飯田亮介のレビュー一覧

  • 素数たちの孤独
    なかなかおもしろかった

    「素数は1とそれ自身でしか割り切ることができない。自然数の無限の連なりのなかの自分の位置で素数はじっと動かず、他の数と同じくふたつの数の間で押しつぶされてはいるが、その実、みんなよりも一歩前にいる。彼らは疑い深い孤独な数たちなのだ」と本文には書いてある。
    そして、孤独には『...続きを読む
  • 失われた女の子 ナポリの物語4
    4部作を一気に読んだ。長く濃密な旅路だった。
    世界的ベストセラーになったのは、あらゆる境遇の人の共感を得やすいからだろうか。二人の主人公と言うべきエレナとリラは共にナポリの貧しい地区出身で、中学にすら行く子供が珍しい環境で育つ。しかし、共に素晴らしい頭脳を持ちながら、教育を受ける機会を獲得し都会に出...続きを読む
  • 狼の幸せ
    大きな話ではないんだけれど、読んでいる間この山にいられることが心地よい。

    とにかく出てくるお料理が皆美味しそう。
  • 狼の幸せ
    作家のファウストはパートナーと別れ、イタリアンアルプスの集落フォンターナ・フレッダに来た。そこでコックとして働くことに。冬の山はスキー客などで賑わい、冬が終わると人がいなくなる。ファウストはこれまでと、これからを考え始める。集落での出会い、生活、山やその周辺の自然の大きさがファウストを変えていく。作...続きを読む
  • 老いた殺し屋の祈り
    オルソ”熊”と呼ばれる男がいる。
    その名の通りの195センチの大男で、鍛えられた肉体を持つ。
    数多くの逸話で語られ、齢60を過ぎても組織のトップ、ロッソの右腕。恐れと尊敬を持って扱われている未だ現役の殺し屋だ。

    物語はそんなオルソが病院で目覚めるところから始まる。
    心臓発作を起こして目覚めたオルソ...続きを読む
  • コロナの時代の僕ら
    コロナ禍(2020年の流行初期)のイタリアにいる著者のエッセイをまとめたもの。
    大学での専攻は素粒子物理学とのことで、冷静に、数学的に今回のコロナ禍を見つめているような文章。

    このようなウイルスは、人間の行う環境破壊や今までにない生物の乱獲などが原因でまわりまわって出現してきたと書かれていて、そん...続きを読む
  • コロナの時代の僕ら
    今から2年も前の出版物とは思えないほど、現在の私たちに当てはまることが多く、この2年で随分変わったように思えても、結局は同じことを繰り返しているのだと気付かされた。

    見えないものとの戦いは私たちを疲弊させる。痺れを切らした私たちは、自粛や感染症対策についての「甘い」情報を理由にして規制を緩めてしま...続きを読む
  • 素数たちの孤独
    心と体に傷を負った少年少女が、苦しみを抱えながらもがきながら成長していく話。
    それぞれの人生が交互に語られ、その孤独の深さにこちらも辛くなるが、微かな光が差し込むラストに心が救われた。人生の様々な局面で選ばなかった答えを、もし、自分が選んでいたら…そんなことを考え余韻に浸っている。
  • リーマン・トリロジー
    最初分厚さに怯んだものの、散文詩のような形式と、リズミカルな会話体?のテンポの良さ、それと軽快で妙なユーモアがあってスイスイ読める。読み終わってみれば、これは確かにお芝居やミュージカルっぽいし、映画化もありだなと思う。
    面白かった。
  • 素数たちの孤独
    これでいい。終わり方はこれでいいんだと思う。途中でおそらく誰もが想像する終わり方だったら、安っぽいし、だいたいファビオとナディアが「なんだったの」になってしまうではないか。この終わり方だからこそ、いろいろ考えてしまうし、しみじみとした余韻が残る。
  • コロナの時代の僕ら
    僕は忘れたくない。今回のパンデミックのそもそもの原因が自然と環境に対する人間の危うい接し方、森林破壊、僕らの軽率な消費行動にこそある事を。
  • コロナの時代の僕ら
    自分の損得勘定だけにもとづいた選択はベストな選択とは言えない。真のベストな選択とは、僕の損得とみんなの損得を同時に計算に入れたものだ。(41ページ)

    感染症の流行に際しては、僕らのすること·しないことが、もはや自分だけの話ではなくなるのだ。(44ページ)

    今回のウイルスを季節性インフルエンザと勘...続きを読む
  • コロナの時代の僕ら
    昨年4月に緊急出版。2021年7月時点で、日本では、まだコロナ禍のまっただなか。本書あとがきの「コロナウイルスが過ぎたあとも、僕が忘れたくないこと」が、自分にとって何かを考えて、生きていたい。
  • コロナの時代の僕ら
    この本が、2020年3月26日に原書で刊行されていた、こう事実がお見事だな、と思いました。そして、日本語版は2020年4月24日の刊行。うむ。迅速である。お見事ですね。

    今、この感想を書いているのは、2021年5月24日ですので、自分はほぼ一年遅れでこの作品に出会ったのだ。うーむ。もったいないこと...続きを読む
  • 素数たちの孤独
    体に傷を負った少女と心に傷を負った少年の
    孤独な1人と1人の物語。

    2人が出会う前、出会ってから、離れたり
    再会したりする中でそれぞれに「救い」の
    存在を探し求めながら成長していく姿が
    描かれている。

    事故で片足が動かなくなった少女アリーチェと、
    知的障害がある双子の妹を自分の故意による
    行動に...続きを読む
  • 老いた殺し屋の祈り
    還暦を過ぎた殺し屋オルソが40年前に生き別れになった恋人と娘を探しに行くという話。ありきたりな設定ではあるけれど中身は面白い。老いと病があるなかで激しいアクションもある。これが読み応えがある。途中で出会う女性とその息子との交流のホッとする場面と命を狙われている緊張感。殺し屋を引退しようと決意したとき...続きを読む
  • コロナの時代の僕ら
    イタリア人作家にして、素粒子物理学専攻の博士課程修了という著者による、2020年3-4月頃、つま新型コロナの感染がイタリアでも拡大し始めた頃の病名COVID-19、ウィルス名SARS-CoV-2の感染症に向き合い、コロナ後も忘れたくないことといった視点での科学者・数学者的なエッセイ集。
    CoV-2に...続きを読む
  • コロナの時代の僕ら
    単にコロナ禍でのイタリアの状況を述べたものでなく、コロナ感染拡大の中で、個人の内面と向き合い、そこから人類全体が抱える問題にまで思索を巡らしている点が良かったです。
    また後書きが素晴らしく、コロナ収束後の「忘却」について触れている部分は皆が読むべきでしょう。
  • コロナの時代の僕ら
    この「まさかの事態」を忘れないために。

    誰が何を言って、誰が何を言わなかったのか。すでにもうかなりのことを忘れかけている。間違いなく世界の歴史に重大な出来事として刻まれるだろう、新型コロナウイルスによる感染症の全世界的な拡大。それぞれが、それぞれの場所で、それぞれの日々を生きている。その、イタリア...続きを読む
  • コロナの時代の僕ら
    この本は2020年2月、3月のイタリアで書かれ、4月に日本で出版された本である。
    そこから1年近くが経過し、まだ私たちはコロナの時代の渦中にいる。終息の目処さえ立っていない。

    忘れたくない、とコロナ禍の初期段階で終息後の私たちに投げかける言葉を記した著者。
    コロナ疲れなんていう言葉が生まれる私たち...続きを読む