小室直樹のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
論理を自由自在に使いこなすために、社会科学における様々な分野のモデルを小室先生の博学で紹介する一冊。
序章のソ連崩壊に始まり、近代国家の原理と古典派経済学、ケインズ経済学、ヴェーバーにみる宗教や資本主義の精神、と欧米のモデルが続いたところで、最後の2章は丸山眞男の日本政治モデル、平泉澄の日本歴史モデルと、例によって内容は盛りだくさんの小室節。
最後の2章から特に印象に残った点。
丸山モデルにおいては、日本人の宗教の受け入れ方についての研究があるのですが、あらゆる宗教が日本に入ってくると、規範や戒律が取り払われ「日本教」とでも言うべきものに変質してしまう(だから規範だらけのイスラム教は日本に入って来なかった)。それゆえに仏教は修行を必要としないものになり、諸外国では仏教として通用しないものに成り果ててしまった、って指摘は実に面白い。
また、平泉モデルにおいては、天皇の権威について、古来は予定説であったものが、承久の乱におけるかの有名な北条政子の演説も関係するのですが、天皇の政治が衰えたことにより良い政治を行なった頼朝への御恩が絶対的な天皇の権威を上回った、そこにおいて予定説が因果律に覆った!
しかし山崎闇斎の崎門の学により天皇イデオロギーは復活を遂げてゆき、勤王の志士によりついに天皇は復活を遂げた、これはキリストが死後に復活したことになぞらえ、天皇も現人神として復活した、すなわちここで予定説の論理が再び作動した!という分析には唸らずにはいられませんでした。
全体を通してみても、小室先生の著作を読むたびに、宗教や思想が政治や生活に及ぼす影響の大きさを思い知らされます。
相変わらず知的好奇心を大いに刺激する一冊でした。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ仰々しいタイトルに少し躊躇したが、非常に読みやすかった。高校生でも読めると思われる。
面白くて一気に読んでしまった。
憲法に辿り着くまでには、宗教、経済学、民主主義や資本主義など様々な分野の話が出てくる。それが非常に面白いのだ。為になるなんてもんじゃない。著者がいかに広範な知識を持っているか。その一端でもこうして披露してもらえることが有難い。
キリスト教の予定説が民主主義の出発点であることなど、まずキリスト教がどんな宗教なのが知らなければ、民主主義の何たるかが分からないし、資本主義についてもそうだ。
他にもたくさん著書があるので、すべて読みたいと思う。
そして、本書も何度も読み返したいと思う。。
著者は、日本の憲法は死んでいるという。民主主義も機能していない。今の状況に照らし合わせても、合点がいった。現状を打開するためには、よい政治家を作るためのよい国民になって、日々努力しなければならない。 -
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本書は、数学の解き方を学ぶ本ではなく、宗教、資本主義、経済学などを交えながら、数学の論理と面白さを学ぶための一冊です。
論理こそ数学の生命、として、本書はいきなり古代イスラエルの話から始まります。
論理とは論争のための方法であり技術でもある。
神の言うことを聞かないイスラエル人は、預言者モーセを通して神との論争に挑むのですが、神をも論破して従わせるという感覚は、我々日本人には想像も出来ないものです。
また、アリストテレスが完成させた形式論理学では、同一律・矛盾律・排中律が確立され、曖昧な結論を許さない。これこそが論理の極意か!
この形式論理学をもとに、背理法(帰謬法)が威力を発揮して、数学の更なる発展にもつながったとのことであり、本書に示す背理法の凄さはよく認識しておきたいと思いました。
かつて数学の授業でなんとなく聞いた覚えがある「対偶」、「必要条件」、「十分条件」にも紙幅が割かれており、文系の私でも理解を深めることが出来ました。
これらの技術は思考を深める上で、また、議論を行う上で有益なツールになりそうです。
そして、一番驚かされたのが、経済学における方程式と恒等式との違い。
経済学の数式Y=C+Iについて考えます(※Y:国民生産又は国民所得、C:消費、I:投資)。
これが方程式Y=C+Iである場合と、恒等式Y≡C+Iである場合を見ると、前者はケインズの有効需要の原理、後者はセイの法則という正反対の論理の数式になる!
小室先生の著作で両者の違いは理解していたつもりですが、数学で現すとこんなことになるのか、と感嘆せざるを得ませんでした。
論理が苦手で、曖昧とか中庸とかが大好きな私でも、数学の効用の凄さを感じることが出来た驚異の一冊。
いつもながら小室先生は凄い!
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Posted by ブクログ
本書は同時多発テロ翌年の2002年に上梓され、2023年に新装版として再刊されたものです。
いつもの小室作品の如く、「イスラム原論」と銘打ちながら、直接イスラム教の説明に割かれているのは約400ページのうち三分の一もないかもしれません。
しかしながら、キリスト教や仏教、はたまた(規範のない)日本教にも筆が及ぶ中で、それら宗教との対比がイスラム教を理解するための補助線として絶大に効いているのが小室先生の真骨頂!
特に第二章の、ユダヤ教に始まる「一神教の系譜」などは息もつかせぬ面白さでした。
イスラム教に対して欧米や日本では正確な理解がなされていないようですが、本書を読めば世界史におけるイスラム教の立ち位置や他の宗教との関係、またイスラムの論理がよく理解できます。
本書の最後では、「たとえビンラディン氏を捕縛し、アルカイダやその他のイスラム過激派を壊滅させようとも、イスラムとアメリカ、ひいては欧米社会との対立は終息することはないだろう。」と断言されており、果たして本書刊行から20年以上経過した今も状況は?
資本主義登場以前は、世界最先端の文明を誇っていたイスラム社会。イスラム教の本質を知ることは、相互理解の大いなる手助けとなるはずです。 -
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ネタバレもともとは2000年に発刊された書籍で、2021年に新装版として再刊されたものです。
400ページほどの割合分量多めの本ですが、一気に読み進み、いかに自分が宗教に無知であったかということを思い知らされることに。
宗教とは、氏の著作に頻繁に登場するキーワードでもある「エトス」(行動様式)であり、この定義づけを行ったのはかのマックス・ヴェーバーだそうです。
本書では、世界三大宗教であるキリスト教、仏教、イスラム教、加えて、あまり宗教としては理解されていない儒教、そして日本人と宗教の関わり方について論じられており、宗教に寛容(というか無知)な日本人には驚くべき事実が多いかもしれません。
以下、備忘も兼ねた、本書による目からウロコの数々と自分自身の理解です。
○宗教には啓典宗教とそれ以外の宗教とがある。
・啓典宗教…ユダヤ教(トーラー)、キリスト教(福音書)、イスラム教(コーラン)
・それ以外…仏教など
○啓典とは最高教典のことであり、絶対的なものである。(イスラム教が分かりやすい)
○キリスト教では永遠の死は最大の罰だが、仏教では最大の祝福(救済)である。(悟りを開いて涅槃に入るから)
○イスラム教は、宗教の戒律、社会の規範、国家の法律の三つが一致する。宗教を理解するには絶好の手本である。(他に一致するのはユダヤ教)
○キリスト教では、信仰のみにより救われる。方法も様式もなく、ただ信じるだけでいい。(戒律などは後世に修道院や教会が決めたもの)
○宗教改革は、このキリスト教の本来の姿に原点回帰しようとするもの(改革の名にとらわれ、全く逆の理解をしてた…)
○十字軍の例のように、キリスト教ほど異教徒に対し残酷な宗教はないが、近代国際法や資本主義を生んだのもキリスト教の精神(行動的禁欲)による。
○キリスト教とイスラム教では偶像崇拝は禁忌。なので、隠れキリシタンは踏絵も堂々と踏めば良かった。(信仰心がありさえすれば良いので)
○歴史上、イスラム教化した国が仏教化した事例はないが、その逆の例は非常に多い。
○イスラム教では、トーラーや福音書も聖典として認めている。ただ、それらの正しい解釈はコーランによるものとされている。
○よく誤解されるが、イスラム教は他の宗教にも寛大である。
○イスラム教は精緻であるにもかかわらず、近代国家を作れなかったのは、マホメットが最後の預言者であったゆえ、新しい伝統を作れなかったから。
○儒教は、政治を良くして民を救うという集団救済の宗教であり、高級官僚を作るための教養を与える宗教。行動様式こそが宗教と考えるなら、儒教は間違いなく宗教である。
○隋の時代に始まった科挙は、中世のヨーロッパ諸国では大いにもてはやされた。当時のヨーロッパでは、高級官僚は貴族に限られていたので。
○日本に遺された最も大きな儒教の爪痕(弊害)は、官僚制度と受験制度。
○仏教も儒教も、日本に入ってくると様々な規範や戒律が取り払われ、「日本教」とでもいうべきものになってしまった。
○インチキ宗教を見分けるポイント→金儲け宗教はインチキ、奇蹟をひけらかす宗教はインチキ
少し時間を置いて、もう一度読んでみたいと思います。
非常にインパクトのある良書でした。 -
Posted by ブクログ
1997年の「小室直樹の資本主義原論」と1998年の「日本人のための経済原論」を合本し2015年に再刊行された書籍です。
2冊の合本ということで分量も700ページに及ぶものですが、特に後者の経済原論の方は、いつもながらの小室節炸裂でとても読み応えあり!
本書の冒頭からして「この本の目的は、あなた自身を経済学者にすることにある。エコノミストにすることにある。日本の舵取りたる経済官僚が少しも経済と経済学を理解していないことが明白になった。…」と刺激的な書き出し。
いつもながらの博識で、アダム・スミスやマルクス、ケインズという偉大な経済学者たちを理解するポイントや、オイルショック後の日本経済の構造変化なども解説されており、バブル崩壊直後(1990年代)にして「インフレばかり恐れる官僚たち」と、デフレ対策に有効な対策案を示せない経済官僚を喝破しています。
資本主義の歴史から近代経済学まで、これを読めば確かになんちゃってエコノミストになれたような気がします(笑) -
Posted by ブクログ
初版が2000年と20年以上前の本ですが、今読んでもなんら遜色のない内容でした。とても学びの多い本でした。
イスラエルとパレスチナの問題を日本人だとなぜあんなひどい事をするのか?と思うだけだが、この本を読んだ後では、イスラエルは神から与えられた地に異教徒を住まわせてやったのに、テロでユダヤ民族を傷つけるなんてとんでもない奴らだから皆殺しにしてるやる。くらいに思っているのでは?と想像すると寒気がします。
良くも悪くも古くは宗教が人々を連帯させてきましたが、この本の書かれた20年前から、日本では代わりになるようなものがありません。無連帯となった人々がパワハラやカスハラなど様々なハラスメントで他人を傷つける事なく、日本の社会がこれ以上分断され無連帯にならないように、せめて自分の周囲とは連帯していこうと思います。 -
Posted by ブクログ
小室直樹『天皇畏るべし』は、126代にわたり続いてきた天皇制の歴史と、その唯一無二の成り立ちを掘り下げた一冊です。古代から連綿と続く血統の象徴であり、同時に「現人神」として日本社会を統合してきた存在が、どのように国家の創建や人々の心の支えとなってきたのか。本書はその重層的な意味を、鋭い視点で描き出しています。
特に、天皇が単なる政治権力者ではなく「畏れ敬うべき存在」として制度化されていった過程を知ることで、他国に類を見ない日本の特異性をあらためて実感しました。小室直樹先生ならではの独特の語り口で、学術的でありながらも楽しく読み進められるのも魅力です。
小室直樹先生独特の切り口は鋭くもユーモラスで、歴史や宗教を背景にした大きなテーマでありながら、とても楽しく読み進めることができました。天皇制を知ることは、そのまま日本という国を深く理解することにつながるのだと実感しました。
天皇制という制度の深さを学びたい人、日本という国の成り立ちに関心がある人に強くおすすめしたい一冊です。
#小室直樹 #天皇制 #日本史