小室直樹のレビュー一覧
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論理を自由自在に使いこなすために、社会科学における様々な分野のモデルを小室先生の博学で紹介する一冊。
序章のソ連崩壊に始まり、近代国家の原理と古典派経済学、ケインズ経済学、ヴェーバーにみる宗教や資本主義の精神、と欧米のモデルが続いたところで、最後の2章は丸山眞男の日本政治モデル、平泉澄の日本歴史モデルと、例によって内容は盛りだくさんの小室節。
最後の2章から特に印象に残った点。
丸山モデルにおいては、日本人の宗教の受け入れ方についての研究があるのですが、あらゆる宗教が日本に入ってくると、規範や戒律が取り払われ「日本教」とでも言うべきものに変質してしまう(だから規範だらけのイスラム教は日本に -
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ネタバレ仰々しいタイトルに少し躊躇したが、非常に読みやすかった。高校生でも読めると思われる。
面白くて一気に読んでしまった。
憲法に辿り着くまでには、宗教、経済学、民主主義や資本主義など様々な分野の話が出てくる。それが非常に面白いのだ。為になるなんてもんじゃない。著者がいかに広範な知識を持っているか。その一端でもこうして披露してもらえることが有難い。
キリスト教の予定説が民主主義の出発点であることなど、まずキリスト教がどんな宗教なのが知らなければ、民主主義の何たるかが分からないし、資本主義についてもそうだ。
他にもたくさん著書があるので、すべて読みたいと思う。
そして、本書も何度も読み返したいと思う -
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本書は、数学の解き方を学ぶ本ではなく、宗教、資本主義、経済学などを交えながら、数学の論理と面白さを学ぶための一冊です。
論理こそ数学の生命、として、本書はいきなり古代イスラエルの話から始まります。
論理とは論争のための方法であり技術でもある。
神の言うことを聞かないイスラエル人は、預言者モーセを通して神との論争に挑むのですが、神をも論破して従わせるという感覚は、我々日本人には想像も出来ないものです。
また、アリストテレスが完成させた形式論理学では、同一律・矛盾律・排中律が確立され、曖昧な結論を許さない。これこそが論理の極意か!
この形式論理学をもとに、背理法(帰謬法)が威力を発揮して、数学 -
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本書は同時多発テロ翌年の2002年に上梓され、2023年に新装版として再刊されたものです。
いつもの小室作品の如く、「イスラム原論」と銘打ちながら、直接イスラム教の説明に割かれているのは約400ページのうち三分の一もないかもしれません。
しかしながら、キリスト教や仏教、はたまた(規範のない)日本教にも筆が及ぶ中で、それら宗教との対比がイスラム教を理解するための補助線として絶大に効いているのが小室先生の真骨頂!
特に第二章の、ユダヤ教に始まる「一神教の系譜」などは息もつかせぬ面白さでした。
イスラム教に対して欧米や日本では正確な理解がなされていないようですが、本書を読めば世界史におけるイスラ -
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ネタバレもともとは2000年に発刊された書籍で、2021年に新装版として再刊されたものです。
400ページほどの割合分量多めの本ですが、一気に読み進み、いかに自分が宗教に無知であったかということを思い知らされることに。
宗教とは、氏の著作に頻繁に登場するキーワードでもある「エトス」(行動様式)であり、この定義づけを行ったのはかのマックス・ヴェーバーだそうです。
本書では、世界三大宗教であるキリスト教、仏教、イスラム教、加えて、あまり宗教としては理解されていない儒教、そして日本人と宗教の関わり方について論じられており、宗教に寛容(というか無知)な日本人には驚くべき事実が多いかもしれません。
以下、備忘も -
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1997年の「小室直樹の資本主義原論」と1998年の「日本人のための経済原論」を合本し2015年に再刊行された書籍です。
2冊の合本ということで分量も700ページに及ぶものですが、特に後者の経済原論の方は、いつもながらの小室節炸裂でとても読み応えあり!
本書の冒頭からして「この本の目的は、あなた自身を経済学者にすることにある。エコノミストにすることにある。日本の舵取りたる経済官僚が少しも経済と経済学を理解していないことが明白になった。…」と刺激的な書き出し。
いつもながらの博識で、アダム・スミスやマルクス、ケインズという偉大な経済学者たちを理解するポイントや、オイルショック後の日本経済の構造変 -
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初版が2000年と20年以上前の本ですが、今読んでもなんら遜色のない内容でした。とても学びの多い本でした。
イスラエルとパレスチナの問題を日本人だとなぜあんなひどい事をするのか?と思うだけだが、この本を読んだ後では、イスラエルは神から与えられた地に異教徒を住まわせてやったのに、テロでユダヤ民族を傷つけるなんてとんでもない奴らだから皆殺しにしてるやる。くらいに思っているのでは?と想像すると寒気がします。
良くも悪くも古くは宗教が人々を連帯させてきましたが、この本の書かれた20年前から、日本では代わりになるようなものがありません。無連帯となった人々がパワハラやカスハラなど様々なハラスメントで他 -
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小室直樹『天皇畏るべし』は、126代にわたり続いてきた天皇制の歴史と、その唯一無二の成り立ちを掘り下げた一冊です。古代から連綿と続く血統の象徴であり、同時に「現人神」として日本社会を統合してきた存在が、どのように国家の創建や人々の心の支えとなってきたのか。本書はその重層的な意味を、鋭い視点で描き出しています。
特に、天皇が単なる政治権力者ではなく「畏れ敬うべき存在」として制度化されていった過程を知ることで、他国に類を見ない日本の特異性をあらためて実感しました。小室直樹先生ならではの独特の語り口で、学術的でありながらも楽しく読み進められるのも魅力です。
小室直樹先生独特の切り口は鋭くもユーモ