小室直樹のレビュー一覧

  • 憲法とは国家権力への国民からの命令である

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    本書から学びを得たのは「権力を抑え込む為の憲法」という前提に対し、国民の側には「愛国教育」を与える必要があり、権力も庶民もその約束事の基で国体が護持されるという事。

    憲法論は勿論大事だが、明日から憲法を変えたとしても、いきなり国の動きが変わるわけではない。愛国教育がなければ、庶民は侵略されたときに、敵に味方する。日本ですら、そういう歴史を乗り越えて教育勅語に至っていた。

    憲法第十三条の話もある。そうした個人の保護と、軍隊の不在が矛盾する、政府がインフレ操作する事で国民の財産が目減りする事に対する矛盾を指摘する。この視点は面白い。国家であっても、個人の所有権に介入してはならないと言うのがロッ

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    2025年08月11日
  • 日本教の社会学

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    アニマによる支配の方が、最も非民主的なものである。本書で議論される内容だが、アニマとは魂。霊的なもの、というニュアンスだ。契約や法律ではなく、同調圧力や忖度、空気感で決定されていく手続き。

    しかし、制度として霊的な天皇を組み込んだ日本社会においては、時に霊的な判断が勝ることは許され、それが民主主義と混同される。

    ー 日本では大変面白いんでして、「イタイイタイ病裁判」のとき、上訴権を放棄しろという論調が新聞に出てくるんです。会社は控訴するなと。三審を受ける権利というのは、日本じゃ大新聞がいとも簡単に否定し、その結果簡単に失っちゃうんです… たとえデモクラシーじゃなくて、専制国家であろうとも

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    2025年06月08日
  • 「天皇」の原理

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    日本人の信仰など大部分はご都合主義だという気がするが、戦前までの日本人は天皇を真に「現人神」と信じていたのだろうか。単にシンボルや大義名分として政治利用していただけではないのか。以前も何かのレビューで書いたが、明治維新以降の新政府は確実に天皇を利用してきたのであり、天皇は利用されたのだから戦争責任を問われないという道理ではないのか。

    明治期以降の国家神道体制のもとでは「天皇は天照大神の子孫であり、神性をもつ存在」という思想教育が全国民に浸透させられてきた。ただ、これは必ずしも「神を信じるような個人的信仰」ではなく、「国家の秩序と一体化した儀礼的信仰」であり、「制度化された権威への信服」であっ

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    2025年05月18日
  • 【新装版】小室直樹の中国原論

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    中国でビジネスをするには、何が大事か。それは、人間関係だという。人間関係には、中心に、幇(ホウ)というのがあって、その周囲に、情誼(チンイー)がある。さらに、関係、知人と関係が薄くなる。契約を結んだとしても、それは単に知人になっただけ。スタート地点に過ぎない。だから、簡単に裏切られる。情誼(チンイー)まで関係が深くなる必要がある。そして、幇(ホウ)まで到達すれば、契約書すら必要なくなるのだとか。日本で言う、義理、人情みたいなものと考えれば良いのでしょうか。

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    2025年03月11日
  • 「天皇」の原理

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    天皇は歴史の中で何度もその地位を失いながらも、明治維新や昭和の敗戦後に復活を遂げ、現在に至るまで存続している。この過程で天皇は神格化され、日本の象徴としての地位を確立した。
    天皇は古代から現代に至るまで、何度もその地位を失いながらも復活を遂げてきた。特に明治維新や第二次世界大戦後の復活は奇蹟である。日本人にとって、天皇は現人神であり。誇りである。本書は天皇の原理を知る上で必読書となること間違いない。

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    2025年02月02日
  • 論理の方法―社会科学のためのモデル

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    著者の本を読み重ねるにつれて、主張が繰り返されるものもあり、馴染んできた感がある。それでもまた新たな発見もあり、知的欲求が心地よく満たされていく。本作は「論理の方法」だが、特に宗教の論理が掘り下げられる。また、その途中で「因果律」と「予定説」の対比を用い、カルヴァン派と儒教の一派である崎門の学との類似性を説きながら、我々の思考形態の本質を抉る。

    と書いても分かりにくいので、少しかみ砕くと、因果律とは全ての結果には原因があり、その原因は元をたどり、起源から発するという考え。予定説は、これとは真逆で、全ての行動は決められた運命によるものと考える。スタートから考えるか、ゴールから考えるかという事だ

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    2024年12月26日
  • 信長

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    小室直樹の著書には、高揚感がある。異説で新しい考え方のようで根拠がしっかりとしているし、俯瞰しながらも本質論を捉えていて、かつ、知的好奇心を満たしてくれるから。また、そもそも話し上手で論理的だから、という理由もあるだろう。本作は、織田信長が、近代日本に与えた影響が甚大であるという話だ。

    プラトンのいう生得の知識により、シックザールを従えてエトスを変えた信長(この横文字を漢字へのルビとして用いるのも小室文章の特徴)。主なポイントは、次のような点。

    楽市楽座のような自由競争の基礎を作りながらも特権的独占資本をも作り上げていった事。日本版宗教改革とも言える堕落した仏教との対立。兵農分離、軍隊の組

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    2024年10月14日
  • 数学嫌いな人のための数学―数学原論

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    本書を購入したのがいつ頃か覚えていないが、長らく本棚に並んでいたものを読んだ。
    1932年生まれの著者が東京大学で法学の博士号を取得したのは1974年だが、もともとは京都大学理学部数学科を卒業している。その後、大阪大学大学院で経済学を学び、ハーバード大学では心理学と社会学を学んだ。帰国後の1963年に東京大学大学院法学政治学研究科に進み、1967年から「小室ゼミ」を開催していた。1970年に経済史の大家・大塚久雄について学んだ後、上記博士号を取得する、という経歴だ。
    万般を修めた小室直樹の著書は、その広汎な知識と「小室節」で、縦横無尽に語るところに特徴がある。
    本書では前半の「論理は神との論争

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    2024年06月08日
  • ソビエト帝国の崩壊~瀕死のクマが世界であがく~

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     ソ連崩壊をいち早く見抜いた著者が、社会学的知見に基づき、ソ連の政治、経済や宗教的特徴を分析した予言書。日本を含む資本主義と、ソ連のような社会主義国家の特徴を、マルクス『資本論』をベースに分析する。前者、すなわち資本主義の場合、消費者の主権が強く、利潤追求のために、組織が合理化されていることを挙げる。それに対してソ連の社会では、非公認の特権階級が存在してることや、貨幣を所有したとしても、必ずしも商品を購入できるとは限らない。社会主義社会では、貨幣が根本的な富とはならず、生産手段が私有化されないなど、資本主義社会における論理が通用しない。
     また、本書では西欧とソ連の権力構造の違いについても解析

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    2023年12月03日
  • 小室直樹 日本人のための経済原論

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    日本は社会主義の成功事例と言われる所以がわかった。
    けどコロナ禍を経た現在、改めて著者の新しい考えを読んでみたい。

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    2023年04月18日
  • 戦争と国際法を知らない日本人へ

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    ・宗教により法の捉え方?が異なる。

    ・アラブ圏には、今も十字軍コンプレックスがある。

    ・モンゴルやトルコに支配されたが、征服者側がイスラム教に改修したことで、アラブ化したと考えたため、アラブ人は被支配者でありながらコンプレックスを抱かなかった。

    ・クリスチャンに対しては十字軍で軍事的には勝利をおさめたものの、改宗させられなかったことがひっかかっていた。

    ・またヨーロッパの心の故郷とも言える古典ギリシア文化は、一度ヨーロッパで忘れられた後で、アラブを通じて発見され、再興された。

    ・ムスリムからすれば、ギリシア文化を教えた師匠であるのに、弟子であるヨーロッパ人が「こちらこそが本家本元、文

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    2023年03月03日
  • ソビエト帝国の崩壊~瀕死のクマが世界であがく~

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    1980年8月にソ連崩壊を予測した奇跡の書として知られる
    ソ連の崩壊は、1988~1991かけて実際に起きた。

    気になった言葉は以下です。

    ・ソビエト帝国は「資本論」という一冊の本が生んだ巨大な人造国家である。
    ・資本主義をへないでできてしまった社会主義、その存在の矛盾にすべてが帰着する

    ・階級のない国、ソ連という幻想:ソ連には革命によってなくなったはずの階級があり、その階級間の矛盾と対立がソ連社会に大きな影を落とし、ソ連の外交政策、国内政策を、大きく動かしている。
    ・威信とならんで重要な社会的な差別原理は勢力である。これは権力と訳されることもある。
    ・ソ連の特権階級の頂点にエリート階層

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    2022年11月12日
  • ソビエト帝国の崩壊~瀕死のクマが世界であがく~

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    ソ連崩壊を予測したという小室直樹による『ソビエト帝国の崩壊』。文庫として復刊されたもの。
    当時の状況はビビッドにはわからないけれど、フルシチョフによるスターリン批判とかアフガン侵攻とかはあったにせよ、これほどまでにソ連の状況を伝えた書物もなかったんだろう。その意味ではやはり著者の慧眼は光るものがある。
    特に何よりもノルマが優先し効率性や経済的な合理性が顧みられない共産主義体制、官僚主義による組織の暴走に着眼しているのは今となっては当たり前かもしれないけれど、1970年代に言及できたのは著者一流の洞察力の賜物だろう。
    また、最終章で日本に言及されているけれど、日本人の好きな非武装中立の不可能性、

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    2022年10月16日
  • 日本教の社会学

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    今は亡き2人の評論家の日本に関する対談。元々は1981年頃の本だが、今にも通じる論点が多々ある。
    現代日本は民主主義国家でもないし戦前は軍国主義でもなかった。日本の組織には規範の二重構造が存在する。日本教とも呼ぶべきものが日本人の根底に存在し、ドグマとしての空気や実体語と空体語がある。中国にはない本心というものの分析や、プロテスタンティズムと日本の労働倫理の違いなど。

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    2022年09月06日
  • 戦争と国際法を知らない日本人へ

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    この本の著者の小室氏はすでにお亡くなりになっていて、今から20年以上前の1997年に発行されたものです。国際法とは何か、それができる背景としてキリスト教と、イスラム教・仏教との違いも詳しく解説されています。

    また国際連盟と国際連合との違い(国際連合は、連合国にとて最後まで敵国であった、ドイツ・日本に対する軍事同盟)も理解できましたし、なぜ安全保障理事会という会議体のみが各々拒否権を持っているかも私なりには理解できました。

    現在世間を騒がせているウクライナ侵攻も、拒否権を持っているロシアが引き起こしていることなので国連による解決は期待できないでしょう。国連に代わる会議体をどこかの国が提唱でき

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    2022年04月02日
  • 論理の方法―社会科学のためのモデル

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    何かを理解や研究するうえで、モデル作成の重要性が実感できます。とは言え、数式以外の言葉でモデルを定義すること(ヴェーバーは理念型と呼んだそうな)は、何がモデルなのか?理解するのが難しそうです

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    2022年03月20日
  • 戦争と国際法を知らない日本人へ

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    まずは自分の知識の無さを実感。しかし読みにくい部分はなく、不思議と読み進められる。
    世界史をざっと振り返ってもう一度読もうと思う。
    世界で起こっていることについていけない、自分ごととして捉えられない、これはきっと無知だからなんだろうなと反省。

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    2022年03月14日
  • 信長

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    小室直樹の信長論。
    戦国時代の武士は強い武将に着く風見鶏だったが、信長の家臣団は、信長という空気に支配され忠誠を誓った家臣団だった。これは日本軍に繋がる。
    桶狭間は奇襲ではなく、正面切っての強襲であった。奇襲、ミラクルに頼ることがなく、合理的戦争方法に徹した。
    信長は傭兵制度を初めて導入した。
    なるほど。信長は日本資本主義の元祖であったというのが本書の中心の論。小室本はいろいろ読んでますが、本書も論が明快で読み応えあり。

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    2021年03月07日
  • 憲法とは国家権力への国民からの命令である

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    ・近代デモクラシーはヨーロッパ社会で誕生した政治思想で、そのエッセンスは、「アメリカ独立宣言」に示されている。
    「われわれは、自明の真理として、すべての人は平等に造られ、造物主によって、一定の奪いがたい天賦の権利を付与され、そのなかに生命、自由および幸福の追求の含まれることを信ずる」

    ・アメリカ独立宣言は、トマス・ジェファソンが起草した。彼が念頭に置いたのは、イギリスの思想家ジョン・ロックの「社会契約説」であった。
    ・国家や社会が生まれる以前の「自然状態」においては、身分も制約もなく、人間は自由で平等だとする。
    そして、どんな国家や社会も、「自由で平等な」人間たちが対等に社会契約を結ぶことで

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    2019年08月03日
  • 数学嫌いな人のための数学―数学原論

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    ネタバレ

    最近機械学習関連で数学を学んでいるが、著者である小室氏がその数学についてどんな論を展開するのか、興味があって手に取った本。

    結果、すごくタメになった。

    通常の数学本には数式がかならず出てくる。
    著者は物理学や数学を大学で学ばれているので、そういう本にも出来たはず。しかし、この本では数式はほぼ出てこない。

    なぜ、数学が西洋(宗教)から生まれたのか、ここまで発展したのか、などが簡易な文章で語られている。1つ1つの論はそれほど詳細ではないけれど、神との対話で生まれた(形式)論理学が、数学を理解する上での要諦だということは腑に落ちた。たしかに需要だ。

    日本の数学教育では、命題や同一律・矛盾律・

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    2019年05月02日