飯田亮介のレビュー一覧
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分厚さに最初は怯んだものの、一気に読み終えてしまった。それくらい空気感が自然で、引き込まれる。リラとエレナの女の友情のゆらぎ、地縁や階級に縛られた人間関係。自分とは違う国、時代を生きているのに、自分の小中時代を思い出して重ねてしまった。それくらい感情がリアル。夢想しては現実を見つめて、リラと近づいては遠のいて…相反する感情のせめぎあい。周縁消滅-ズマルジナトゥラ-という感覚も、なんとなくわかる気がする。青春期、今までと見える世界が変わって、家族を全く違う他者として認識する感覚…。2巻以降でもこれについては触れられるのだろうか。まだまだ序盤なので、これからさらにこの世界観にトリップできるのが楽し
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当然ではあるけれど、陽気な人が多いイメージのイタリアにも内向的な人はいるはずで。
内向的な二人が出会う恋愛小説。ストレーガ賞受賞作。
410ページで、全7章の構成。半分の200ページを5章(20歳くらい)までで使い切ってしまう。
二人の人格がどうやって形作られてきたか、
それをさっと書いて、その後後半でくっついたりすれ違ったりが、書かれているイメージ。
アリーチェとマッティアがそれぞれ語り部となって2人の出会いを物語っていく。
一人称で語って行くから、
二人それぞれの主観的、独りよがりな感じをを明確に感じさせる構成。
読者の価値観や年齢によって、感じ方が分かれそうな作品。我儘ねぇ、とか、そ -
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ネタバレミラノ生まれの作家、パオロ・コニェッティは子どもの頃から夏になると一九〇〇メートル級の山地にあるホテルを拠点にして登山や山歩きを楽しんできた。三十歳を過ぎた今も、モンテ・ローザ山麓にあるフォンターネという村に小屋を借り、その土地で目にした自然と生き物の様子やそこに生きる人々の飾らない暮らしぶりをノートに書き留めては創作の糧にしてきた。デビュー作『帰れない山』以来、作家本人を思わせる一人の男の目を通して、山で生きる厳しさと愉しさを描いてきたが、今回は四人の男女の視点を借り、山で生きる男と女の関係に迫っている。
小説はフォンターナ・フレッダのほぼ一年を扱っている。四季の移ろいとそこに暮らす人々の -
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ネタバレモンテ・ローザの麓フォンターナ・ブレッダを舞台にミラノから離婚してやってきた作家ファウストと彼を雇ってくれたバベット、元森林警備隊員のサントルソとウェイトレスのシルヴィア。この4人が関係を築き影響を与えあいながら変化していく。自然描写の息を呑むような美しさと綺麗事だけではないトイレ事情などの生活面での厳しさ。一年を山や森林の変化と狼の見え隠れする存在感で満たした文章の美しさ、ディネーセンに捧げられたよう気がしました。また北斎を意識した36章仕立て、富士山ならぬモンテ・ローザを背景に人間たちの営みが描かれユーモアにも優れています。
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なかなかおもしろかった
「素数は1とそれ自身でしか割り切ることができない。自然数の無限の連なりのなかの自分の位置で素数はじっと動かず、他の数と同じくふたつの数の間で押しつぶされてはいるが、その実、みんなよりも一歩前にいる。彼らは疑い深い孤独な数たちなのだ」と本文には書いてある。
そして、孤独には『積極的な孤独(Solitude)』と『消極的な孤独(Loneliness)』があり、原題では前者が使われている。
主人公はふたり。アリーチェという少女と、マッティアという少年。
アリーチェは拒食症で、マッティアは数字の天才。
子どものころ、アリーチェはいじめにあっていた。そしてマッティアは発達障害 -
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4部作を一気に読んだ。長く濃密な旅路だった。
世界的ベストセラーになったのは、あらゆる境遇の人の共感を得やすいからだろうか。二人の主人公と言うべきエレナとリラは共にナポリの貧しい地区出身で、中学にすら行く子供が珍しい環境で育つ。しかし、共に素晴らしい頭脳を持ちながら、教育を受ける機会を獲得し都会に出て徐々に知識人・中流階級へ仲間入りしていくエレナとは対照的に、リラは進学を阻まれ10代で商店主と結婚し、以降の人生もナポリの地に根を生やし続ける。しかし2人の友情は、互いへのごく繊細な愛情・羨望・憎悪・嫉妬をない混ぜにしながら、一種の複雑な共依存の様相を呈し、生涯にわたって続くことになる。
一巻の -
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オルソ”熊”と呼ばれる男がいる。
その名の通りの195センチの大男で、鍛えられた肉体を持つ。
数多くの逸話で語られ、齢60を過ぎても組織のトップ、ロッソの右腕。恐れと尊敬を持って扱われている未だ現役の殺し屋だ。
物語はそんなオルソが病院で目覚めるところから始まる。
心臓発作を起こして目覚めたオルソは死を間近に感じて、それまで唯一心から愛した女性アマルの現在を知ろうとする。
アマルが妊娠したことをきっかけに組織を抜け、2人で生きようと決意したことがある。だが組織内で特に信頼されているオルソのことをロッソは手放そうとはしなかった。逆にアマルと娘のグレタの命を危機に晒すことになる。オルソは2人の安 -
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コロナ禍(2020年の流行初期)のイタリアにいる著者のエッセイをまとめたもの。
大学での専攻は素粒子物理学とのことで、冷静に、数学的に今回のコロナ禍を見つめているような文章。
このようなウイルスは、人間の行う環境破壊や今までにない生物の乱獲などが原因でまわりまわって出現してきたと書かれていて、そんなことは考えてもみなかったので驚いた。
自分が生きている間はもう、このような世界的ウイルス流行はないと勝手に思っていたけれど、全くそうではない可能性があると知り危機感を覚えた。あまりに表面的なことしか見ていなかったなぁと反省…
全ては人間の行いに繋がっているという側面で、コロナ禍が過ぎたあとに、何 -
Posted by ブクログ
今から2年も前の出版物とは思えないほど、現在の私たちに当てはまることが多く、この2年で随分変わったように思えても、結局は同じことを繰り返しているのだと気付かされた。
見えないものとの戦いは私たちを疲弊させる。痺れを切らした私たちは、自粛や感染症対策についての「甘い」情報を理由にして規制を緩めてしまう。一方で「厳しい」情報もあり、なにが正しくてなにを信じたらいいのか定まらない。
科学は日進月歩だから、情報には新しいものも古いものもある。それを私たちはどう見極めればよいのかというと、なかなか難しい。
この作品はわかりやすい比喩と、わかりやすい数字を用いて私たちの行動や気持ちに訴えてくる。
また -