あらすじ
ピュリッツァー賞受賞の医師による『がん』『遺伝子』に続く圧巻の科学ドラマ。顕微鏡による発見の数々から、感染症やがんとの苦闘、脳の仕組みの解明、最新の遺伝子治療まで、「細胞」からヒトそして生命の本質に迫ろうとしてきた人類の歩みを鮮やかに描くノンフィクション。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
ビル・ゲイツがオススメしてたので購入。
おいおい、めちゃくちゃ面白いじゃんよ…!
「細胞」という深遠なテーマを、いくつかの部に分けてその歴史とシステムを紹介していく本作。医師である筆者だからこそ描けるリアリティと、深い知識に裏打ちされたエピソードは読む人をキチンと引き付ける。上下巻と分量は多かったけど、わりとスラスラ読めたかも。
特に面白かったのは「腐敗」の話。
「私達はなぜ生きながらにして腐敗しないのだろうか?」という問いは考えたこともなかったが、言われてみると確かに不思議な話だ。
(これはもちろん腐敗を行う微生物を免疫が退治しているから)
まとめは下巻の方で。同じ作者の「がん‐4000年の歴史‐」も買ってみようかな。
Posted by ブクログ
余談だが、ドラゴンボールのセルの名前の由来は「細胞」であり、人間たちを吸収していくキャラクターとして、文字通り「セル=細胞」を体現していた。キャラ設定がストーリー開始当初からの登場人物たちの要素を組み込んだ悪役だったから、私はアニメ界のメタ的なポジションとして、セル画が語源だと思い込んでいた。
「細胞」は、すべての生物を構成する基本単位であり、細胞膜で囲まれた細胞質と、その中に含まれるDNAやRNAなどの遺伝物質、タンパク質、その他の分子で構成されている。
本書は、この「cell(細胞)」にまつわる歴史、哲学、倫理、そして未来を描き出す。冒頭のドラゴンボールのセルとは関係ない。何となく私が思い出しただけ。著者は『がん―4000年の歴史』でピュリツァー賞を受賞したシッダールタ・ムカジー。医師で研究者だが、優れたストーリーテラーである。
「上巻」は、細胞という「最小単位」がいかに発見され、人類の医療と生命理解に革命をもたらしてきたかを、多層的に描き出す。ロバート・フックが顕微鏡越しに「cell」という語を生み出した瞬間から、シュライデンとシュワンによる細胞説、そして現代の幹細胞研究やiPS細胞の登場にいたるまで。
ー 抗生物質や輸血などの治療法は、医療現場に深く定着しているため、それらが「細胞治療」だと考える人はいないかもしれない。だが、そうした治療法もやはり、細胞生物学についての知識から生まれたものにほかならない。がんの免疫療法など、二一世紀に開発された治療もあれば、遺伝子改変した幹細胞を糖尿病患者に注射するといった、ごく最近開発されたばかりで、まだ試験的とみなされている治療法もある。しかしこれらすべてが(古いものも新しいものも)「細胞治療」なのだ。なぜなら、どの治療法も細胞生物学についての知識に決定的に依存しているからだ。
ー すべての細胞は細胞から生じる。正常な生理機能とは細胞の正常な生理機能である。疾病、すなわち生理機能の破綻は、細胞の生理機能の破綻の結果である。
細胞のような最小単位でありながら、扱う範囲はメタである。スケールの大きな本。