池上俊一のレビュー一覧
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個人的には傑作新書の一つ。
パスタというイタリアの国民食を通してイタリア史を語るという試みは面白いと思った。冒頭に、日本でのパスタの受け入れられかたが書かれているので、興味も持ちやすいし、なによりも最初の写真が美味しそうで良かった。
イタリアではパスタが昔から食べられていたわけではなく、最初はミネストローネを庶民は食べていて、パスタは王侯貴族の食べ物(小麦粉で作るから当たり前か)だったのが、都市経済の発展によってどんどん庶民の、母が作る家庭料理になっていく様子が書かれている。もちろん、技術の発展や、新大陸発見によるトマトの流入などが、パスタに進化と洗練をもたらした。
こういう質の高い新書 -
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ネタバレ[ 内容 ]
シエナ、この世界にもまれな美しい都市はどのようにして誕生したのか。
中世のシエナは、北ヨーロッパとローマを結ぶ街道の要衝を占め、経済的繁栄を謳歌する。
蓄積された富は、白鳥のようなゴシック・カテドラルをはじめ、豪奢な建築や魅力あふれる広場・街路に姿を変えた。
トスカーナの自然と人間の叡智が出あい、美しく結晶した「聖母マリアの町」を、時空を自在に横断しながら案内する。
見どころやグルメのガイド付き。
[ 目次 ]
第1章 自然の力と人間の匠
第2章 都市の宇宙空間
第3章 コントラーダ―シエナ社会の細胞
第4章 芸術のリリシズムと誇大妄想
第5章 神秘か邪教か
第6章 悦楽のトポ -
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☆☆☆ 2025年7月 ☆☆☆
もともと僕はヨーロッパで一番好きな国はスペインであった。しかし21-22シーズンから本格的にブンデスリーガの観戦をはじめたことで、僕の中でドイツのウェイトがとても高くなっている。そこで『森と山と川でたどるドイツ史』を手に取った。ドイツといえば森、これはとてもイメージしやすい。「シュヴァルツバルト(黒い森)」と呼ばれる地域があり、そこにはフライブルクという町、サッカークラブがある。
森というものの存在、神秘性がドイツ国民に与えてきた精神的、文化的影響は大きい。時には信仰の対象に、または恐怖を感じるものでもあった。実用面でも家畜の放牧地としての価値もあり、それが「 -
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陰謀論が実害を伴って表出した出来事は数多くあるが、魔女狩りはその一つである。「魔女」といっても二割程度は男性もいたらしい。また、「狩り」といっても正式な裁判で裁かれる事が多かった。但し、凄惨な拷問もあったらしいが。ターゲットにされたのは実際に悪魔信仰に関わっていた人達と誤解や嵌められた人達。
ホウキで空を飛ぶ。飛ぶ方も飛ばれる方も、本当に信じていたかは分からないが、そうしたオカルトな内容も含めて真面目に解説するのが本書の魅力。面白かった。
科学的に理解不能な領域が多く残された時代。理解可能な範囲の差し引きとして存在した神と悪魔。そこから派生したのが魔女。なぜ、女性?というのが気になった。
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現代の感覚からすると存在が考えられない魔女だが、中世ヨーロッパでは魔女狩りと称して多くの老齢の女性、男性(妖術師)も該当したようだが、処刑されている.悪魔を中心とする魔女集会をサバトを呼んで、それに参加したことが重要な証拠としてカウントされた由.ただ、参加者が現行犯逮捕されたことはないらしく、想像上のイベントだったようだ.魔女狩り自体がキリスト教の権威を補完する行為だったようで、様々な著書が存在している.当然ながら、批判的な論考も出版されており、そういう意味で言論の自由があったことは評価できると感じた.裁判の過程で拷問が合法化されていたのはやや異常と思うが、存在しない事象を裁くので自白が重大な
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ネタバレ意味不明系の偉人の筆頭。百年戦争の最中、辺境から突然現れ、苦境に陥っていたフランスを勝利に導いた少女。世界史のバグのような存在だと思っていたが、本書を読んで、なぜジャンヌが世界史の表舞台に出てきたのかが納得できた。
前提として、まず百年戦争はイギリス対フランスという国同士の戦争ではなく、王族たちの壮大なお家騒動であった(登場人物の大半が親族同士で、同じ名前の人がたくさん出てくるので、誰が誰と戦っているのか大変わかりにくい。派閥の名前もわかりにくい。オルレアン公が中心の派閥なのにアルマニャック派とか。なぜ?)。だから、後世イメージ付けされたような、ジャンヌがフランスのナショナリズムを高揚させ、兵 -
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魔女狩り、ざっくりとしたイメージしかなかったので読んでみた
読んでみると魔女狩り自体は数世紀に渡って行われており、時代ごとに標的となる階層の人が変わっていたりと興味深かった。イメージとして多いのは農村にとっての余所者や下層民が魔女の典型だったが、16世紀以降は社会的地位が高い裕福なエリート層、貴族なんかが標的となっていたと知り、それはかなり意外であった
また宗教改革の影響なども記されており、その方向性から魔女狩りを論じたものを読むのは初めてだったが大変におもしろかった。特に宗教改革で有名なルターは政治と社会おける家父長制的秩序への反逆者、社会的規律化と絡んでいた国家およびその統治モデルたる家の -
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魔女狩りについては一方的に魔女と呼ばれた人がいること、そして魔女と呼ばれた人が理不尽に虐殺されていた、という程度の認識だったが、その実態をよく理解できた。
魔女であることの証明方法か拷問による自白であったり、悪魔のなすことだから悪魔との契約などといった物的証拠はすべて消滅してしまうといった考え方はいまとなっては理解できないし、これらを事実として正式な裁判を経て処刑されていたというのは驚きだった。
ある意味、神秘的・超自然的な社会から法治社会への変遷における共通の出来事なのかもしれない。
魔女とされた人々に境界人が多かったことから日本だと穢多非人が差別されていたことに近いかと思ったが、地域 -
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どのように歴史を考え、歴史学の研究を進めるべきか、学界の状況も踏まえて考察。歴史学入門や史学概論的な書籍ではあるが、これからの歴史学のあるべき姿についての著者の考えがふんだんに込められているのが特色であり、その主要な主張は「社会史と心性史をもっと先に進めよう」というものである。
学生時代に歴史学を専攻していたが、社会史や心性史を中心に、最近の動向も含め、様々な歴史学の考え方や方法論、手法等が紹介されていて勉強になった。ただ、結構高度な内容も多く、社会史や心性史とは結局どういうものかといった基本的な部分を含めて十分に咀嚼できたかは心許ない。
歴史学の在り方についても考えを巡らすことができた。社会