あらすじ
数学の本質は論理である! 伝説の学者・小室直樹氏のベストセラー『数学嫌いな人のための数学』を20年ぶりに復刊。数学へ苦手意識を持つ読者に向けて、数学の歴史的説明から、アリストテレスの形式論理学のエッセンス、方程式と恒等式の判別、日本の曖昧な法律の論理から、数学からつながる資本主義と経済学の基本まで、古今東西のエピソードを独特の語り口で講義する。
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Posted by ブクログ
本書は、数学の解き方を学ぶ本ではなく、宗教、資本主義、経済学などを交えながら、数学の論理と面白さを学ぶための一冊です。
論理こそ数学の生命、として、本書はいきなり古代イスラエルの話から始まります。
論理とは論争のための方法であり技術でもある。
神の言うことを聞かないイスラエル人は、預言者モーセを通して神との論争に挑むのですが、神をも論破して従わせるという感覚は、我々日本人には想像も出来ないものです。
また、アリストテレスが完成させた形式論理学では、同一律・矛盾律・排中律が確立され、曖昧な結論を許さない。これこそが論理の極意か!
この形式論理学をもとに、背理法(帰謬法)が威力を発揮して、数学の更なる発展にもつながったとのことであり、本書に示す背理法の凄さはよく認識しておきたいと思いました。
かつて数学の授業でなんとなく聞いた覚えがある「対偶」、「必要条件」、「十分条件」にも紙幅が割かれており、文系の私でも理解を深めることが出来ました。
これらの技術は思考を深める上で、また、議論を行う上で有益なツールになりそうです。
そして、一番驚かされたのが、経済学における方程式と恒等式との違い。
経済学の数式Y=C+Iについて考えます(※Y:国民生産又は国民所得、C:消費、I:投資)。
これが方程式Y=C+Iである場合と、恒等式Y≡C+Iである場合を見ると、前者はケインズの有効需要の原理、後者はセイの法則という正反対の論理の数式になる!
小室先生の著作で両者の違いは理解していたつもりですが、数学で現すとこんなことになるのか、と感嘆せざるを得ませんでした。
論理が苦手で、曖昧とか中庸とかが大好きな私でも、数学の効用の凄さを感じることが出来た驚異の一冊。
いつもながら小室先生は凄い!