田上俊介のレビュー一覧
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キーリ、ハーヴェイ、兵長の三人は、キーリの父親だという、教会の最高機関・長老会の第十一老シグリ・ロウの呼び出しにおうじて、首都へと向かいます。これに、長老会のメンバーたちに対する復讐を企てるヨアヒムも加わります。ところが、彼らの乗る列車に、ラボが作り出した化け物が襲いかかってきます。戦いに巻き込まれたハーヴェイは、キーリとヨアヒムを先に行かせることを決意します。
ようやく首都にたどり着いたキーリを迎えたシグリ・ロウは、不死人の殺害を命じラボで醜い怪物を作り出した悪の化身などではなく、妻と娘を捨てて今の地位を得たことの罪悪感に苛まれる、一人の弱い男にすぎませんでした。キーリは父の謝罪をはねつけますが、彼を心の底から憎むこともできません。ただ、ハーヴェイの運命に対する悲しみだけが、彼女の心を締めつけます。
やがてハーヴェイも首都にやってきて、シグリ・ロウに保護されていたベアトリクスとも再会を果たします。ところが、首都にラボから逃げ出した化け物が現われ、町は混乱に陥ります。シグリ・ロウのもとに現れたヨアヒムも、代替の〈核〉の寿命が尽き、ハーヴェイに看取られながら最期の時を迎えます。
「あとがき」によると、ヨアヒムは著者のお気に入りのキャラクターとのことで、ハーヴェイのダーク・サイドっぽい彼の振舞いが光っています。 -
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別れてしまったベアトリクスの行方を探すため、教区境のバーに滞在していたキーリたちでしたが、兵長のラジオの調子が悪くなります。修理屋に持ち込んだところ、そろそろ寿命かもしれないと告げられます。さらに、ハーヴェイの「核」の機能もしだいに衰え、彼の状態はますます悪くなっていきます。
もしかすると、これまでつづけてきた三人の旅の終わる時が近づいているのかもしれない……そうした考えに襲われたキーリは、ずっとこのまま旅がつづいてほしいと願ってしまい、そんな彼女の思いが、終わることのない旅を続ける死者たちが乗った列車を呼び寄せます。汽車に入り込んでしまったキーリを、ハーヴェイはどうにか元の世界へ引き戻すことに成功しますが、キーリの思いは晴れません。
やがて彼らは、ゲリラ・ラジオを運営している男の飼い犬だったタテガミに出会います。その男は不死人で、タテガミは死に望む飼い主の男から、彼の「核」を譲り受けたのでした。
ところが、そんなラジオ局に、教会治安部の部隊がやってきます。にわかに緊張感が高まりますが、なんと教会兵は、思いもかけないことをいいだします。彼らは、キーリの父である、教会の長老会の第十一老であるシグリ・ロウから、キーリの保護を命令されているというのです。父が教会のトップであるという衝撃の事実を確かめるために、キーリはハーヴェイとともに、首都へと向かうことを決意します。
クライマックスの直前、ハーヴェイの「核」が衰え、兵長ラジオも寿命が近いという重苦しい空気が漂いはじめ、キーリの出生の秘密がついに明らかになるという、鉄板の構成です。ラストへの期待が、いやがうえにも高まります。 -
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キーリ、ハーヴェイ、兵長は、植民祭中のウエスタベリにやってきます。彼らを迎え入れたのは、ハーヴェイの知り合いのシマンが団長を務める興行団でした。そこには、幼いころのキーリと同じく、霊が見えるために周囲の人びとから孤立しがちな少女ナナがいました。キーリたちは彼女と交流を深め、ナナの心は徐々に周りの人びとに開かれていきます。
そんななか、キーリはまたしてもヨアヒムと出会うことになります。教会の手先として不死人の回収に当たっていた彼は、首都のラボで開発された「核」の模造品を心臓の替わりに埋め込まれていました。そんな彼から、ハーヴェイの」核」がまともに機能しておらず、彼はやがて死ぬことになるという、衝撃の言葉が告げられます。
その後キーリは、ダウンタウンの少年たちに襲われて倒れてしまい、意識が霊体となって彼女の身体から離脱してしまいます。
今回は、上下巻構成のストーリーの前半です。ヨアヒムとの再会によって物語は新たな展開へと進んでいきますが、比較的ゆるやかにストーリーが進行しており、この物語の独特の雰囲気にたっぷり浸ることができます。 -
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物語は、キーリがハーヴェイと別れてから1年半後に進みます。
ベアトリクスと兵長の三人でハーヴェイの帰りを待っていたキーリは、この1年半のあいだにたった一度だけ、ハーヴェイから連絡が来ていたことを知ります。彼女は、駅舎で出会った駅長の霊に背中を押され、たった一人でハーヴェイのいるノースハイロ方面へ向かうことを決意します。
そのころハーヴェイは、有力者の父を持つユーリにかくまわれていました。ユーリは、「門の街」にやってきたキーリを発見します。こうして、ようやくキーリとハーヴェイは再会を果たし、ハーヴェイはキーリとともにこの町を脱出することを決意します。
個人的には、ベアトリクス姐さんのカッコよさが、一番印象にのこっています。 -
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キーリとハーヴェイ、兵長の3人は「砂の海」の港に滞在していました。そこでキーリは、主人がいなくなっても店を守りつづけている機械人形に捕まりそうになり、ハーヴェイに助けられます。
店から持ち出したロボット・アームをなだめつつ、ハーヴェイたちは「砂の海」を渡る「砂もぐらの生まれ故郷」号に乗り込みます。そこでキーリは、特等船室に乗っているユリウス(ユーリ)という少年と知り合いになります。
ところが、キーリが船内に隠された死者の霊に誘い出され、彼女を助けようとしたハーヴェイたちは船の外に放り出されてしまいます。やがて彼らは、ハーヴェイの古い知り合いであるオル・ハンが船長を務める「砂歩き」号に救出されますが、彼らはすでに教会と協力関係にあり、ハーヴェイを騙して彼の身柄を教会に引き渡そうとします。キーリたちは「砂歩き」号からも逃げ出し、どうにか「砂の海」の終着駅にたどり着きます。
今回は、キーリの両親にまつわる謎が提示されており、物語の全体像がほんの少し垣間見られた感じがします。 -
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主人公のキーリは、教会の寄宿学校に通う14歳の少女です。霊感が強く、他の人には見えないものが見える彼女は、クラスメイトたちから避けられており、唯一の友人は幽霊のベッカだけでした。
ある日、彼女はイースタベリの駅前で、「不死人」の青年ハーヴェイと、ラジオの憑依霊「兵長」と出会います。不死人とは、兵士の死体に、超高純度のエネルギーの結晶である「核」を、心臓の代わりに埋め込まれた者たちのこと。80年前の戦争で、死なない兵士として作り出され、現在は「核」を狙う教会に追われる身となっています。
ハーヴェイは、炭化銃を装備した教会兵たちの目をかいくぐって、兵長を戦争で亡くなった兵士たちの眠る墓場に送る途中でした。キーリは、そんな彼らについて行くことを決め、奇妙な3人の旅が始まります。
旅の途上、3人はかつてハーヴェイが世話になったという診療所を訪れます。ところがそこで、ハーヴェイと同じく不死人であり、現在は教会のために「核」の回収人として働いているヨアヒムに見つかってしまいます。
キーリと別れたハーヴェイは、ヨアヒムの襲撃を受けて「核」を奪い取られてしまいます。そしてヨアヒムは、なにくわぬ顔でキーリの前に現われ、彼女を首都の神学校に招くという話を持ちかける。ヨアヒムの正体を知らないキーリは、彼の言葉に従って首都へ向かう列車に乗ります。そんな彼女に、「核」を失ったハーヴェイの身体に入り込んだ兵長がやってきて真実を告げます。キーリは、ヨアヒムからハーヴェイの「核」を取り戻すことを決意します。
「あとがき」にも書かれているように、「荒野の惑星、スチームパンク、旧式ラジオ、さびた機械と古いオイル」といったギミックが詰め込まれた世界が舞台ですが、キーリには霊が見えるということで、すこし幻想的な雰囲気もある物語です。いちおう全体の流れはありつつも、連作短編のようなスタイルになっているところが気に入っています。 -
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終わりに向かってなのだけど、静かな光に包まれた1冊だった。主人公(主にハーヴェイ)に厳しい本作だったけど、予想より穏やかなラスト、総決算。もっと鬱エンドもあり得ると思っていた。キーリは聖母に変身。しかし、こうなるしかないと分かってはいても、特にベアトリクスは大好きだったから、悲しい。兵長も。
ハーヴェイは、最後の最後まで誰かの為にボロボロになって、許して、感謝して…。昔はキーリと一緒に彼に恋するのみだったけど、今読むとこの人ほんと凄いなという畏敬。あと壁井先生のタイプなんだなあ…としみじみ思う。
優しくて切ない、諦めも含んだ、しかし十分に希望のある結末だった。2人の「その先」が幸せであるように。 -
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教会の寄宿学校に通うキーリは、霊を見ることができる特別な力を持っていて現実にそぐわない教会の教えに疑問を抱いていた。駅舎で出会った不死人(ハーヴェイ)の青年とラジオに宿る兵長の霊との出会いをきっかけに、冬の植民祭休暇を彼らの旅に同行する。目的地である東の戦場跡地までの道すがら様々な霊との交流を元に徐々にハーヴェイたちに心を寄せるキーリ。しかし、不死人の持つ無尽蔵のエネルギーを欲する教会の追手が刻々と忍び寄っていた。
『クロノ×セクス×コンプレックス』を読んで、壁井さんのファンになりました。代表作である『キーリ』にも手を伸ばしてみました。
乙女チックなイラストとは裏腹に、内容は結構ハードです。独特の世界観に入り込むまでは時間がかかるのですが、いったん物語の世界に入り込むと登場人物たちが息づく様がありありと浮かんできます。一つひとつの動作や場面を丁寧に解説する地の文が素晴らしい。
ライトノベルに多い派手な戦闘や学園生活ではなく、鉄道旅行を中心として物語が進行していく様子が旅好きの自分には印象に残りました。生きている人間に接するのが苦手なキーリ、無愛想で世俗に興味のないハーヴェイ、初対面ではキーリに対し敵対心丸出しだった兵長、それぞれが旅を通じて少しずつ互いを分かり合い成長していく。特別な言葉や難しい表現では決してないのだけれど、過度なく不足なくのシンプルな心理描写や風景描写が、一人ひとりの存在を際立手せてくれる。 -
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キーリⅣ 長い夜は深淵のほとりで
ハーヴェイが消えてから約一年半。キーリは16歳になっていた。キーリと、ラジオの憑依霊・兵長そして〈不死人〉ベアトリクスは、東サウスハイロで暮らしている。
ある日、ベアトリクスの情報筋からキーリの出生の手がかりが見つかったと聞き、ノースハイロ方面に向けて出発する。
旅の途中、ウエスタベリ教区のはずれの街トゥールースに着いたキーリ達は、この街でまた不思議な出来事に遭遇する。そして……。キーリの出生の手がかりとは!? ハーヴェイとの再会は!?
第9回電撃ゲーム小説大賞〈大賞〉受賞作、第4弾!
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うわぁぁぁいちねんはんもたってるぅぅぅぅ!!!!!
がまず最初に思ったことです、はい。
キーリは泣くと思うと前巻の感想で言いましたが、どうやら一生懸命我慢するほうにしたみたいです。でもハーヴェイ見たら泣いちゃいましたが。
そりゃあ…うん、泣きますよねぇ…。ベアトリクスとか兵長に心配かけない様に一生懸命抑えてたのに、いざハーヴェイ見たらなんかボロボロだし、誰?とか言われるし、泣くわ…。
今回はなかなかのすれ違い回。
あああああ気持ちはわかるけどハーヴェイの言うこと聞いてキーリぃぃぃぃ!!と思いながら読みました…。
すれ違いは悲しいのです。
久々にユーリが出てきますよ!だいぶ親の七光り的な感じでハーヴェイを保護?してたんだからびっくりですね!
なんかこういろいろ理由つけて不死人嫌い側になってなくてよかった…ほんとよかった!
嫌な子になってたら軽く鬱だったなぁ。
ベアトリクスが行方不明になりますが、とりあえずキーリとハーヴェイと兵長の旅は続くみたいです。
ていうか一体いつになったらこの二人くっつくんですかね?そろそろじれったくなってきましたよ…!!でもこのゆるゆるときどきどきどきみたいな雰囲気が好きだったりするのでアレですね←
ちょっと読んでから時間置いてしまったので、書きたかったことはもっと沢山あったかもだけどここまで。
でも評価は☆4にしようと決めてはいた←すれ違い回ですからね! -
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ネタバレ表紙のキーリ、上下少し斜めの角度から見ると泣きそうな顔するんですよ。
前作の終わりにハーヴェイと別れ、今作はそこから1年半後。
大人しくハーヴェイを待つキーリではなく、今度はベアトリクスと共にハーヴェイの行方を追って旅をします。
キーリは、ハーヴェイに保護されていた頃よりも外見も性格も少しずつ大人びてきて、クールでドライだけどお人好しなところはハーヴェイにそっくりです。
ハーヴェイのしぐさや癖をあれこれ覚えているところにもぐっときます。
1年半というブランクも大きいもので、少しぎこちない関係になっていく二人の心情の表現にとても共感できます。特にキーリ。離れているうちに思いが募り募って独りよがりっぽくなって、それまでの距離感が分からなくなっちゃうんですよね。自分だって素直になれないくせに、相手の素直じゃない(戸惑っている)態度に対して「自分が一方的に思ってただけなのかな」と不安になったり拗ねたりして。
また、今回は女性二人(とラジオ)の旅のせいか、こころなしか華やかさというか明るさがあります。
ハーヴェイよりも「!」を多用して話すベアトリクスのテンションの高さがなかったら、救いようなく暗い話になるんじゃないかと思うくらい、ベアトリクスの存在は大きいです。
本当に、彼女にはもっと幸せになってほしいのですが、面倒押しつけられた挙句損な役回りさせられる展開が……。
「泣かないハード・ガール」で過去の幻影が見えるところが、今回は一番印象に残りました。
幽霊ではあっても、自分のことを知っている人たちに温かく囲まれるという体験を、キーリができて本当に良かったと思います。 -
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ネタバレ今回は旅ではなく、街に住む話。
旅をしていようが同居して住んでいようが二人(と一体)のテンションには一見違いはないですが、「普通の暮らし」をすることで、二人の間にある考えの違いが明確になってきます。考えの違いというよりは、理想と現実の溝を思い知らされて二人ともどうしたらいいか分からない、という感じかも。
一つ所に留まって、親のように優しい人に出会い、アルバイトもして、心のどこかで「ずっとこのままでいたい」と思っているキーリ。
そんなキーリを「普通の女の子」だと言って、なんとか「普通の暮らし」に帰してやりたいと思う反面、彼女への執着が抜けないハーヴェイ。
お互いにその素直な気持ちを言えないものだから、今作ではすれちがいがちで、別行動がとかく多いです。
今作は特に、ハーヴェイの「執着」を軸に読んでいくと、話全体が、もの・ひとに対する執着をテーマに書いているのだな、というのが浮かんできます。
中でも、「ホーンテッド・スターシップ」のダニールと妹の関係に、自分とキーリを重ねるハーヴェイが印象的でした。
そして、長期的な目的もない旅の話が、この巻から明確な目的意識を持って動き始めます。
今作は、その意味では繋ぎという位置付けなのでしょう。
"Let us go home"
章タイトルであり、クライマックスで繰り返されるこの言葉を信じて、完結まで読んでいこうと思います。