小林信彦のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
1979年に記された「あとがき」には、「周囲に逆らわずに現代に漂っている男を描こうと思」った旨がある。
4つの中短編、関連していないようで最後まで読むと全体が繋がってくるという不思議なこの本の目次を開くと、4編それぞれに1966年から1982年までの年号がついているのだが、私が手にした文庫版が出版されたのは1982年。発表年はそれぞれ違うが、1冊にまとめられたのは冒頭にあるように1979年なので、4編目は、執筆当時は近未来の年号だったことになる。偶然らしいが、どことなく不思議な浮遊感があるこの本には似つかわしいことのようにも思える。
作者は、中原弓彦の名で『日本の喜劇人』という長編評論を書いた -
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Posted by ブクログ
小林信彦だからミステリに違いない的な安易な考え方で読み始めたら、全然違った。業界人の悲哀と、そこにオーバーラップするビートルズの曲。
周りの期待と、それに応えようとする努力と無力感という点では、一般サラリーマンと重なる部分もあり、特に最後の「巨匠に良いところだけ攫われる」という憤りなどはよくわかる。逆に「こいつダメだよなあ」と思っていた新人が、「ダメだ」と書いた文章を読んで頭角を現していく畏怖というか、焦りというのもわかる。
ただ、「小林信彦だからミステリに違いない」という気分で読み始めてしまったのが運の尽きというか、不幸だったのだよな。
どの話も面白いですよ。
でもつい、いつもの「キレ