在住のエッセイストと言うことで、その点も気になってはいた。
エッセイを読み始めてまず感じた事は、コロナが始まってまだ2年しか経っていないと言うのにこれが始まった当初のことがすごく懐かしく思えたことだ。 それだけ、このエッセイはコロナ当初の空気感をよく切り取って表現している。
ただ文章全体がエモいのではなく、筆者の趣味として数学があるからか、文章にはどこか理系的というかロジカルな雰囲気を感じた。
印象に残ったのは、人間の視点ではなくウィルスの視点で世界を見てみること。
人間による自然破壊の結果、ウィルスが自然