ジョン・ディクスン・カーのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレカーの凡作と呼ぶ声もある作品。
題材はいいと思う。
周りの被害者への不自然なほどの低評価から疑問は始まり、被害者の殺害直前の謎の行動、被害者の謎の経歴と謎がそこかしこに散りばめられて、どうつながっていくのかワクワクして物語にひきつけられる。
ただ、都合良すぎでしょという部分もある。手際の良く、ヒューズをショートさせるための手袋とかボタンフックの用意などその一例である。
詰めが珍しく甘いな、と思う。
中盤で、被害者が変装して入った等々の真相を明かすのが早すぎた、という批判(?)もあるが、特に早すぎたとは思わなかった。フーダニットを志向していて執筆していたなら、妥当なタネ明かしの時期頃だろう。 -
Posted by ブクログ
ネタバレフェル博士シリーズ
雇い主であるミルドレット・テイラー夫人を毒殺したとして裁判にかけられる被害者の秘書ジョイス・エリス。彼女の弁護を請け負ったパトリック・バトラー。使用されたアンチモンの出所の謎。バトラーの弁護で無罪判決を受けたジョイス。リチャード・レンショーの毒殺事件。容疑をかけられた妻のルシア。ルシアの依頼で事件の真相を探るバトラー。離婚の為にルシアが雇った探偵が襲われる事件に注目し探偵社を訪れるバトラー。バトラーに証言をした直後に何者かに絞殺された探偵社社長ルーク・パースンズ。バトラーの周囲で動く金歯の男の謎。レンショーがボスとなっていた悪魔崇拝教団内部の権力闘争。フェル博士の導きで事 -
Posted by ブクログ
大学教授のニコラス・フェントン教授は、17世紀に書かれた手記が気になっていた。
それは、自分と同姓同名の貴族フェントン卿の執事、ガイルズが書いたものだった。
そこには、フェントン卿の妻、リディアが毒殺されたことが書かれていたのだが、
肝心の事件の顛末や犯人が失われていたのだ。
どうしても気になるフェントンは、悪魔と契約し、フェントン卿の体に乗り移り、
犯人を見つけ、さらには事件を事前に食い止めようと企む。
しかし、本物のフェントン卿は女好きの上、政治的陰謀にも巻き込まれ、
はたして悪魔を出し抜いて歴史を変えることはできるのか?
50年以上前の作品だけど、古臭さはあまり感じず、堪能しました。
-
Posted by ブクログ
ネタバレ初カー。なんだろう、ミステリなんだけどオカルト要素が多くて新鮮だった。
今思い返せば、語り手となる主人公が冒頭職場で上司に指示をもらう場面があるんだけど、読者が実感を持って読める場面ってそれくらいかもしれない。もうそこにクロスという怪しい影が滑り込んでいるんだけど…
休日を過ごす別荘地に向かう電車で、自分たちが普段生活している現実世界から遠ざかって、もう後戻りできないんだろうなという感覚がすごくある。
事件現場は由緒ある家族の屋敷、霊廟、消えた死体、壁をすり抜ける幽霊…オカルト要素満載なんだけど、トリックは超現実的で、男女が起こしたくだらない殺人事件だった。
なんだろう、ただのミステリをオカ -
Posted by ブクログ
ネタバレ序盤は毒殺の罪で逮捕された無実の女性を救う王道の法廷ミステリー。弁護士である冷笑系・ナルシスト・自己中心的で自惚れの激しい弁護士・バトラー(情にアツい一面もある!)が主人公である。その女性にしか機会のなかった殺人事件を、バトラーの機転で無罪判決を勝ち取る。
ここまでは文句なしに面白い。二つ目の事件でもバトラーは第一容疑者の別の女性の潔白を証明しようとする。フェル博士が登場し、なにやら事件の背景には悪魔崇拝教団が深く関わっているという展開に…ごろつきや教団達とのバトル描写で露骨に失速。
典型的な竜頭蛇尾作品で星2が妥当だと思っていたところ、終盤に物語は急展開を迎えて、竜頭蛇体竜尾となる。
【完 -
Posted by ブクログ
ネタバレ諜報機関に属していたため、都合上4んだ事にされていた語り手ホールデンが復員し、数年ぶりに旧友ソーリィと恋人シーリアに再開する場面から始まる。「なにか特別な任務で遠くへいらしていたのね。」恋人の第一声に込められた思いは後に如何ほどのものであったか分かる。
ホールデンは旧友の妻であり恋人の姉であったマーゴットが脳出血で4んだと聞かされる。旧友ソーリィは病死と説明するが、恋人シーリアはソーリィの虐待を苦にしての自死であると完全に意見が食い違っており、ホールデンは旧友と恋人のどちらを信頼するか悩んだ挙句に殺人という結論を出す。
物語の核となるのが二者択一の苦悩。旧友が正しければ恋人は精神異常者であり -
Posted by ブクログ
ネタバレ手持ちの文庫本は表紙がクラシカルな雰囲気の女性のポートレートで登録されている表紙より好きだが、もはやポップとも言えるようなどんでん返しの本書には多少アニメっぽいイラストの方が合ってるのかもしれない。本作より後のクリスティ「蒼ざめた馬」がかなり好きで、本作もヘンダーソンが引用する昔の知人バリンジャーさんの「死んだ人間などちっとも怖くない、注意しなきゃいかんのは生きたろくでなしどもだ」という名言通り、怪奇現象を科学的に解明する話だろうと思いながら読み進めて説示までなかなか面白かったが、いきなり探偵役が倒れるあたりから収拾のつかない展開に。評決と言う短い終章でガラッとオカルトに揺り戻され、ここが本作