吉本ばななのレビュー一覧
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ネタバレ久しぶりに手に取ったよしもとばななさんの小説。
「久しぶり」になったことで、自分の日常のせかせか具合に気づく。
死について。おそらく、考えないようにして、不安とか怖さから気を紛らわしながら生活を保つことが多い。
だけど、この小説は、死と向き合うことで生を確かめるような小説。
そのための旅。
怖くないし重くない。悲しみの気配はありながら、だけど、軽やかで温かい。そのことが、物凄く尊い。
物語の主人公たちのように、丁寧に慎重に感情が拾えたらなぁと思う。どの主人公も、自分の足場をよく捉えている。だから、突飛な行動も安心して読める。いまここは、安定なのか不安定なのか、不安定ならば、何を受け付けて何 -
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SINSIN AND THE MOUSE
母を亡くした主人公の小旅行を描いた話。母との思い出や口頭の遺書といった直接的な描写にも引き込まれるが、それに加え、小旅行の中で主人公が風景や人物をどう感じ取っているかという描写からも、喪失を抱えた人ならではの感覚が伝わってくる。主人公の感情がにじみ出るようで、とても素敵な短編だった。
ミトンとふびん
同じく母を亡くした主人公の新婚旅行の話。違うのは、主人公の夫も同じ時期に母を亡くしていて、さらにいじめで弟を失った過去もあるところ。
「SINSIN」と比較すると、「ミトンとふびん」には有名人や施設などの固有名詞が多く出てくるのが特徴的だった。純文学的 -
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吉本ばななさんの言葉たちは時に鋭くやわらかくどんなときに読んでも心の臓にじんわり沁み入る。表題の「ミトンとふびん」がこの短編集を代表しているのは人間がミトンのあたたかさを感じるには、同時にどうしようもなくふびんである自分を認めることにも繋がるからかなと全編を通して思った。今がふびんだからこそ希望があるんじゃないかと思えるような、哀しくて優しいひとたちの人生の一片を垣間見る体験だった。なんだか答え合わせみたいにぴったりと思考のピースを埋めるフレーズの連続で、この先も何度も読み返すことになるだろうと思った。ところで吉本ばななさんの描く素敵な男の子像がマジ完璧すぎて毎回ときめきが残るんですよね。今こ
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吉本ばななさんが、「大人になること」そして「生きるということ」について語りかけてくれる本。
すでに大人な年齢の私が読んでも、心にスッと入ってくる感じがして、何か軽くなるような気がしました。
とくに、第四問「普通ってどういうこと?」の章が好き。「普通のふり」を他人への思いやりとしてできるようになる、という箇所が印象に残りました。
自分がもっと若いとき、たとえば高校生くらいの時にこの本を読んだとしたら、もっと違ったのかな?それとも、当時の自分には素直に受け止められなかったのかな?なんて考えてしまいました。
とても短いので、たまに手に取って読み返してたいと思います。 -
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ネタバレまだ途中。
でも感想が書きたくなったので書こうかな
私は宗教2世だ。「血と水」を読んだ瞬間に心臓がどくどくとした。そんな話だと思ってなかったので唐突に現れて胸の中に手を突っ込まれたきぶんだ。
何かのきっかけで読みたいリストに入れていただけで見つけて手に取って、読み進めていると、前に付き合ってた人のことを思い出し、あーーこの本読んで欲しいな〜と思っていた矢先。
私は28歳になる歳で宗教から離れたく東京に出てきた。離れて6年、やっと、大好きな両親と大嫌いな宗教を共存して認める気持ちになれたのだ。それは元恋人や友人に支えられて28歳にしてやっと、自分は自分自身だと認められたからだ。昭と出会った主人 -
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本家(というのか?)遠野物語は未読なので比較はできませんし、そもそも吉本ばなな作品も初なのでどのように読めば良いのかと構えていたのですが、案外スッと心の隙間に入ってくれた作品集でした。
文章の平易さとか人々の日常の生活感の描写は町田そのこさんに似てるなと思いつつ、そこからさらにドライにした感じを受けました。
あとがきにもあるように、「怪談!」というより「幽霊的存在の介在するすこしふしぎ物語」ばかりで、ホラー(読書での恐怖)を楽しみにする方には全く期待外れに終わると思います。
ただ怪談というか霊異譚あたりが好きな人にならハマるんじゃないかなと思いました。当方上手くハマったので星5進呈でござい