田中文のレビュー一覧
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ネタバレ【こころは遺伝する】 ロバート・プロミン 著
「ガーディアン紙」の「一度本書を読んでしまえば、二度と同じ目で世界を見れなくなる」という禁断の書。近年、注目されている「行動遺伝学」の本です。
一言で言うと、「個人差のほとんどは遺伝によって説明され、DNAこそが『自分らしさ』の青写真だ」というもの(原文タイトルも“Blueprint; How DNA Makes US Who We Are”)。「氏か育ちか」の議論で言えば「氏(DNA)」の決定要因が大きいと言います。遺伝率の平均は50%で残りは環境要因に影響を受けるそうですが、環境からどういった影響を受けるか(=本人がどう感じるか)もDNAによるもので、「心理学で用いられる環境要因のほとんどが、大きな遺伝的影響」であると断じます。年齢を経るごとにDNA影響が発現し、親の接し方や教育云々よりDNAだと言います。
訳者の安藤寿康もこの行動遺伝学の信奉者ですが、並行して読んだ『運は遺伝する』(橘玲、安藤寿康)の方が分かりやすいかも知れません。ただ、個人的な経験でも環境から影響を受けたこともあり(どう感じたかはDNAによるのかもしれませんが)、また周囲を見渡しても遺伝では全てを語り尽くせないないと思うのですが如何でしょうか。仏教の「縁起」を信奉していた自分には、本書の「DNA推し」に接し、「同じ目で世界を見れなく」なったのですが、別の立場の人の論評も聞いてみたいと思った一冊です。 -
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感極まる作品で、実際に読み終えながら泣いてしまった。誤解なきように言っておくと、本書は無闇に物語性をかきたてるような、扇情的な語り口では決してない。華々しい学歴を持つ腫瘍内科医である著者が、至極冷静に客観的に、がんという病を名付け、腑分けし、闘ってきた人類の歴史を解説しているだけ。しかし何世代にもわたって数多くの人により受け継がれてきたバトン、血が滲むような悪闘の足跡、その全てがまだ過去となったわけではない、嘆息するほど多様で分厚いこの病の壁にいまだに体当たりし続けている研究情勢は、多くの人にとって改めて胸が打たれる歴史だ。何よりも、これは人間の尊厳の闘いであることを、一人一人の患者の姿を通して克明に伝えてくれる。世評に違わぬ、素晴らしい作品だった。
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ネタバレ本を読んでいると数年に一度有り得ないレベルで面白い本に出会えるのだけど、本書はまさしくそういう本だった。
いやぁ、名著も名著です。
原著は18年出版なので、日本でもこの手の話はいくつか出ているんだけど、第一人者がしっかりとソースをもって語ってくれるのはありがたい。
主題としては、人と人の差を作るのは何か?という部分なんだけど、私たちは常に遺伝子の影響を受け続けているんだよね。
十分な栄養を受けて育てば、身長の差は後は遺伝子の差しか残らなくなるというのは当たり前の話だし。それは学業でも同じことが言える。環境を充実させればさせるほど、環境以外のものが差異になってしまうという、ある種残酷な事実。
遺伝子というのは傾向なので、未来予想図ではないけど青写真にはなり得る。
その中で、自分が何が得意で何を好み何になりたいのか、というのはもう一度振り返って問われる時が近くまで来ているのかもしれない。
後ちゃんと覚えておきたいのは注釈で書かれていた「集団間の平均差の原因と、集団内の個人差の原因は必ずしも同じではない」という部分だね。
統計学の基本だけど、この点は(意図的に)忘れられる話が多いので、改めてメモしておこう……。 -
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ガンを取り巻く様々な分野からの視点が面白い。
医療の中でも外科的治療や化学療法も一枚岩ではなかったこと。そして緩和医療の気高い精神。科学や技術の発展が密接にガン治療にも関わっているということ。疫学はより客観的にがん医療を知るために必要だったこと。
シドニー・ファーバーらががん医療の発展のために奔走しているところも見どころ。医療の分野を飛び出し政治家や俳優、スポーツ選手にも働きかけ、広告塔を作り上げ、がん研究の礎となる基金を設立した。がん患者を助けると言う目的のため様々な手段を用いている点で、アフガニスタンの灌漑用水路の建設を進めた医師の中村哲さんが連想される。
本書は一貫して著者の“がん患者とその家族にむけて”という思いが随所に感じさせられる良書だと思います。また、個人的にはホジキンやバーキットなど、医療をかじったことのある方なら知っている人についてもちょこちょこスポットが当たっていたところも飽きなく読めたポイントでした。
下巻も時間を空けずに読んでいきたいです。 -
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生物学に対する根源的な知的好奇心がこれでもかというほど満たされて震えるほど面白かった。
遺伝は、生命現象の神秘さと自らを形作る最小単位という身近さを併せ持っている。本書は、遺伝の解明の歴史書であるが、単なる科学史ではなく人類が自分の起源を語ろうとする壮大な物語である。遺伝の解明は科学の発展であるとともに、人間とは何かという自己の追求であり高揚感が抑えられなかった。
メンデルやダーウィンから始まり、ゴールトンやモーガンやワトソンやクリック、フランクリン、サンガーなどの科学的な偉業だけでなく、背景や野心、失敗、迷いなど人間的な面も余さず書かれていて良かった。
遺伝学の発展は、病気の解明や治療など多大な恩恵をもたらす一方で、優生思想の暴走や遺伝子操作など越えてはならない危うさを孕んでおり、遺伝子を探るのではなく使う段階に来たとき、恐怖も覚えた。
重要な転換点で思わず鳥肌が立つほど面白くて、下巻を楽しみにすると共に、「がん 4000年の歴史」も読みたいと思った。 -
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『遺伝子 親愛なる人類史』感想文
本書『遺伝子 親愛なる人類史』は、遺伝子をテーマに、人類の過去・現在・未来を縦断的に見通す壮大な一冊でした。前半で語られるダーウィンやメンデルの話は、これまでどこかで聞いたことのある内容で、新鮮味には欠けましたが、遺伝子研究の原点を再確認するという意味では意義深いものでした。
その後に展開される優生学の話は、重く、心がざわつくような内容でした。人間が「よりよい子ども」を望むという欲求の先に、歴史的には数多くの悲劇があったことを改めて思い知らされます。特に、現代においてもその欲求は形を変えて存在し続けており、技術の進歩によってそれが実現可能になりつつあるという現実に、複雑な思いを抱きました。
最も興味をひかれたのは、現代のゲノム研究や新優生学に関する章でした。CRISPRなどの技術の登場によって、私たちは本当に人間を「設計」できる時代に差し掛かっているのだと実感します。しかし同時に、遺伝子だけで人間のすべてを説明することはできず、エピジェネティックな変化や環境、偶然といった要素が重なり合って、私たちの表現型が形作られているという指摘には深く納得しました。
本書は、現代から未来にかけての遺伝子をめぐる問題を、非常にわかりやすく、かつ客観的に解説してくれています。遺伝子レベルで何か「原因」が特定されると、それを排除したくなるという人間の本能的な欲求、そしてそれに応えようとする科学者や企業の動き。これらの衝動の危うさを、改めて強く認識させられました。
また、「生まれか育ちか」という古くからの問いに対しても、遺伝子がどのような重みを持つのかという点が、丁寧に描かれていました。たとえば、自分の子どもが遺伝子疾患を持つとわかったとき、何が本当の幸せなのか。遺伝子の段階で中絶することが「正しい」と思えてしまうのは、親のエゴなのか、それとも愛なのか——この本を通して、さまざまな視点から深く考えさせられました。
科学的な知識に裏打ちされながらも、倫理と人間の本質に迫る一冊。読後には、未来を生きる私たちが何を大切にしていくべきかを問われているような気持ちになります。非常に刺激的で、思索に富んだ読書体験でした。 -
Posted by ブクログ
ビルゲイツおすすめ本として紹介されていて、気になって手に取った。
36歳の脳神経外科医が癌になり、
37歳で亡くなるまでの手記。
文学、哲学、科学、医療に精通した著者だから書けた、生と死を真正面から受け止めようとする葛藤。
医学生が必ず通る解剖実習など、生々しい描写もあったが、医者になるまでの道のりや日本と変わらない医師の勤務実態などを知ることができた。
力つきた著者のポールの筆を引き継いだ妻ルーシーのエピローグが、
また素晴らしい。
彼の最期を克明に記すだけにとどまらず、
ポールの意向をくみ、
感情的にならず、深い愛情を持って接していた様子が伝わる。
真に聡明で愛情深い人というのは、
どんな状況においても、
最善を尽くそうとするんだな。
医者でなくても、
癌にならなくても、
平凡な私でも、
現実を受け止めて
考えながら
前を向いて生きることはできる。
ポールカラニシは
全世界に大きな足跡を残した。
彼の人生は、志半ばで無念であったとしても
この本を読んで
救われた人が世界中に大勢いるはず。
いろいろ
深く考えさせられた。
ずっしりと重い。
でも、どこか軽やかな風を感じるのは、
ポールとルーシーの人柄のなせるところか。
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Posted by ブクログ
本書を一読することで、遺伝学の歴史は人類の叡智による燦然たる科学の歩みであるとともに、人類史上とてつもなく大きな惨禍を伴ったものであることを理解することができる。そして、この科学の歩みは、既に私たちの仕様書の解読を終え、近い未来にアップデートさえしようとするところまで手が届いてることも理解することができる。そこには、遺伝学という科学的な問題だけでなく、深遠な哲学的かつ倫理学的な問いが突きつけられている。もし、自分の仕様書が解読できるなら、私はそれを望むのだろうか。子供がいたとして、子供の仕様書を解読するだろうか。解読したとしてその結果を子供に伝えるだろうか・・・。本書は、単なる遺伝学の歴史の概説書ではない。遺伝性による精神疾患の家族を持つ、著者自身の家族史でもあり、具体的な物語性を伴って一般読書者にも訴えかける。プロローグの時点で既に感動している自分がいる。名著と思う。
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Posted by ブクログ
人生の成功を掴み掛けていた時に末期の癌が発覚した著者。癌との闘いは厳しいものだったのは間違いないと感じるが、著者が癌になってから過ごした時間の全てがその闘いの苦痛に満ちただけの時間でないことも確かだと感じた。
本文中にいくつか惹きつけられるフレーズを見つけた。それはいずれも著者が懸命に生きようともがいた結果生まれた言葉である。
死は誰にも訪れる。しかし、その死を迎える方法は自由だ。著者の生きる姿からは、「死を身近に感じていない自分は、果たして精一杯に生きることができているか」「今ある時間を生きるってどういうこと?」という問いについて考えさせられる。自分なりの生き方を見出し、ただ死に向かうのではなく、死ぬまでの時間を生きるような在り方でいたいと思う。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ「遺伝子」なかなか難しい題材だが、科学的な部分と人類史との関わり合いの部分ととても分かりやすくてスムーズに読むことが出来た。科学的な部分では遺伝子・DNA・RNA・ゲノムなど、聞いたことはあるけど・・・な言葉もなんとなくイメージできどうそれが進歩してきたのかも興味深かった。また人類史との関わりについては遺伝子の研究が断種という考えからヒトラーにつながっていくところが衝撃的だったし科学者を理性的にさせるほど研究が恐ろしい結果につながりかねないということを知った。
遺伝情報の発現は必要性のためではなく、スイッチを何かが推すことによって起こる。多様性はバグではなく必要な進化の過程だと思えた。
下巻が楽しみ。