田中文のレビュー一覧
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あとがきに、著者がこの本を書いた目的について、親友に宛てたメールの中で「(読者は)僕の靴を履くようにして僕の境遇に身を置き、その靴で少し歩いてみて、そうか、ここからの景色はこんなふうに見えるんだな…遅かれ早かれ、今度は自分の靴を履いて、この場所に戻ってくるんだろう”と言うんだ。僕の目的はたぶん、そういうことなんだと思う。…道の先に待ち受けているのはこれなんだと示すことなんだと思う」とある。
著者の目的は充分果たされている。
死へのカウントダウンの中、著者がよくこの死と誠実に向き合った記録を残してくれたと思う。
死が目の前に見えてきた状況での心の準備、予行演習という点で、とても読む価値があった。
と同時に、健康で過ごせる今を充分に生きなければと励まされた。
また、大病を患うと読書が出来なくなるというくだりがあり、大好きな読書であるが、いつまでも読めると思わず、読めるうちに読まねば!と思った。 -
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人は自分が見たいものしか見ないのだ。
薬物依存症(医者の処方により坂道を転げるように重症化していく)の患者が語る嘘連続殺人の自白を(殺害現場の状況を何一正しく語れていない)、盲信の元にパズルを組み立てるがごとく事実に仕立て上げ、裁判で有罪判決までにいたらせた人達。そして、数多の人と面会し膨大な資料を読み込み、全てを調べあげ白日の下に晒した著者であるジャーナリストは、この本の原稿完成直後に亡くなり、その後、お騒がせ犯は無罪となったそうである。カッコ良すぎですな。
(もちろん、捜査チーム側にも疑惑の眼差しを向け、狂言と確信した人は多数いたが、それでも有罪判決となっている)
「みんな、ものすごくうれしそうだった!〜中略〜おれたちはおしゃべりしながら次々とたいらげた。あれじゃあまるで現場検証の成功のあとで殺人犯が祝福されているみたいだった!胸くそ悪くなったし、ぞっとしたね……」P273
人は見たいものしか見れないと、常に忘れずに生きたい。 -
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遺伝子はもともと得体のしれない科学であった。進化の研究が進むにつれて、遺伝子の存在が明らかになり、そこから遺伝子を利用した研究へと切り替わっていった。遺伝は父と母から半分ずつ受け取り、それが発現するかはわからない。時たまおきる突然変異が進化へと繋がっていく。遺伝子によってタンパク質が作られる。プラスミドに入れて、他の生物に注入できるようになって、遺伝子を改変することが可能になり、くすりなどかつくられるよになった。
遺伝を明らかにしたのはメンデルなどの細かい実験の賜物であった。遺伝子を完全に操ることは他のどの科学よりも生物の根源に関わってくるのだと感じた。 -
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現代に生きていて、"発がん性物質"という言葉を聞かずに一生を終えることは難しい。
『原因不明の不治の病を生じさせる』という空恐ろしい事実は、しかしその構造の不理解ゆえ、長らく見過ごされ、なんの対策もなされなかったどころか、明確な隠蔽にさえあった。
タバコのパッケージに警告文「喫煙は健康に害を及ぼします。」と記載されるようになったのはつい最近の出来事だと思いがちだが、ガンへの影響が初めて論文になったのが1761年、警告文の提案がなされたのは1964年、日本で記載されたのが2005年だ。
とはいえ、その因果関係を説明できないうえに、統計学すら発展途上であった時代の出来事とあっては、単純にその産業主義を責めることは難しい。
1976年に人間に備わったがんのもととも言える現がん遺伝子が特定され、この時ようやく喫煙者と非喫煙者に同じがんが生じる理由が明らかになる。
1983から次々とがん遺伝子やがん抑制遺伝子が同定され、遺伝子組み換えマウスでがんを人為的に発生させることに成功。
1986年には研究結果をもとに初のがん遺伝子標的薬剤が発見され、
1994年の病院は治験を待てずに新薬を求める人たちであふれかえった。
そして2005年、がんの死亡率は1990年と比較して15%近く減少した。
だが、同じ年に50万以上のアメリカ人ががんで亡くなっている。
上巻ががんの治療の物語だとしたら、本書はがんの研究の物語。
ひらめきと偶然と人の意志により、研究と治療がようやく結びついたがんと人との物語の終わりは、まだまだ見えそうにない。
治るがん、治らないが薬で抑制できるがん、未解明のがん、治療薬耐性がん、末期がん。
転移との戦い、副作用との戦い、治療費との戦い、そして代替医療との戦い。
がんの物語とは、医者と研究者と患者とその関係者。すなわち人類の物語と言っても過言ではないだろう。 -
Posted by ブクログ
「シクロホスファミド、シタラビン、プレドニゾン、アスパラギナーゼ、アドリアマイシン、チオグアニン、ビンクリスチン、6-メルカプトプリン、メトトレキサート」
一つの薬につき一体どれだけの人々の命、生活、そして尊厳と正気が費やされたのだろう。
本書は単なるガンの歴史本ではなく、未知の病に対して人間がどう対処してきたのかを物語るルポルタージュだ。
存在自体は紀元前から記録されてきたが、人間の平均寿命が延びるにつれ、その特異性が顕在化されることとなったガン。
細胞が自発的な意志を獲得して分裂増殖する病的過形成への対策は、早期に完全に切除できなければ、
右耳は全く傷つけずに左耳だけを完全に再生不可能になるまで溶かすような薬が必要となる。
そんな魔法としか思えないような薬が存在しない世界でまず実行されたのは、徹底的な人体実験だった。
乳がん治療のため、小胸筋、大胸筋、鎖骨、リンパ節、肋骨、胸郭を取り除く人体改造手術。
少し漏れただけで皮膚が壊死する薬、死に至るほどの嘔吐を発生させる薬、治療から10年後に別の新しいがんを発症させる薬。
仕組みが理解できていない病を治すため、誰も原理が理解できていない薬の組み合わせを、 人体という理解不能な対象に投与する。
技術と統計により現時点では状況が改善されたと言っても、ガンか肉体のどちらが先に死ぬかというレースの仕組みは変わっていない。
特にガン治療において、いまだあやしげな代替療法が蔓延しているのは、その苛烈な治療法のもう一つの副作用とも言えるだろう。
ガンによって失われてきたものはあまりにも多いが、ガンによって人類が得られたものはあったのだろうか。
ガンはどこまで解明されているのか、ガンの予防は可能なのか、 これからのガンとの戦いとは。下巻に続く。 -
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本当の生とはアイデンティティを確立していく過程(意味の獲得)。決して、生物学的な生ではない。生きながら生きていない人はたくさんいる
-私たちのアイデンティティとは、この先も長く生きられるという見通しと密接に結びついている(短いなら家族、中くらいなら本、長いなら外科医)
-エマはかつてのアイデンティティを取り戻してくれたわけではなかった。新しいアイデンティティを作り出す能力を守ってくれたのだ。そして、私は悟った。新しいアイデンティティを自分で作らなければならないのだと
-人間関係 :家族、子供
-目的(他人):外科医、人を助ける
-目的(自分):相対論の完成
-優秀な脳外科医でも、自らが死を前にするとアイデンティティが揺らぐ。私の人生には意味があったのだろうかと
-データを分析することはできるが、それがルーシーと私に子供を持つべきか教えてはくれなかったし、自分の命が消えつつあるなかで新しい命をはぐくむことにどんな意味があるのかも教えてはくれなかった。統計を超えて、死を個別に向き合わなければならなかった
-自分にとって一番大切なものは何か、考え「続け」なければなりません。脳神経外科がだめなら、父親になること?脳神経外科でいること?教師になること? -
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脳神経外科医として死と向き合ってきたポール・カラニシが肺がんになる。
症状から自分ががんであるとわかったときの気持ちはいかばかりであろうか。医師としては患者をひとつのプロジェクトと捉えることで仕事の効率化を図ることができる。しかしそれは一部分でも人間を人間として扱わないことに他ならない。
ポールはそれを決して否定はしない。しかし医師から患者へと立場を変化させることでその残酷さを体感することになる。
人として生きることとはどういうことか。生きる意味とはなにか。「がん患者」ポールにとって脳神経外科医の仕事はあまりに過酷だ。睡眠時間も体力も私生活も削って向き合わなければならない。
がんから一旦復活したのになぜ激務に戻るのかはポールにしか理解できないし、ポール以外の人間は理解する必要もない。ただ受け止めるだけだ。
もしかしたら医師としての仕事ががんの再発を促したのかもしれない。しかしポールは後悔しない。
ポールは病を理解し、受け入れた。
それだけの能力があった。
ある人は民間療法に頼り、ある人は宗教に頼る。それも選択だ。その人たちにとっては生の時間を延ばすことだけが生きる意味になる。
それ以外の選択を排除すべきではないのだ。
生きるために生きるという選択肢は、ある人にとってはもはや死んだのと同じなのだ。 -
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ネタバレトマスクイックと名乗り、30人以上の人間を殺し、遺体の一部を食べたと自白していたスウェーデン人の犯罪者を記者が掘り下げた話なのかな~、と思っていたら、実はそれがすべて冤罪だったという恐ろしい話。
第1部で、トマスクイックが犯罪を自白して有罪が次々と確定していった最後に、実は自分は殺していないんだ、と作者に話す部分を読んで、鳥肌が立ちました。これが随分と昔の話というのであればまだしも、2000年代に入ってからこんな大規模な冤罪が。
第2部は主に著者がひたすらトマスクイックの取り調べや判決について詳細に調べていくシーンが描写され、最後の第3部が、それまでの流れが覆っていくやりとりがまとめられています。
人生に一度だけ、自分は冤罪で市長をやめさせられたんだ、という人に会ったことがありますが、こういうことが実際に起きているんだな、と思い出させられました。
とにかく衝撃の次々と出てきて、かたずをのんでいる間に終わってしまった印象。厚みも重みもありますが、読む価値十分の一冊でした。 -
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少年に対するわいせつ行為、刺傷事件、ずさんな計画による銀行
強盗事件を起こして精神病院に出入りしていた男が、ある日、突然、
セラピストによる面談中に重大な告白を始めた。
30人を殺害し、8件の殺人事件で有罪判決を受けたのはトマス・
クイックを名乗る42歳の患者。本名はストゥーレ・ベルグワール。
セラピーのなかで次々と語られる犯行はスウェーデン国内のみならず、
ノルウェーやフィンランドにも及んだ。
14歳から断続的殺人を続けていたというトマス・クイックは、スウェーデン
史上初の連続殺人犯だ。8件の事件で有罪が確定し終身刑を言い渡され
た10年後、クイックは著者との面会で切り出す。
「自白はすべて嘘だった」。
そこから著者の、事件の検証が始まるのだがこれが粗製濫造される
下手なミステリーよりも面白い。
自白はすべてセラピーのあだいに行われ、それに伴う取り調べはひとり
の主任捜査官に委ねられ、捜査資料に含まれた実況見分の様子から
は検察官が巧みに犯行現場に誘導する言動が読み取れた。
捜査側の都合にいいように書き換えられた調書、明らかに抗不安剤
依存であろう姿が納められた実況見分のビデオ。すべてが矛盾だらけ
だった。
FBIの元心理プロファイラーじゃなくても、クイックの自白が不自然である
ことに気付くと思うんだけどね。
連続殺人犯と言えばテッド・バンディやジョン・ウェイ・ケイシーに代表
されるアメリカだが、彼らが対象にした被害者には一定の基準があった。
だが、クイックの被害者には少年もいれば少女もおり、中年のカップル
までいたのだもの。
犯行に一定のパターンもなく、共犯者として名前を挙げられて人々は
一様に犯行を否定し、クイックの家族は彼のアリバイまで証言している
というのに、スウェーデンの司法当局は彼に有罪の判決を下している。
例え本人の自白通りに犯行が行われていたにしろ、嘘の自白に基づい
た冤罪だったにしろ、スウェーデン史上最悪なんdなよな。
有罪とされた8件の事件、捜査の過程でクイックの自白の矛盾が明らか
にされていたのなら真犯人の捜査は続けられていたのかもしれないの
だものね。
長い精神病院での生活の中で、セラピストから重要な患者だと思って
もらいたかった。そんな思いから次々と自白に及んだクイックの心情
は分からないでもないが、クイックを取り巻く人たちが皆、一様に有罪
の方向に進んで行ったのが怖い。
尚、クイックは自白の撤回により殺人の罪も白紙にされ2014年に収容
されていた精神医療施設から釈放されている。
本書からは調査報道ジャーナリストである著者の執念が伝わってく
るのだが、残念ながらクイックの釈放を見ずに2012年に病死して
いる。秀逸な犯罪ノンフィクションを遺してくれたことに感謝だ。 -
Posted by ブクログ
「ここ二十年間のあいだの驚くべきスパートのあいだに、科学者はすばらしい新世界 ― 悪性増殖を解き放つがん遺伝子やがん抑制遺伝子や、切れたり点座したりして遺伝子のキメラをつくる染色体や、細胞死を受けつけないシグナル経路からなる世界 ― のベールを取った。」
この後すぐに「しかし、がんの死亡率の減少につながった治療法の進歩はそうした新発見をまったく反映していなかった」と続くのだが、人間はがんとの闘いを着実に進めてきたは明白である。実際に、1990年から2005年にかけて、がんの死亡率は15%近く減少しているらしい。もちろん、その変化は、医学的治療の進歩だけではなく、ロビイングによる喫煙率の減少や、早期発見に向けたスクリーニングの効果も大いに寄与していると考えられる。
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父ががんを患い、他界したのは、1992年のことだ。ちょうど先に挙げた二十年のスパートが起きる前のことだ。当時は、がんであることを医者が本人に告知することも躊躇われていた。本人よりも前に医者からその事実を告げられた母は、暫くそのことを本人にも子供である自分たちにも伝えなかった。同時に、もし自分がそう診断されたら、自分にも伝えてほしくないとも言っていた。がんになるということはそれだけ重く致命的な宣告であった。父は、外科手術も抗がん剤治療も行った。最後は丸山ワクチンも試していた。二十年後の今であれば、どうなっていたのだろうか、とどうしても考える。がんにかかるにはあきらかに早い歳であったから。
自分が父が死んだ歳になるのはまだ少し先だが、父が自分の歳にはおそらく初期のがん化は始まっていたであろう。目をつむると自分の体の中で、遺伝子による抑制を外れて増殖を繰り返す細胞が生まれているのを感じることさえできそうだ。がんは克服されるかもしれない。しかし一方、生物としてその規を超えて抵抗すべきではないようにも思うのだ。 -
Posted by ブクログ
「がん」と、その治療に挑む医師・科学者と患者たちの間の長い物語。外科手術、化学療法、放射線療法、予防医療、など、「がん」から身体を守るための戦いの歴史が綴られる。医学的な探求だけでなく、黒胆汁がその原因とみなされていた古き時代の話から、政府やスポンサーから研究のためのサポートを引き出すためのロビイングの話も物語の中での重要なパーツとして描かれている。副題は"A Biography of Cancer"。まさしく、がんの「伝記」として成立している。著者はこの本のことを「真の意味での「伝記」であり、この不死の病の思考のなかに入り込んでその性質を理解し、その挙動を解明しようとする試みである」としているが、まったく正しい。
単なるがんの解説書と本書とを分ける大きな特徴のひとつに、ほぼすべてのエピソードを個人名とくくりつけた上で記述されているところがある。このことは、特に著者の視点では、おそらく非常に重要だ。まだ存命の人も多いこともあり、本書を書くためには慎重かつ多くのリサーチが必要であっただろう。この本のためにそれが必要であったとしても、敬意を払うべき多大な努力が注がれている。上下巻の大部であるが、読む価値はある。何よりも自分も含めておそらく我々の三分の一か半分はその身に宿すことになる怪物の「伝記」なのだから、その正体について知ることが重要でないわけはない。
さて、本書のタイトルは、「病の皇帝(The Emperor of All Maladies)」である。もっとも、がんが皇帝のポジションを獲得したのは最近のことだ。疫病など他のすべての病が克服されて初めてがんが病として前景化してきた。「文明化はがんの原因ではなく、ヒトの寿命を延ばすことで、がんを覆っていたベールを取り去ったのだ」。いまや、がんの「克服」は人類がもっとも切望しているもののひとつだ。そして、今はまさにその皇帝が退位する前夜なのかもしれない。
下巻の中ほどで、がんの発生メカニズムが次の6つの本質的な細胞生理学的変化の現れに求められることが明らかにされる。
1. 増殖シグナルの自己増殖
2. 増殖抑制シグナルへの不応答
3. プログラム細胞死(アトポーシス)の回避
4. 無制限な複製力
5. 持続的な血管新生
6. 組織への浸潤と転移
これらが遺伝子の累積的変異によって重畳して発生する。「がんを患う」ということは、体内で起きている長くてゆっくりとした「発がんのマーチ」なのだ。「遺伝学的に言って、われわれの細胞はがんの奈落の縁に立っているわけではない。奈落に向かって、徐々に、段階的に引っ張られているのだ」。遺伝学的にがんになりやすい人や、なりにくい人がいる理由も、遺伝子変異を起こす発がん性物質にさらされるとがんが発生する確率が高くなる理由もこれにより説明される。
「がんの言語は文法的であり、整然としており、そして ― 書くのがためらわれるのだが ― かなり美しい」
ここにいたって、科学によるがん発生のメカニズムはある程度解明された。また、具体的に発がんに関わる遺伝子もいずれ特定されることだろう。だが、その成果はいまだ効果的な治療につながっていないし、古い治療の効果を説明することもできていないでいる。これからもまだ多くの人が戦いを挑み、そして最後にはいその「伝記」の終わりのページを書くことになるのだろうか。
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上巻の最後に著者へのインタビューが掲載されている。本書の著者は実際に現場で患者を持つ腫瘍医でもある。患者の存在がこの本を書く動機になったとも言っている。
そのインタビューの中で、本書の要点のひとつは、「今までの努力は何一つ無駄ではなかった」と念を押すこと、だと著者は語る。この「何一つ無駄ではなかった」は下巻の章題にも採用されている。「本書には歴史に対する敬意が込められています」と語る。そして、インタビューの最後を「書きつづけることができたのは、この話を語らなくてはならないという、ある意味、切羽詰まった思いがあったからだと思います」で締める。著者の思いがにじみ出ている本である。
最後に。専門用語も頻出する難しい内容だが、非常に読みやすい丁寧な翻訳になっている。ありがたい。 -
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ネタバレそして下巻はがんの予防、そしてついに来ましたがんのメカニズム解明。
細胞分裂の開始と終了を司る遺伝子が変異するのが原因、てことで分裂のアクセル踏みっぱなし、かつブレーキが壊れた状態になってまうらしい。そりゃワサワサ増えるわな。。。で、その遺伝子を標的にした、副作用の少ない分子標的薬がついに出回り始めました、という現状でこの大作は締めくくられとります。
最後まで読んでふと思ったのが、実は"がん"って病気とは違うんとちゃうか、と。もちろん発がん物質のような外部要因もあるけど、普通の細胞分裂でもDNAのコピーミスが発生して、そこからがん、ってのも確率的にありうる話やからなあ。
あらかじめ生命の設計図に記載されてる、自分の別バージョンみたいなもんとも言えるなあ、とそんなことを考えさせられました。もちろんできれば発症したくはないけど(-_-)
がんを知るにはホント最適な本やと思うので、あまねく人にぜひオススメ! -
Posted by ブクログ
実は4000年の昔からあったけど、ほとんどの病気を克服して寿命が延びだしたとたん、やな感じに存在感を増してきた、がんと人間のお話ですよ。
で、上巻はがん治療と、社会運動について。原因とメカニズムがなかなか解明できないので、ほんの30年ほど前までは力押しの治療がメインで、効果の割には患者さんの負担が大きかったそう。将来悪くなりそうなところ含めガッツリ摘出してまうか、命の限界まで抗がん剤を投与して、正常な細胞もろともがん細胞を焼き尽くすか。これはキツかったやろうな(-_-;;;
著者は現役バリバリの腫瘍医さんやけど、書いた理由が2つあるらしく、
①患者さんから受けた「がんとは何か」という質問に対する答え
②これまでの医師、患者さんの闘いの歴史に敬意を表するため
凄まじくスリリングでページをめくる手がアンストッパブルやけど、ここまで重たい本もなかなかないわ。。。というわけで下巻にレッツゴー!