あらすじ
◎――「保元の乱」(一一五六年)で、我が誇るべき天皇システムは解体され、日本の根本規範、倫理道徳は木端微塵(こっぱみじん)となり、腕尽くの世(武士の世)となってしまった。
漸(ようや)く明治維新で天皇は「現人神(あらひとがみ)」として復活された。
「天皇は神聖にして侵すべからず」である。
そも「現人神」とは、如何なる神であるか。
イエス・キリストを想え。彼は完全な人であると同時に完全な神。
肉体は人間、本性は神。これぞ「現人神」ではないか。
神としての天皇はキリスト教に於ける神と著しく類似してくる。
本書の目的は、この摩訶不思議な天皇に社会科学的分析の光を当てて、その本質を解明することにある。
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Posted by ブクログ
小室直樹『天皇畏るべし』は、126代にわたり続いてきた天皇制の歴史と、その唯一無二の成り立ちを掘り下げた一冊です。古代から連綿と続く血統の象徴であり、同時に「現人神」として日本社会を統合してきた存在が、どのように国家の創建や人々の心の支えとなってきたのか。本書はその重層的な意味を、鋭い視点で描き出しています。
特に、天皇が単なる政治権力者ではなく「畏れ敬うべき存在」として制度化されていった過程を知ることで、他国に類を見ない日本の特異性をあらためて実感しました。小室直樹先生ならではの独特の語り口で、学術的でありながらも楽しく読み進められるのも魅力です。
小室直樹先生独特の切り口は鋭くもユーモラスで、歴史や宗教を背景にした大きなテーマでありながら、とても楽しく読み進めることができました。天皇制を知ることは、そのまま日本という国を深く理解することにつながるのだと実感しました。
天皇制という制度の深さを学びたい人、日本という国の成り立ちに関心がある人に強くおすすめしたい一冊です。
#小室直樹 #天皇制 #日本史