【感想・ネタバレ】戦争と国際法を知らない日本人へのレビュー

あらすじ

【ご購入の前に】本書は1997年に徳間書店より刊行された『世紀末・戦争の構造』を改題した新装版です。

副島隆彦氏推薦・解説
「いまこそ大天才・小室直樹に学べ!」
日本人の外交・戦争オンチは国際法の無知に理由がある。


戦争、国際政治、国際法は三位一体でないと理解できない。国際経済も加えれば四位一体となる。
国家(ネーション)ができる前に、すでにヨーロッパには国際社会が存在していた。
そのヨーロッパにおけるキリスト教共同体からいかにして、国家、資本主義、近代法、戦争が生まれたか。
本書はその根源にある宗教を徹底分析したものである。
そしてヨーロッパで生まれたこの怪獣は、世界中に広まり、新環境に応じて姿を変じていった。
この怪獣の変貌を追跡し、その意味を真に把握する。
でないと……我々は気がつけば戦場に立っていたという羽目に陥ることだろう。
不世出の大天才・小室直樹だから解明できたヨーロッパ近代の根本原理。

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Posted by ブクログ

まずは自分の知識の無さを実感。しかし読みにくい部分はなく、不思議と読み進められる。
世界史をざっと振り返ってもう一度読もうと思う。
世界で起こっていることについていけない、自分ごととして捉えられない、これはきっと無知だからなんだろうなと反省。

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2022年03月14日

Posted by ブクログ

・宗教により法の捉え方?が異なる。

・アラブ圏には、今も十字軍コンプレックスがある。

・モンゴルやトルコに支配されたが、征服者側がイスラム教に改修したことで、アラブ化したと考えたため、アラブ人は被支配者でありながらコンプレックスを抱かなかった。

・クリスチャンに対しては十字軍で軍事的には勝利をおさめたものの、改宗させられなかったことがひっかかっていた。

・またヨーロッパの心の故郷とも言える古典ギリシア文化は、一度ヨーロッパで忘れられた後で、アラブを通じて発見され、再興された。

・ムスリムからすれば、ギリシア文化を教えた師匠であるのに、弟子であるヨーロッパ人が「こちらこそが本家本元、文化的にも優れているのはこっち」としたり顔してるのが気に食わない。

・湾岸戦争で、フセインは十字軍コンプレックスを払拭する意味も込めてアメリカと戦った。

0
2023年03月03日

Posted by ブクログ

この本の著者の小室氏はすでにお亡くなりになっていて、今から20年以上前の1997年に発行されたものです。国際法とは何か、それができる背景としてキリスト教と、イスラム教・仏教との違いも詳しく解説されています。

また国際連盟と国際連合との違い(国際連合は、連合国にとて最後まで敵国であった、ドイツ・日本に対する軍事同盟)も理解できましたし、なぜ安全保障理事会という会議体のみが各々拒否権を持っているかも私なりには理解できました。

現在世間を騒がせているウクライナ侵攻も、拒否権を持っているロシアが引き起こしていることなので国連による解決は期待できないでしょう。国連に代わる会議体をどこかの国が提唱できれば良いのでしょうけれどそれも難しそうですね。

以下は気になったポイントです。

・キリスト教の本質は、カルケドン信条である、つまりイエス・キリストは神であるという信条、つまりイエスは完全な人間であり、完全な神であるということ。ローマ・カトリック、ギリシア正教、ロシア正教、プロテスタント各派、みんな、カルケドン信条と三位一体説を信じている。唐代に中国に渡った景教はネストリウス派であってカルケドン信条を否定するが、日本に入ってこなかった(p10)

・仏教では「法前仏後」といい、はじめに法があったと考える、この法を悟った者が仏となる。仏教では仏といえども法(法則:自然法則、社会法則や規範)を変えることができない、これに対してキリスト教の神はこれらを自由に変えることができる、すなわち神が欲することが善であり、神が嫌うことが悪である。神は自由に意思決定することができる。(p16)この特徴がある故に、キリスト教共同体から、近代法、近代政治、近代経済(資本主義)が生まれてきた(p18)

・仏教の僧侶は本来は修行に専念することを要求され、一切の経済活動を禁止され労働を許されていない、その生活は喜捨(ほどこし)に依る、これに対して労働は修道士の義務の一つである「祈りかつ働け」というのがスローガンである。働かざるもの食うべからず、とはカトリック修道院から出た言葉である(p35)

・宗教改革を行なった、ルター、カルヴァンが心から責めたのは、カトリック教会が「内心における信仰」だけを絶対としないで、なんらかの外面的行動でも救済されるという教義をたてたから(p41)

・イスラム教ではキリスト像に象徴されるイエスキリスト像を拝むことは許さない、ギリシア正教と異なって聖画像も認めない、カルヴァンが偶像崇拝を思わせるものは悉く破壊し尽くしたと言われるが、キリスト教で偶像崇拝を厳禁しているのはプロテスタントのいくつかの宗派のみ、イスラム教では厳禁しているだけでなく、その可能性をにおわすものまで作らせない(p49)

・キリスト教だと、救済されれば、永遠の生命、救済されなければ永遠の死である、仏教では救済されれば永遠の死(涅槃に入りこの世に戻ってくることはない)であり、救済されなければ永遠の生命(輪廻転生の法則でいつまでも生まれ変わってくる)全く逆である。キリスト教は予定説であり、悪いことをしても救済される(p69)

・イスラム教は勤行(修行)を明確に特定している、これはキリスト教と根本的に異なる、勤行とは、信仰告白・礼拝・断食・喜捨・巡礼の5つである(p78)

・アメリカの奴隷の歴史を見るとわかるが、彼らにとって一番悲惨なことは、親子兄弟夫婦に関係なく家族がバラバラに売られてということ、農奴はこういうことはなかった。農奴の権利は殆どなかったがゼロでなかった、ゼロでない権利が少しずつ拡大してついには農奴解放となった(p93)

・中世において一番近代国家に近い組織は教会であった、その機能は国民生活の管理であった、生まれたら教会で洗礼を受けなければならない。そうしないと人として取り扱ってもらえない、結婚を教会であげないとそれは結婚とみなされない(p97)

・権力と権威との分化、二元化こそ中世ヨーロッパの特色である、世俗的権力のトップには皇帝がいたが、皇帝には精神的権威はなかった、それはローマ教会にあった(p99)

・要するに初めにヨーロッパは一つであるという概念があった、そして主権、国民、国境という概念とともに出来上がった近代国家が、お互いの絶対的な主権を前提として対等な国際関係を結びましょうという関係から発達していったのが、近代国際法である。その前提として、ヨーロッパは根本的なカルチャーが同じだということ、とりわけ宗教が同じだったということは大事である(p105)

・仏教は共通の正典がないので仏教は共通の基盤になれない、故に、インドと中国も、中国と日本も、ヨーロッパがキリスト教を基盤に一つの世界になったように、仏教を媒介にして一つの世界になるということができなかった。近代国際法は主権概念ができることによってできるが、それは同時に資本主義を発達させるための道具となった。(p108)

・異教徒は片っ端から殺していい、略奪していい、奴隷にしていいという態度であった、ヨーロッパは南米でも北米でも皆殺しにした。しかし18世紀以降になると、高い文明を持っていても前期的資本が資本に範疇変換を遂げていない国、あるいは資本主義としては未熟に見える国に対しては、半独立国家、半主権国家といおう概念を持って、不平等条約を押し付けることにした、それが、中国であり、トルコであり、日本であった(p109)日本は1854年に日米和親条約によって不平等条約を結び、1858年には、米・英・オランダ・ロシア・フランスと通商条約を結んだ(p110)

・国連は軍事同盟である、国連の本質は、日本とドイツに対する軍事同盟である。対比すべきは、国際連盟ではなく、ナポレオン戦争における四国同盟に退避されるべきものである、対日独軍事同盟である証拠は、敵国条項を含むこと。日独が少しでも不穏な態度を示したら、国連は征伐の軍を起こすと取り決められている。1942年1月1日、日独伊枢軸国の交戦中の26カ国は、個別的休戦を結ばないことを宣言、同盟関係を確認しあった。この軍事同盟を国際連合と呼んだ(p177)

・中国人であるための判別基準は、人種・民族・居住区などには関係しない、単に中国の文化を受容し、「中国人として生きる」かどうか(p206)

2022年4月2日作成

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2022年04月02日

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