あらすじ
憲法はすでに死んでいる!
「アメリカ製憲法」は戦後日本に何をもたらしたか。このままでは日本は遠からず滅びるであろう! その理由は全て「憲法の死」に由来する。今日の大不況も、政治の混迷も、全ては「憲法問題」に帰結する。現代日本に起きている様々な問題を憲法とのリンクで捉え直す。戦後日本の憲法論議の「まったく以って奇妙なところ」は、護憲派も改憲派も「日本国憲法といえば第9条というスタンスをとり続けてきたことにある」。このために多くの国民も、憲法の急所は第9条であると思い込むようになった。「だから日本の民主主義はインチキだ」というのが本書の主題である。 著者は、日本国憲法の最重要条項は、国民の「生命、自由及び幸福追求の権利」を保証した「第13条」であるという。日本政府の経済官僚は「バブル潰し」で国民の私有財産に干渉した。日本国民は気づいていないが、これは重大な憲法違反なのである。 「なぜ日本国民は暴動を起こさないのか」。第13条の精神にのっとれば「国民の私有財産を攻撃した官僚の5人や10人ぐらい、市中引き回しの上、獄門さらし首にしたって許される」 しからば、第13条の精神とは何か。トマス・ジェファソンがジョン・ロックの「社会契約説」に基づいて起草したアメリカの「独立宣言」である。これこそがアメリカン・デモクラシーのエッセンスであり、それを下敷きにして書かれたのが第13条なのだ。
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Posted by ブクログ
いつもながら小室先生の本は読み始めると止まらない。
この本も護憲とか改憲とかのレベルではなく、問題点を鋭く抉り出しています。
なんでこうも碩学なのか。
Posted by ブクログ
いいですね〜 小室節。
そして、憲法改正が巷間話題になっている今こそ、こちらの本は広く読まれるべき内容です。
故・小室先生は問います。
「日本国憲法で、何が何でもこれだけは守らなければならない、これが有効でなくなったら憲法の存在意義なんて雲散霧消してしまうと言う条文はどれか。これぞ民主主義の精華と言うべき条文は?」
もちろん第9条ではありません。
Posted by ブクログ
本書から学びを得たのは「権力を抑え込む為の憲法」という前提に対し、国民の側には「愛国教育」を与える必要があり、権力も庶民もその約束事の基で国体が護持されるという事。
憲法論は勿論大事だが、明日から憲法を変えたとしても、いきなり国の動きが変わるわけではない。愛国教育がなければ、庶民は侵略されたときに、敵に味方する。日本ですら、そういう歴史を乗り越えて教育勅語に至っていた。
憲法第十三条の話もある。そうした個人の保護と、軍隊の不在が矛盾する、政府がインフレ操作する事で国民の財産が目減りする事に対する矛盾を指摘する。この視点は面白い。国家であっても、個人の所有権に介入してはならないと言うのがロックの発明であった。
次の話もそう。国際法では「事情変更の原則」が適用され、その最たる例は日独伊軍事同盟条約。この条約は、廃止の手続きは取られていないがドイツが今、何者かに攻撃されたからと言って、日本がそれに対する同盟義務を負うかと言えば、そんな事を考える人は一人もいない。今更、廃止の手続きを取らなければならないと言う人もない。国連の敵国条項も同じではなかろうか。
何だか選挙で主張していた人たちに、その内容に色々と言いたくなる内容だ。こうした小室直樹の洞察が今もなお、面白い。
Posted by ブクログ
・近代デモクラシーはヨーロッパ社会で誕生した政治思想で、そのエッセンスは、「アメリカ独立宣言」に示されている。
「われわれは、自明の真理として、すべての人は平等に造られ、造物主によって、一定の奪いがたい天賦の権利を付与され、そのなかに生命、自由および幸福の追求の含まれることを信ずる」
・アメリカ独立宣言は、トマス・ジェファソンが起草した。彼が念頭に置いたのは、イギリスの思想家ジョン・ロックの「社会契約説」であった。
・国家や社会が生まれる以前の「自然状態」においては、身分も制約もなく、人間は自由で平等だとする。
そして、どんな国家や社会も、「自由で平等な」人間たちが対等に社会契約を結ぶことで生まれた、と述べた。
・国家権力は人民の同意と契約によって作られた物だから、その権力は人民に奉仕する為にある、とした。
・どんな権力であっても奪えない基本的人権として、「生命」「自由」「財産」の3つを挙げている。
・日本国憲法第13条には、ロック以来のデモクラシー思想、民主主義のエッセンスが詰め込まれている。
「すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする」
・国家はどんな理由があろうとも、国民の生命、自由そして幸福追求の権利を守るべし。憲法第13条は国家にそう命じている。だが、この命令を、政府や国会は遵守していない。憲法違反が堂々と罷まかり通っている。
Posted by ブクログ
極めて明快に憲法を理解できる。今の世間で交わされている憲法議論がいかに不毛であることか。政治家には期待出来ないなか、マスコミに良識を求めたいがこれも無理な話か。
Posted by ブクログ
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これぞ民主主義の精華と言うべき条文は?
それは憲法第十三条である。22
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独立宣言を起草したのは、後にアメリカ大統領となるトマス・ジェファソンだが、彼がこの宣言を書くに当たって、その念頭に置いたのはイギリスの思想家ジョン・ロックの文章だった。
ロックはアメリカ独立の約一五〇年前に生きた人だが、彼は先程も触れた様に近代デモクラシーの基礎理論を作り上げた人物として有名である。28
「私有財産の発見」で民主主義も資本主義も確立した33
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徳川幕府はどうかと言えば、「将軍の不在」はしょっちゅう起きていた。と言うのも、征夷大将軍とは天皇が授ける官職(然も令下の官)であるのだから、前将軍が死んだと言っても、直ちに後継者が相続出来る訳ではない。120
こうした制度を見れば、天皇が元首である事は明々白々である。121
その事は、現行憲法が総理大臣の空位を許している事でも明らかだ。若し、総理大臣が真の意味での最高決定権者であるならば、総理大臣の不在は絶対に許されない。124
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