染田屋茂のレビュー一覧
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スティーヴン・ハンター『フロント・サイト 1 シティ・オブ・ミート』扶桑社ミステリー。
2024年12月末、行き付けの書店に行くとネットの新刊案内には一切情報が無かったのに、新刊コーナーにいきなりスティーヴン・ハンターの新刊が2冊並んでいたので驚いた。
スワガー・サーガ中篇三部作の第一部となる本作と第二部の『フロント・サイト 2 ジョニー・チューズデイ』が同時に刊行されたのだ。そして、第三部の『フロント・サイト 3 ファイヴ・ドールズ』も近刊予告となっている。
さらに驚いたのは、第一部の主人公がボブ・リー・スワガーの祖父であるチャールズ・F・スワガーで、第二部ではボブ・リー・スワガーの父親であるアール・スワガーが主人公を務め、第三部ではボブ・リー・スワガーが主人公を務めるという、まさにスワガー家3代の物語が一望出来るという憎い演出になっている点である。
本作は1930年代のシカゴを舞台にした『Gマン 宿命の銃弾』の続編のような内容となっている。
勿論、銃火器オタクのスティーヴン・ハンターだけに迫真のガン・ファイトが描かれ、ミステリー色も濃く、最後まで飽きることなく楽しめる作品になっている。
『Gマン 宿命の銃弾』で悪名高きギャングのジョニー・デリンジャーを射殺した司法省捜査局捜査官のチャールズ・F・スワガーは、上級捜査官の命令で、牛の屠殺場と食肉加工場の犇めくシカゴのユニオン・ストックヤードに潜伏していると噂されるギャング、ベビーフェイス・ネルソンの追跡を始める。
ところが、噂は大きな誤解であったと判明し、スワガーは収穫もなく帰ろうとした矢先、食肉加工場の労働者らしい黒人にナイフで襲われる。スワガーは相手の胸に3発の銃弾を撃ち込んで殺害する。
死んだ男の家族を弔問した後、ここ2ヶ月間で急に精神に変調を来した黒人が他にも10人近くいたことを聞かされたスワガーは、黒人警官のワシントンとともに事件の捜査に乗り出す。
定価1,320円
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モビリティの文脈で読み始めたら、いきなり輸送の話から始まって面を食らう。
朝に飲むコーヒーが手元にあるが、このコーヒーはどこから運ばれてきたのということから始まる。
さらには、このスマートフォン。
半導体は台湾、日本から、組み立てはアジア、そして最後にアメリカにたどり着く。
その移動量の合計を考えたことがあるか。
日本での二酸化炭素排出量において、運輸部門は産業部門に次ぐ排出量である。
その運輸部門のうち貨物自動車の排出量は40%弱。
Flightshame(飛び恥)が有名になったこともあるが、飛行機はそうでもない。
ただ、考えてみるとグローバル化で生産コスト減を追い求めた結果、とんでもなく遠いところから運ばれてくるものが、なぜこんなにも安いのか。
次には、アメリカの自動車の権利についての説明が続く。
人をひき殺しても、運が悪かったね、人間ミスはあるもんね、でおしまい。
あるサイクリストが轢かれて治療に1年と100万ドルかかったのに、加害者は25ドルと2日間の禁固刑で終了。
2020年のアメリカの交通事故死者数は3万8680人、日本は2839人だ。
ちなみにアメリカの人口は日本の2.6倍ほど。
あまりにも強すぎる自動車の権利に対するアンチテーゼとして、googleやテスラの自動運転車の開発が進んでいるのではないか。
反面、日本ではドライバーの責任は重い。
池袋の事故では、事故のミスではなく、「上級国民」という言葉が生まれるほどに、自動車を持つもの持たないものの格差に焦点があてられた。
しかし、本来の自動車事故の原因に焦点が当てられていない。
運転ミスは全てドライバーの責任というのが、アメリカと日本で大きく違うところと感じた。
そして最後に自動運転車が実現した時の未来が描かれる。
もし、自動運転車が実現したらどうなるのか。
移動コストが下がり、自動車は保有よりもシェアになる。
個人的には、高速道路の自動運転が実用化すれば、移動中に寝ていて、起きたら遠くまで移動できている快適空間が実現してほしい(夜行バスは寝れないんじゃ)。
となると、新幹線の需要はどうなるのだろうか。
高速であることの価値は今と同じなのだろうか。
本書からは、輸送距離が長いほど物が安いという矛盾からは、SDGsの観点からも地産地消が、これからの最適解であること。
自動運転車の実現による交通事故減、移動しやすさの向上、シェアリングエコノミーについて。
など考えた。
モビリティの最適解は都市圏、地方圏によって違うが、自動運転車の実現で一変することは間違いない。 -
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ラーシュ・ケプレル『つけ狙う者(下)』扶桑社ミステリー。
下巻。なかなか読めない連続殺人鬼・汚れた牧師の正体。主人公は次々と考えられない程の窮地に陥る予測不能の展開。よもや主人公が犯人ではないかと疑いたくなるようなプロット。文句なく面白い。
被害者をストーキングし、被害者のプライベートを撮影した映像を警察に送り付けて、残虐に殺害するという犯人の凶行は止まらない。
精神科医のエリック・マリア・バルクは9年前に精神鑑定を行い、殺人事件の犯人として医療刑務所の精神病棟に送致された牧師のロッキー・クルケルンドが無実であったことに気付く。ヨーナ・リンナと共に真犯人の汚れた牧師の正体を追うエリックは、一連の連続殺人事件の犯人として警察から追跡されることに……
ヨーナ・リンナ・シリーズはこれでお仕舞いなのだろうか。
本体価格1,000円
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ラーシュ・ケプレル『つけ狙う者(上)』扶桑社ミステリー。
ヨーナ・リンナ・シリーズの第5作。前作の『砂男』からの続きが描かれる。
扶桑社ミステリーに勢いがあった頃を思い出すような凄く面白いミステリーだ。
全くもって犯行動機不明な卑劣な殺人鬼の犯行が描かれるのだが、主人公のヨーナ・リンナはなかなか姿を見せない。もしかしたら、ヨーナは過去の記憶としてしか描かれないかと思っていると、再び卑劣な犯罪の前に姿を表す。
ストックホルムの国家警察のヨーナ・リンナ警部が失踪後に彼の後任になったの臨月間近のマルゴット・シルヴェルマンは独身女性を盗撮した挙げ句に残虐な手段で殺害する殺人鬼を追っていた。犯人は盗撮した映像を警察に送り付ける大胆な行動を取るが、決定的な証拠は見付からず、泥沼にはまっていた……
二人目が殺害された後に警察は精神科医のエリック・マリア・バルクに協力を仰ぐ。
本体価格1,000円
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スティーヴン・ハンター『真夜中のデッド・リミット(下)』扶桑社ミステリー。
1989年に新潮文庫から刊行されたスティーヴン・ハンターの初期の傑作冒険小説の復刊。
ページをめくる度に手に汗握る緊迫の闘いが描かれ、次々と命を失う登場人物に何度も胸が締め付けられる。いつの間にか、登場人物たちに感情移入していたようだ。
核ミサイル発射が迫る中、伝説の兵士、ディック・プラーは副官のスケージー少佐やFBI捜査官アクリーらと共にデルタ・フォースの混成チームを結成し、核ミサイル発射基地を占拠した謎の武装組織との地みどろの闘いを繰り広げる。一方、ベトナム戦争でトンネル・ネズミとして活躍したネイサン・ウォールズとチャ・ダン・フォンは難攻不落の基地に潜入を試みる。
果して、プラーたちのデルタ・フォースは、核ミサイルによる世界の終焉を食い止めることが出来るのか……謎の武装組織の正体は……
本体価格980円
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スティーヴン・ハンター『真夜中のデッド・リミット(上)』扶桑社ミステリー。
1989年に新潮文庫から刊行されたスティーヴン・ハンターの初期の傑作の復刊。31年振りに再読となる。
圧倒的なスケールで描かれる冒険小説である。再読しても、なお面白い。1989年版の『このミステリーがすごい!』の海外第2位を獲得。この年の第1位がトマス・ハリスの『羊たちの沈黙』だったので、第2位というのは致し方無しだろう。
アメリカのメリーランド州の山中にある核ミサイル発射基地が謎の武装集団に占拠される。最新鋭核ミサイル発射を阻止するためにデルタ・フォースを創設した伝説の兵士、ディック・プラーはベトナム戦争でトンネル・ネズミとして活躍したネイサン・ウォールズとチャ・ダン・フォンを召集し、難攻不落の基地への潜入を試みる。核ミサイル発射のデッド・リミテッドは深夜零時……
本体価格980円
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まさに娯楽エンターテインメント小説の決定版。
狙撃手(スナイパー)を主役にした小説は数あれど、本書が元祖スナイパー小説の最高峰だろう。
ボブ・リー・スワガーシリーズの第一巻。映画化もされている。
恥ずかしながら僕はこの本のことはずっと前から知っていたのだが未読だった。
いや、みなが傑作ということだけのことはある。
この本が1993年の刊行だとは思えないほど古さを感じさせない。
まさに手に汗握る大活劇。
主人公は、ベトナム戦争で海兵隊の狙撃手として活躍したスワガ―軍曹。現在は退役し、余生を一人で過ごしている。そんな彼のもとに特製のライフル用弾丸を試射してほしいという依頼がくる。そこからスワガ―は大統領暗殺計画という陰謀に巻き込まれていくのだ。
まじで、面白い。
冒険小説が好きで、スナイパーものが好物の人にはたまらない物語。
未読の人はぜひ、騙されたと思って読んでもらいたい。本当に冒険アクション小説の要素がすべて詰まった傑作だ。 -
Posted by ブクログ
『1つは、デジタル技術の興隆。1つは、中国が対資本主義闘争の方針を転換したこと。1つは、愛嬌もなく、最新技術とも縁がなく、ただ大きくて醜い金属の箱が起こした輸送革命。この3つのうち、一番地味な貨物コンテナ(と、その最も派手な派生物である巨大コンテナ船)が、これまで法外な経費でしかなかった大量輸送を、状況に応じて使える手段に変えたことで、残りの2つの「異変」も活かされることになった。
コンテナは、輸送革命の手段であると同時にその象徴とも言える。なぜなら、コンテナ化によって生まれた製品の代表であるスマートフォンそれ自体が、カメラやカレンダー、ナビ、本、音楽、さらには交通の確保手段など、必要なものすべてを内包する究極のコンテナだからだ。ありふれた金属のコンテナと、それがもたらした究極のデジタルコンテナ。世界に計り知れない影響を与えた2つの箱はいまだに進化を続けている。』
スマホ、アルミ缶、コーヒー、飛行機、車、港湾、トラック、船、輸配送、道路、自動運転/無人運転、ヒトとモノの移動に関する多面的な考察。明確な結論に導くわけではなく考えさせられる論考。
個人的にアメリカという国家はもともと好きではないが、これは嫌いになってしまう作品だと思う。
アメリカが戦争で生み出した死傷者数の合計よりも、アメリカで一年間で起きる交通事故の死傷者数の方が多いとか、げんなりしてしまうなぁ〜。
不可逆的な利便性の罠と資本主義が大量生産する欲望装置の消費に、世界は食い潰され、破壊され、汚染されていく。この流れに抗う方法はあるのかなぁ?