法条遥のレビュー一覧
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バイロケーションというドッペルゲンガーの現れる一つの現象を扱ったSFホラーミステリ。特にバイロケーションの設定が面白く、全く同じ記憶を持った自分が現れることの影響や、日常生活に与える不利益などを非常に分かりやすく伝えており、ホラー特有の日常に潜む恐怖という点はクリアしている。記憶が同じ存在の差異を見つけるための策などもよく練られている。可読性も高く、淀みなく読めた。展開の予測のつかなさやテンポなどもよく、結末の理不尽な感覚も作者の持ち味が出ていて素晴らしいが、全体的に細かな設定を積み上げたせいか、やや小ぢんまりと纏まってしまったのが惜しまれる。主人公の独特の境遇も仕掛けを予期はさせるが、真相は
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ネタバレ殺人事件で殺され、地獄に落ちた男が転生して真犯人を追う傍ら、現世でその恋人も犯人を追うという二重構造のミステリ。地獄の設定やシステムは非常に秀逸でスラップスティック。地獄編の描写は非常に面白かった。現世での女刑事である愛も著者特有の狂気に満ちており、その心理描写は上手い。ただ、地獄編の主人公である良太が一貫して現世に残してきた恋人の名前を出さなかったことと、愛の父親が婿入りという時点で、作品の大掛かりな仕掛けが粗方読めてしまったのは残念極まりない。理不尽を得意とする著者だからこそ、消去法で最も理不尽な可能性を考えたら容易く行き着いてしまう。ホラー寄りのせいか、ラストの悪魔の一人語りも理不尽を通
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前々作『リライト』前作『リビジョン』から続くシリーズ3作目。『リライト』の裏側の真相が明かされており、事態はより複雑化しエントロピーの増大した構成となっている。パラドックスの穴をつきつつ、矛盾を改めて演じ直すというのは分かりにくいものの、その真相は圧巻で非常にロジカルなものとなっている。前2作にあったホラー的な要素はやや薄れているものの、代わりにSF色とミステリ色は濃くなっている。理不尽を結末に置くことの多い著者ではあるが、今回はその理不尽さは動機になっている趣が強く、理不尽に演じ直す(リアクト)していく様は非常に面白かった。余談だが、文章は個人的にはかなり好みで複雑な構成ながら分かりやすく感
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ネタバレジャンルはミステリ寄りのホラーだけど別に怖くはない。実際にバイロケーションが出たら恐ろしいとは思うが、うまく共生できれば二馬力になるかも…と思ったり。
結局バイロケってなんなのかとか、警察はどうなったのかとか、飯塚の立場とかよくわからないまま終わった部分も多い。オチの展開も早々に読めてしまう。加納が殺された辺りが盛り上がりのピークだった。飯塚に護衛をつけられた辺りの忍は、見張られているというストレスはわかるものの、守ってもらって?もいるのに不満ばかりで、自分ではなにもしないくせに当たり散らして見ていていらっとしてしまった。最後まで本物の忍はいいとこなしだったし。 -
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オリジナルである自分、バイロケーションと呼ばれる自分。
自分ではあっても自分ではない存在。
もしもその姿を目の当たりにしてしまったら、精神的に受けるダメージは想像もできない。
自分だったら・・・そう考えると、見なかったことにしてしまいそうだ。
それでも実際に被害が及ぶようになったら、どんな解決方法がベストだと言えるのだろう。
幸せな新婚生活。
突然現れたもうひとりの自分。
そして、少しずつ蝕まれていく精神。
崩壊していく幸せな生活と、転落していくだけの人生。
人生なんてちょっとした出会いや機会から変わっていくものなのかもしれない。
そのときは気がつかなくても、人生の分岐点に立っていることが -
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時をかける少女オマージュの「四季」シリーズ二巻目。
息子の「ヤスヒコ」を死の運命から救うため、未来を見られる手鏡を駆使する主人公。しかし思いもよらない人物達が立ちはだかる!という内容。
1巻は「続きが気になる!」って感じだったけど2巻にして漂う「大丈夫かこれ」感……笑 1巻時点ではこのややこしすぎるパラドックスがどういう解決を見せていくのかなぁ!っていう期待があったのだけど。今はこれ解決しないパターンもあるな。っていう心境。
帯とかかっこいいんだけどなぁ。分かりやすくしようという気が文章にないからきっと現代では流行らないと思う。あと主人公の行動原理が謎。というかすでに「時」に操られている感が。