あらすじ
一五~一八世紀,ヨーロッパ文明がまばゆい光を放ち始めたまさにそのとき,「魔女狩り」という底知れぬ闇が口を開いたのはなぜか.その起源・広がり・終焉,迫害の実態,魔女イメージを創り上げた人たち,女性への差別――進展著しい研究をふまえ,ヨーロッパの歴史を映し出す「鏡」としての魔女と魔女狩りを総合的に描く.
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
p. 215-216 『さらに十八世紀になると理性尊重の啓蒙主義が、(…)広範な社会層に伝わって日常生活全般が「脱魔術化」する。すると人々は宗教的熱狂に陥ることはなくなり、悪魔の人間界の出来事への介入なども信じられなくなって魔女狩りは消滅した・・・というのは、分かりやすい道理かもしれないが、どこか現代人に心地よい進歩史観の物語にしてしまっているのではないか。(…)理性という認識の機械装置の根源的動力因は、人間の内部に潜む非合理な衝動なのであり、合理と非合理がたやすく入れ替わることは、二十世紀の次なる蛮行ーナチス・ドイツーを見れば明らかだろう。』
大衆は管理不可能であるという不安からの解放を求め、架空のシニフィアン(今回の場合は魔女)を作り出しそこにシニフィエ(不作や災害の原因であるという思い込み)を事後的に注ぎ込むことで、管理可能なものへと作り替えようとする。シニフィアンはメディアを通じて伝播し、状況に即したシニフィエがその都度加えられ、創作の二次創作というシニフィエの断続的な横滑りが生じる。これがボトムアップ的・複数的な空虚なシニフィアン(φ)の構築だとすると、このφに政治的イデオロギーを注ぎ込みその複数性を単一性にまとめ上げ、国家統治に利用するという姿勢こそは、トップダウン的・単一的なφの構築と言えるのではないか。
Posted by ブクログ
ヨーロッパ史において度々発生した「魔女狩り」について、その起源とメカニズム、魔女が持つイメージの変遷について、多様な事例を取り上げつつ分析した書籍。村落や中小都市での生活の中で共同体が危機に陥り、それを契機に魔女の妄想が噴き出し、特定の住民への糾弾に結びついていく過程が平易な言葉で解説されていて、分かり易くかつ恐ろしく読んだ。形こそ異なれど、危機の時代における人々の悪意の向き方は現代もそう変わりないように思う。
また、ヨーロッパの魔女には勝手に中世のイメージを抱いていたが、むしろ近世に魔女狩りが集中して起きていたことは意外だった。
Posted by ブクログ
2024.05.24
私には大変良書。「ヨーロッパ近世」というわかりにくい時代を「魔女狩り」という側面から解きほぐしてくれた。
大いに知的好奇心を満足させてもらえた。岩波新書の存在意義を感じる。
Posted by ブクログ
魔女狩りという暗黒の歴史を分かりやすく説明している。予想通りかなり不愉快な内容だ。
キリスト教が背景とするアダムとイブの伝承において女が邪婬なものと考えられていたことが関係している。閉経した女性に対する露骨な差別が魔女伝説につながっている。
また教会や王権の正当性を高めるために対局の悪の存在を創出したとも言える。愛の宗教であるはずなのに、どちらが悪魔なのか分からない。
キリスト教に限らないが、原理主義的な考え方は極論になりやすい。正義の強調のために、強力な悪の存在が想定されてしまう。これは欧州の人々の底流を流れる考え方なのだろうか。科学を生み出す土壌であるとともに魔女狩りのような暗黒史も作り出してしまう。これは決して過去の話ではないような気がする。
Posted by ブクログ
「魔女狩り」という言葉は誰もが一度は聞いたことがあるだろう。
だが、魔女と呼ばれた人々は一体どんな容疑で裁判にかけられ、何を基準に判決を下されたのか。そもそも何故、魔女狩りなんてものが始まったのか。
本書では、当時の庶民の生活環境や文化、学者や統治者たちの体質などに焦点をあて、魔女狩りを色んな角度から解説してくれる。
1番驚きだったのは、裁かれたのが必ずしも女性だけではなかったこと、小さな子供に身内を裏切らせるような行いをさせていたこと。
知らない「魔女狩り」の世界がコンパクトに詰まっており、とても面白かった。
Posted by ブクログ
現代の感覚からすると存在が考えられない魔女だが、中世ヨーロッパでは魔女狩りと称して多くの老齢の女性、男性(妖術師)も該当したようだが、処刑されている.悪魔を中心とする魔女集会をサバトを呼んで、それに参加したことが重要な証拠としてカウントされた由.ただ、参加者が現行犯逮捕されたことはないらしく、想像上のイベントだったようだ.魔女狩り自体がキリスト教の権威を補完する行為だったようで、様々な著書が存在している.当然ながら、批判的な論考も出版されており、そういう意味で言論の自由があったことは評価できると感じた.裁判の過程で拷問が合法化されていたのはやや異常と思うが、存在しない事象を裁くので自白が重大な証拠であったことは当然であろう.
現代でも魔女狩りに相当する事象があるとの指摘もあり、合理主義の裏には不合理がつねに隠れているという著者の述懐は重要だと感じた.
Posted by ブクログ
魔女狩りとはなんだったのかを資料をたどりながら考える一冊。一般的に言われている集団ヒステリー論は正確ではないし、中央政府は関与どころかむしろたしなめる側であった。それであってもなぜ魔女狩りは世紀をまたいで行われていたのか。
それは、中央権力に対抗する地方領主の示威行為でもあったし、農村経済が変化していく中で若い世代と守旧派との闘争の武器でもあった。
そんな、種々入り交じった魔女狩り模様をわかりやすい筆致で描いていて面白い本だ。
Posted by ブクログ
魔女狩り、ざっくりとしたイメージしかなかったので読んでみた
読んでみると魔女狩り自体は数世紀に渡って行われており、時代ごとに標的となる階層の人が変わっていたりと興味深かった。イメージとして多いのは農村にとっての余所者や下層民が魔女の典型だったが、16世紀以降は社会的地位が高い裕福なエリート層、貴族なんかが標的となっていたと知り、それはかなり意外であった
また宗教改革の影響なども記されており、その方向性から魔女狩りを論じたものを読むのは初めてだったが大変におもしろかった。特に宗教改革で有名なルターは政治と社会おける家父長制的秩序への反逆者、社会的規律化と絡んでいた国家およびその統治モデルたる家の破壊者として、その秩序の外側にいた独り者の女を魔女として球団した
Posted by ブクログ
魔女狩りについては一方的に魔女と呼ばれた人がいること、そして魔女と呼ばれた人が理不尽に虐殺されていた、という程度の認識だったが、その実態をよく理解できた。
魔女であることの証明方法か拷問による自白であったり、悪魔のなすことだから悪魔との契約などといった物的証拠はすべて消滅してしまうといった考え方はいまとなっては理解できないし、これらを事実として正式な裁判を経て処刑されていたというのは驚きだった。
ある意味、神秘的・超自然的な社会から法治社会への変遷における共通の出来事なのかもしれない。
魔女とされた人々に境界人が多かったことから日本だと穢多非人が差別されていたことに近いかと思ったが、地域の呪術的な医療や儀式を行っていた有識者という点を見ると、イタコやユタなどが近く、弾圧を受けた歴史からも受けた扱いとしては近いのだろう。
イタコやユタが少数ながらも現存することからいまも世界に魔女がいること自体はわかるが、アフリカなどでは魔女狩り(迫害)が行われていることは非常に驚いた。
一方で、現代社会でもSNSなどによる一方的な決めつけや社会的な処刑が多数発生していることを考えると、形を変えても魔女狩りは行われ続けてしまうように感じた。