小室直樹のレビュー一覧
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元々私も「数学嫌い」の一人である。本書は数学に興味を持つきっかけの一冊である。数理論理学すなわち形式論理学の分野を扱っているため数式もほぼ登場しない。数学知識は不要だが、史学や哲学といった文系的素養は要求される。背理法や対偶が原論の範疇かという気がしないでもないが内容は面白い。
小室氏は数多くの「原論シリーズ(?)」を出版しているが、本書も思想としては左寄りでやや過激、些か偏ってる感は否めない。それゆえ読んでいて極端で面白いともいえる。本書で述べられる「絶対的唯一神との対話」という概念理解が出来るかが論理学のポイントだろう。神視点からの演繹的証明と、聖書視点での帰納的証明の不完全性の指摘など -
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故小室博士の著作の多くは「~原論」というタイトルのものがいくつかあるが、本書はいわば「社会科学原論」と言えるだろう。小室博士の思想のベースとなった社会科学モデルとして、古典派経済学モデル、ケインズ経済学モデル、マクスウェーバーの宗教と資本主義精神モデル、丸山真男の日本政治モデル、平泉澄の日本歴史モデルが紹介されている。
社会科学分野では、自然科学のように実験で理論を検証することは容易ではないが、小室氏は抽象化したモデルを考案し、現実の事象を理解するための補助線として利用することを推奨している。小室博士は一般向けの啓蒙書も多数執筆しているが、その多くは上記のモデルから導き出したものであり、ソ -
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今我々が研究しなければならないのは、魚にとって最も棲み易いのはどの程度の汚れか――これである。最も適した腐敗の度合いを、もっと研究しなければならない。
例えば、英国が国として一番発達したのは、政治がほどほどに汚れていた時だ。178
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マキャヴェッリの曠古の業績は、政治学を独立の学問として確立したことにある。192
マキャヴェッリに対する非難攻撃は、本来、何に由来するのか。それは、政治学は、倫理学、神学と密接不可分である、或いは、そうでなければならないという思考法にある。 -
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ネタバレ「政治無知」とは?「政治倫理」とは?本書は著者が考える「政治倫理」を十二分に提示している。
古代ローマ帝国の「ネロ」、古代ユダヤの「ヘロデ」、秦の始皇帝、隋の煬帝、唐の則天武后、直近の政治家ではヒトラー、彼らは後世の史家から評価される事はあまり無い。しかし、政治家として残した実績は名君の範疇であった事を、現存する各種史料を根拠にして指摘する。という筆致で本書の大半が費やされる。ここだけを読んでいるとあたかも「政治倫理」や「日本人の政治無知」についての本であることをも一時忘れ、悪評高い政治家を中心に据えた歴史物語を読んでいる感さえある。
しかし、最終章にきて著者の言いたいことを総括した内 -
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数学嫌いな自分ではあるが、その原因は数学に対する根本的な理解がかけていたからだと思う。個人的な経験談ではあるが、大学に入るまで数学の重要性や意義を誰も教えてくれることがなかった。特に高校数学においては基本的な公式、定理をとりあえず覚えてから論理展開を行うというのが一般的なやり方であるが、そもそもなぜいきなり前置きもなしに公式を覚えさせられるのかという疑問が常にあった。もちろん数学に限らず、基本的事項はとりあえず覚えるということはいずれにせよ必要ではあるものの、それらがなぜ重要でどのような意義があるのかという理由はもっと厳密に私達の思考と連関があるように思われる。本書は数学を一神教、論理学、歴史
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本書のタイトルに「数学」とあるが、いわゆる数学の専門書ではない。数学の基盤となっている思考方法が社会とどのように関わっているかを説いている。著者は社会科学系学者の小室直樹氏。哲学、宗教、法律、経済と幅広い領域にわたって数学との関わりを解説している。数式はほとんど出てこないし、数式を解説することが本書の主眼ではないのでタイトルにあるように数学が嫌いな人にとっても読みやすいだろう。一方で、いわゆる理系の人にとっては本書で述べられている数学的素養は当たり前のことのように感じるかもしれない。しかし、数学的思考と社会との関わりという視点は新鮮に映るだろう。その意味で本書は数学嫌いな人よりも学校教育で数
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モデル化は、社会の仕組みを解明する方法のひとつ。 表題にあるとおり、社会の仕組みをザックリと知りたい人のための本。古典経済モデル、ケインズ経済モデル、宗教モデル、日本政治モデル、日本歴史モデルなど、モデルの提唱者とその理論を簡単に紹介しています。著者の独特の語り口で(好き嫌いは分かれるかも)、様々なモデルを紹介していて読み物として面白い。
専門的に勉強したい人には物足りないかもしれませんが、先人達の考え方を手っ取り早く知りたい人にとっては、この本には要点が簡潔に書かれていて判りやすい。社会科学の知識をある程度理解していればものの見方も変わるし、いろいろ役に立つ場面も多いと思います。 -
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比叡山焼き討ちや朝倉・浅井の当主を金で塗った髑髏で酒宴等、残虐性から嫌われている面も持つ織田信長は、一方で最も人気がある戦国武将の一人である。
私は、この織田信長を尊敬する歴史上の人物として挙げている。
それは、彼の当時としてかなりの水準である発想力に全てがある。
よくいわれる長篠の3段鉄砲のことではない(だってそれは嘘だし)。
楽市楽座や兵農分離といった面である。
今までは、彼のその発想力、といって説明がそれ以上深くはできなかったが、楽市楽座や兵農分離の持っていた意味、そして(宗教問題が関わるため書くのを控えるが)南蛮文化への理解といった面で、どのような影響があったのか、という点を説明して -
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うーん、私も数学は大っ嫌いだし興味もないのですが、小室直樹氏の著作なので、つい魔が差して買ってしまいました(苦笑)。
ただ、数式などはほとんど出てこないので、なんとか読めるかもしれません(自爆)。
評価は小室氏の本というだけで最低でも4はつけちゃいます(笑)。
目次
1 数学の論理の源泉―古代宗教から生まれた数学の論理
2 数学は何のために学ぶのか―論理とは神への論争の技術なり
3 数学と近代資本主義―数学の論理から資本主義は育った
4 証明の技術―背理法・帰納法・必要十分条件・対偶の徹底解明
5 数学と経済学―経済理論を貫く数学の論理