ダン・シモンズのレビュー一覧
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ネタバレ銀河を覆う転移ネットワーク“ウェブ”が支配され、200以上の惑星が次々と崩壊していく。宇宙の命運を懸けた戦争は、ついに終盤へ──シリーズ第4作目。
これまでの旅で出会った数々の星が、無惨に滅びていく光景は胸を打ちます。それでも巡礼者たちは、人類のためではなく、友のためにそれぞれの道を選び、時間・宇宙・データの彼方を駆け抜けながら、自分なりのやり方で宇宙を救っていく。その姿は、まさに彼らの旅の集大成と呼ぶにふさわしいものでした。
特に鮮烈だったのは、AI=テクノコアの正体と陰謀です。彼らのサーバー(本体)は“ウェブ”そのものであり、転移ゲート間の隙間に隠されていた。そしてゲートを通過する人間のシナプスを演算資源として利用する事で、動力として利用する。さらにシュライクを解き放ち、人類抹殺による下剋上を狙う──1作目から示唆されてきた「ウェブ」「AI」「シュライク」という要素が、ここで見事に収束していく構成に唸らされました。
そして圧巻は、世界中の転移ゲートを破壊するという決着です。これはディストピア作品の王道ともいえる「支配の仕組みを壊す」展開でありながら、“ウェブ”を失うことは即ち、人類が1000年以上かけて築いてきた文明そのものを巻き戻すことを意味します。その代償はあまりにも苛烈でした。ゲート通過中の人間は細切れとなって絶命し、数多の人々が宇宙の片隅に取り残され、家族とも再開できず生きる術を失う。世界中の人類が地獄に突き落とされる、この凄惨な描写は、今年読んだ中で最も衝撃的なものでした。
さらに、テクノコアの真意を掴めず操られていた間は崇められ、彼らの手から世界を解放した途端に、暴徒により惨殺されるCEOの末路も、人間社会の残酷さを突きつける象徴的なエピソードでした。
最後に、巡礼者たちが再び集まり、領事は宇宙の彼方へと去ってゆくラスト。
もはや“ウェブ”は存在せず、今度の別れは永遠のものとなる。しかしそれでも、自らの宇宙船で少しずつ宇宙を切り拓いていこうとする姿は、人類が開拓者としての強さを取り戻したような終わりで、清々しくて良かったです。
人類の栄華と崩壊、そして再出発。その全てを描ききった壮大な結末に、ただ圧倒される一冊でした。(もっとも、物語自体はまだ続いていくのですが。) -
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銀河連邦と蛮族アウスターの戦争がついに本格化し、舞台は人類最後の未踏地・ハイペリオンへ。壮大な銀河叙事詩も第3作目に突入します。
本巻では、巡礼者たちと未来から送り込まれた怪物シュライクとの対峙が描かれ、シリーズ全体の大きな転換点となります。
科学が頂点に達した末に、衰退の道を辿る人類。蛮族と蔑んできたアウスターにさえ後れを取り、滅びへと傾いていく人類ですが、そんな中で社会に居場所を失った巡礼者たちが、人類最後の切り札として世界を駆けてゆく。銀河連邦と巡礼者、マクロとミクロの視点を往還させながら描かれる衰退と再起の構図が、強く胸を打ちました。
そして、連邦CEOが巡礼者達の故郷を次々にワープしながら、彼らの行く末を案じるシーンが好きでした。
本作が特に異彩を放つのは、「神」という存在を徹底的に物語に落とし込んでいる点です。AIが凝縮した知性によって創造された上位知性体UI。未来から現れ、裁きを下す処刑者シュライク。そして、自然発生した究極知性体。科学が神を不要にするほど発展した世界に、なお複数の「神」が示唆される。それらは“デウス・エクス・マキナ”の異なる側面として機能し、ご都合主義として語られがちな概念をここまで鮮明に具現化した作品には、これまで出会ったことがありません。
ハイペリオンという最後の未踏地。その旅の果てに待つのは人類の終焉か、それとも新たな夜明けか──。
圧倒的なスケールで展開する物語を前に、続く下巻への期待を高めずにはいられない一冊です。 -
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「読むのが早すぎた」という感想に尽きる。自分には、本作を味わえるだけの文学的教養が足りなさすぎた。しかしそれは、以後再読した時により解像度を上げて物語を味わえるという楽しみが残されているということでもあるので、悲観しないようにしようと思う。
ネタバレが絶対にイヤだという人にはおすすめしないが、上巻を読み始める前に、下巻の物語完結後に収録されている「訳者の物語:時の過ぎゆくままに」を読むことを強く勧めたい。その方が挫折する危険性が少ないと思うからだ。設定をある程度理解できていないと物語に入り込む前に匙を投げたくなる、というのはSF小説あるあるだと思っているが、私としては本作もそのカテゴリーに属する作品と言わざるをえない。しかも、本作の場合、大抵のSF小説では作品の骨格を成すSF的設定は物語全体の中核にはなっていないからそれがまたややこしい。逆に、そうしたSF的設定を気にせず、入れ子構造で語られる登場人物たちの個々の物語を純粋に楽しむという姿勢で読んだ方が楽しめるのかもしれない。しかるに、どのような「態度」で読めば本作を楽しめるのか、という部分で「解」を見出せなかったことに、私自身が本作を心から楽しめたという気分になれなかった要因があったと自己分析している。読み進めても物語の全体像がなかなか把握できないからなのかもしれないが、全体としてはSFというよりファンタジーの要素が強いように感じた。映像化に関してはアニメ向きなのかもしれない。
また、1つの作品の中に多種多様な文章スタイルやジャンルがごった煮にされているところも、自分が物語に入り込めなかった要因だったように思う。著者シモンズのこのやり方が面白いと思えるのであれば話は別なのかもしれないが。
上記のように不満点を書き連ねつつも、本作の評価は個人的には低くはない。好みの問題はあると思うが、登場人物たる巡礼たちが語る個々の物語はそれぞれ面白いからだ。不思議と、思い出してつまらなかったと感じた物語は1つも無かった。とりわけ、「学者の物語」「探偵の物語」そしてラストを飾る「領事の物語」はそれぞれ胸に迫るものがあった。しかし、個々人のミクロ的視点から語られる物語からは本作の全体像は依然として明らかにならない。それは続編の『ハイペリオンの没落』における俯瞰的視点によって明らかになるようだ。少し時間を置いてから、続編に挑みたいと思う。 -
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『ハイペリオン』シリーズ四部作完結編。多くの脅威が迫る中、ついに明かされる謎。果たして人類の運命は……?
文庫本で全8冊になるシリーズの最終巻である。あらゆる要素がてんこ盛りな本巻については、多くは語るまい。作者が書きたいことをすべて詰め込んだかのような、総決算のラストだった。
パクス、テクノコアの動きを描きつつ、やはりエンディミオンとアイネイアーを主軸として物語は進んでいく。情報を小出しにするアイネイアーの老獪さがもどかしいが、そうせざるを得ない理由もやがて明らかに。知能や精神担当でカリスマになっていくアイネイアーに対し、肉体派、冒険担当のエンディミオン。しかし、「覚醒」とタイトルにあるのは伊達じゃない。あれ……ド◯ゴ◯◯ール?さらに、ここにきてハイペリオンの7人の巡礼たちとのつながりが明かされ、彼らの物語の謎も解明されていく。
結末について、これでいいのかとモヤモヤしてしまったが、巻末の解説にあるとおりに当該箇所を読み直してみると、おっしゃるとおり、確かに納得いくものがあった。なるほどそう考えると、この結末と、アイネイアーの言動のすべても、ストンと腑に落ちる。そして壮大なこの物語が自分の中で見事に完結するのだ。読み切るまで時間がかかったけれど、本当に出会えてよかったシリーズ。いずれ再読したい。 -
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『エンディミオン』に続くシリーズ第四弾。オールドアース到着の4年後、エンディミオンの新たな冒険が始まる。
前作までの大冒険の末、たどり着いたオールドアースにて4年を過ごした一行。少女アイネイアーが12歳から16歳へ成長する姿を見守っているのかと思ったら、いつしか弟子のような立場になってしまっているエンディミオン。やがて人類の救世主として立つべき彼女の存在感は圧倒的なものになっていた。互いに惹かれあいながらもまだ男女としての関係がはっきりしないまま、エンディミオンは一人での旅立ちを命じられる。
今度は一人で冒険することになり、前作のような転位をしつつ、これまで以上にとんでもない目にあう。ネタバレは避けるが、あの痛みの正体があんなものだったとは……リアルすぎる(汗)。さらに満身創痍になってボロボロになるエンディミオン君が心配になる。
一方、引退したデ・ソヤ神父大佐が呼び戻され、前作での失態を許されて戦線に復帰するものの……。パクス軍は一枚岩ではなく、その周辺の組織も含めて謀略の限りが尽くされるあたりが読みどころ。
仏教世界を再現した〈天山〉でのアイネイアーの説教はまさに哲学。作者はもともと途方もない博学なのだろうけれどアメリカ人なので、東洋の哲学や仏教については本当によく勉強したものだと思う。愛の力が、強い力、弱い力、電磁気力および重力に並ぶ、宇宙の力の一つなのだという発想が面白い。AIに宿る魂とキリスト教の教義を兼ね合わせた、つまり科学と宗教、SFとスピリチュアルの融合された論説が本作の魅力の一つだろう。
ナノテクノロジーの展開とアウスターの正体についても衝撃。AIと人類の「共進化」という関係について言及されるあたり、1997年刊の本作は今こそ読み直されるべきテーマを語っていると思う。 -
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惑星間を転位ゲートで繋げるテテュス河を舞台に過酷な逃亡劇が続くなか、意外な味方と恐るべき敵が現れる……。
イカダで逃亡しつつ各惑星を冒険する主人公たちと、ジャンプごとに死亡と復活を要求される最速の宇宙船で追跡する神父大佐たちの対比、この絵面が何よりも面白い。
神話の類型を彷彿とさせる現地種族チチャタクと賢者的な神父との出会いが冒険を盛り上げる。さらに深まるシュライクの謎、そして現れる脅威が、読者を怒涛のラストに引きずり込んでいく。
いくつもの危機を乗り越えていくたびに深まっていく主人公たちの絆。ヒロインが12歳の少女であるため、本作の段階では恋愛まで深まらないが、暗示的な描写が続編に期待をもたせる。シリーズ全四部作の中で、三作目である本作が最も好きだという人がいるのもわかる気がする。(四作目はまだ未読だが)本作は王道SFアドベンチャーとしての魅力が凝縮されている、シリーズ最高傑作だろう。 -
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『ハイペリオン』『ハイペリオンの没落』に続くシリーズ第三弾。前作から約300年、青年と少女の冒険が始まる。
ズバリ前作より読みやすい。親しみやすい若き主人公と、秘密を持った少女、従順で優秀なアンドロイド、有能だがおちゃめなしゃべる宇宙船など、魅力あるメンバーで繰り広げられる冒険活劇。
さらに、彼らを追跡するデ・ソヤ神父大佐とその部下たちも敵ながら好感がもてる上、その心熱き闘いの様子が主人公たちの冒険と交互に描かれていく。文章量的にもダブル主人公制といっていいだろう。
両者の距離が次第に縮まっていく逃亡劇と追跡劇のなかで、前作までの濃密な世界観が掘り下げられていき、新たな謎が浮かび上がる。もちろん前作の人物やその痕跡が登場したりもする。本作のストーリー自体は一本道で読みやすいが、過去作で積み上げられてきた土台がさらにその面白さを増し深めているため、ここまで読んできてよかったと心底思った。
絶望的な危機を間一髪で乗り越え続ける主人公たち。果たしてその行方はいかに。そしてヒロインにまつわる謎とは……?先が気になりすぎるSFアドベンチャー。 -
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長門有希が読んでたやつ。枠物語の古典『カンタベリー物語』風の体裁をとっているが、中身は極めて濃厚なSF。
28世紀の宇宙時代、巡礼という名目で7人の男女が旅をしながらそれぞれの物語を語っていく。この説明だけ見ると未来版もしくはSF版『カンタベリー物語』的なものを想像してしまう。そういった趣きもあるにはあるが、中世の多様なドラマが収録されていたかの古典に比べると、本作はガッツリとした一つの大きな物語が設定されていて、やや面食らった。枠物語の「枠」の部分――世界観のキーとなるシュライクの謎――が思いのほか濃厚で、長大なSF巨編ともいえる展開を広げるのだ。そのあたり、実質的には短篇集だった『デカメロン』や『カンタベリー物語』とは大きく異なる性質を持つ。
とはいえ、7人がそれぞれに語る自分語りはそれ単体でも魅力のある話である上、それらが全体のSF世界における物語と絶妙なハーモニーをなして味わい深いものとなっている。旅の舞台となるハイペリオンの風景、背景の歴史、そしてシュライクの謎に引っ張られて先が気になる。SFにありがちな用語の読みにくさはありつつも、最後まで読まないと収まらない系の小説。 -
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20代中盤に夏休みで3週間ほどローマを中心としたイタリア旅行に行けることになり、その時ちょうど読みはじめていたハイペリオンをシリーズまるごと詰め込んでいった。
難解だし繋がりもわからぬままだし、きっと旅行中には読み終わるまいと思っていたのだけど、あまりの面白さに最初の10日で読み終わってしまい、その旅の間ずっと気に入ったシーンや繋がりを繰り返し読み続けていた。
当初知らなかった、ローマに生きた詩人ジョンキーツやサンタンジェロ城の登場に素晴らしい縁を感じて旅がより楽しくなった。登場人物達がここにいたのかもしれないと思うと独り嬉しくなった。
長編SFを読むのがはじめてだったので、途中で投げてしまわないか不安でいっぱいだったが、杞憂に終わるシモンズの小説の巧さ。
理論がわからなくともちゃんと物語を脳に染み込ませてくれるのが凄い。
それとアイネイアーちゃんが可愛い。
再読ちゃんとしたいシリーズ。 -
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ー “来世というものはあるのかしら。目が覚めてみたら、すべてが夢だったなんていうことがあるのかしら。きっとあるわよね、人間というものは、こんな苦しみを受けるために創られたんじゃないもの”
ああ、ファニー、きみは知らなかったんだ!人はまさに、そのような苦しみを受けるために生まれてきたことを。つまるところ、人が自意識と呼ぶものは、苦しみの波濤のあいまに生じる澄んだ潮だまりにすぎない。人はみな、みずからの苦しみに耐え、それを抱きしめるように創られている、運命づけられている。そう、狼の仔を腹に隠したスパルタ人の泥棒がその仔に腸を食いつくされるように。 ー
やっと4冊読み終わった。長かった…。
SFの全てが詰まっているとは、まさにその通りで、ありとあらゆるSFの構成要素がこの作品の中にあり、それでいてとっ散らかることもなく素晴らしい結末まで一気に読ませてくれる傑作。
もう、とにかくすごい!
300年後が舞台の『エンディミオン』と『エンディミオンの覚醒』全4冊が残っているのでまだまだ終わりそうにもないな…。
しばらく時間をおいて読むか。 -
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ー リイ、タラとプリンデナスといっしょに、演説の草稿を書いてくれー全〈ウェブ〉向けの警告と宣戦布告、両方のだ。四十五分以内にたのむ。
簡潔に、明快に。チャーチルとストルデンスキーの資料を参考にするといい。現実的だが挑戦的に、楽観的だが決死の覚悟を感じさせる方向でな。ニキ、統合参謀本部の動向をリアルタイムでモニターする必要上、わたし専用の司令マップ・ディスプレイを用意してほしいーインプラント経由でデータを読むタイプだ。CEO以外には読めないようにしておくこと。
バーブラは上院におけるわたしの手足となってくれ。上院に常駐して、状況を把握し、操れる者は操り、脅しをかけ、甘言を弄し、今後三、四回の投票では、わたしに反対票を投ずるよりもアウスターとの決戦を支持したほうが安全だと思い知らせてやるんだ。なにか質問は? ー
いよいよアウスターとの全面戦争が始まる。
そして7人の巡礼者は一人また一人と…。
おもしろ過ぎる!スピーディーな展開がたまらん!
後半が楽しみだ。 -
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ー 人間の経験の本質は、華々しい経験、たとえば結婚式がそのいい例だが、カレンダーの日付につけた赤丸のように、記憶にくっきりと残る華やかなできごとにではなく、明確に意識されない瑣末事の連続のほうにあるのであり、一例をあげれば、家族のひとりひとりが各自の関心事に夢中になっている週末の午後の、さりげない接触や交流、すぐにわすれられてしまう他愛ない会話.…というよりも、そういう時間の集積が創りだす共同作用こそが重要であり、永遠のものなのだ。 ー
まじか!こんないいところで終わってしまうのか!
というのも、『ハイペリオン(上)(下)』はほんの序章に過ぎず、全体の四部の一でしかないのだからしょうがないのだが、それにしてもある程度この作品だけで完結してくれると思ったら、一番いいところで終わってしまうなんて…。
とある事情でハイペリオン巡礼に参加した7人の男女。
旅の道中、到着するまでに各自、自己紹介がてらこの巡礼の背景と目的を順番に語り合うのだが、まさに自己紹介が終わったところで物語終了だなんて(笑)
とにかく各自の自己紹介エピソードが面白く、あらゆるSFの要素を盛り込んだ非常に贅沢な作品。
こんな傑作を今まで知らなかったなんて!!
とにかく面白い。早く続きが読みたいなぁ〜。 -
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ー 教会が滅びるつもりなら、それもまたよし。ただしその死は、キリスト再臨の知識に満ち、栄光に輝くものでなければならぬ。進んで減びるのではないにせよ、暗黒のなかに歩みいるのであれば、毅然とー雄々しく、たしかな信仰心をもって進まねばならぬ。
死の収容所のなかで、核の炎のなかで、癌病棟で、ユダヤ人大虐殺のさなかで、孤独な静寂につつまれ、何世代も何世代ものあいだ、死に直面しながらも信仰心を失わず、希望こそいだかぬにせよ、これらのすべてにはなんらかの理由があるのだ、これほどの苦しみを味わい、これほどの犠牲をはらうだけの意味があるのだと祈りながら、暗黒を見すえつつそのあぎとへと歩んでいった、何百万もの先人のように。
論理も事実も納得のいく理屈もなかった先人らが暗黒のただなかへはいっていくさいには、それこそごくごくかぼそい希望の糸と、いまにもゆらぎそうな信仰心しかなかったにちがいない。しかし、その先人たちが暗黒をまえにしてわずかな希望をつなぐことができたのなら、わたしにもまたおなじことができるはずだ…そして、教会にも。 ー
28世紀、謎の惑星ハイペリオンに巡礼団として派遣された7人の物語。
なぜ、巡礼するのか。旅の道中に一人一人が順番に語っていく。
意味不明な設定が解説なしに次々に物語られ、物語の中で少しずつその意味が部分的に分かっていく。物語がだんだん立体的になり、読み進めていくとイメージ出来るようになってくる。イメージ出来るようになるともっと面白くなってくる。物語の中に読者を引き込んでいく引力が強い作品。
続きが気になるなぁ〜。
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ネタバレ今日一日を人生最後の日のような気持ちで過ごせたら、きっと毎日が最良の日になるだろう。アイネイアーのように生きたい、彼女のような勇気を持って死ぬまで全力で過ごしたい、そんなことをこの本を読んで感じた。
誰しもあのような最期を迎えるわけではないが、未来において必ず死ぬという点では同じだ。いずれ訪れるその日まで、どのように過ごすかは自分で選ぶことができる。そういうアイネイアーからのメッセージを多くの人が共有して世界が変わっていったのだろう。
幼年期の終わりでは個が消えて全てが共有された形として人類は進化するが、彼らの世界もいずれそうなるのかもしれない…続きがあるとすればだが。 -
Posted by ブクログ
ネタバレやばい、切ない物語ばっかりなんだけど。
だけれども、謎は次の作品に持ち越しね。
(ちなみに残り3シリーズあります。
大ボリューム注意)
どの物語も切ないのよ。
ちゃんと物語の終わりにはアウスターのスパイは
判明することになります。
だけれども、一人の人物の消息に関しては
謎に包まれたまま…だから謎を…
探偵の物語が切ないんだよなぁ。
ちょっと特殊な身分の男性の
死のいきさつを調査する以来なんだけど
どうもそれはとんでもない秘密が絡んでいて
方々の敵から狙われるのね。
その男勝りの探偵は
その依頼人と恋におちるんだけど…
依頼人は悲しいことに殺されてしまいます。
だけれどもある手段によって…
なんだろう、胸が苦しくなるのよ。
時代を戻っていく娘を抱えた学者のそれも
悲しいものがあるのよ。
しかも原因が全く分からないのよ。
現状… -
Posted by ブクログ
ネタバレとにかく分厚くて最初は読むのを躊躇していたのですが、いざ読んでみると非常に読みやすく、独創性があって、恋愛やサスペンス要素もあるので、気付いた時には時間も忘れどっぷりとハイペリオンの世界にはまり込んでしまっていました。非常に面白かったです。
本書ではハイペリオンという辺境の惑星に集った7人の男女の身の上話が語られていくのですが、登場人物のエピソード毎に話が分かれているため、まるで別の本を読んでいる感覚です。特に気に入ったのは学者の物語「忘却の川の水は苦く」と領事の物語「思い出のシリ」。どちらも情感豊かで色鮮やかな画面が浮かんで来るようでした。
ただ惜しむらくはこのハイペリオン上・下だけでは謎が明かされないため、本書だけでは消化不良感が残ってしまうこと。出来ればひとまず完結となる次作「ハイペリオンの没落 上・下」も読まれることをおすすめします。長いと思われるか、また続きが2冊読めるんだと思われるのかは個人次第ですが、「没落」にて本書で彼らが語ったエピソードが集約していくラストは圧巻ですので、是非続刊も読んでハイペリオンの余韻に浸って頂ければと思います。