竹美家ららのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
だらしない根無し草男と古くからの言い伝えの残る土地の純真な若様。出会うはずのなかった身分違いの二人が、恋という不確かだけれど強くあたたかな結びつきでゆっくりと結ばれていくタイトル通りの優しいおとぎ話。
過去作をどれから読もう、と悩んで重版されたというこちらを。
一見噛み合わない生まれも育ちも価値観も違う二人が、それゆえにゆっくりと気持ちを重ねあい、自分に課せられた役目を当たり前のこととして受け止めて生きてきた湊の「息苦しさ」をやわらかに掬い上げる隼人、自分が得てこなかったものすべてを持って穏やかに受け止める湊の温もりに包み込まれていく隼人、必然のようにゆっくり染み渡っていく二人の心の行方が丁寧でやわらかな言葉できらめきに包まれて紐解かれていくのは一穂ワールド全開。
文章が、言葉運びがとにかく心地よくてさらさらと流れていく感覚に酔いしれるよう。
脇に至るまでの人間関係の描写、何気ない小道具の使い方、情景の切り取り方ひとつひとつがきらめいてみえます。
家族や社会との折り合いのつけかた、自分の立ち位置をきちんと見つけて生きていくにはーーと、現実的な「おとぎ話」の中で、優しいハッピーエンドが用意されていることに安心感をおぼえました。
なににも執着しないはずだった隼人が帰る場所、自身を受け止めてくれる相手の温もりに違和感と、それ以上の安らぎを見つけられてよかったなぁと。
幼馴染三人の関係性が描かれるもうひとつの結末もとても優しい。
しかしまぁ、十和子と佐伯さんと義時……「さみしさのレシピ」にもその片鱗は見えたので、「off you go」で決定打のように描かれるまで一穂さんの中で根付いていたテーマなんだなと。 -
Posted by ブクログ
3作目。
計に出馬か?の根も葉も無い噂が出る。一方潮の方は仕事のキャンセルが続く。
潮の周りで何かが動いてて…?
今回、掘り下げられた二人が描かれていてとても良かったです。計だけが甘えて潮がいつも計をさりげなくフォローしていたけれど、計だって守られるだけじゃなく潮のピンチには役に立ちたいと思っていて、でも潮は計を頼るわけでなく実家に戻ってしまう。計は最初はどうしようもなく落ち込み、TV局も辞める!とまで思うがレポをしてしまう自分を再認識して打開策に奔走する。そして潮を取り返し、二度と潮に親の手が届かないようにと。
4回泣きましたw
潮の回想の所、計が放心するところ、おばあちゃんの話のところ、そして最後は手形のところ。
二人の絆が強まってお互いがお互いを支えてこれから生きていくんだなぁっていうのが想像出来てとっても良かったです。
ところで前2作は電書だったので挿絵が無くって良かったのに今回小冊子目当てに本を買っちゃって、あの子供っぽい絵が目に入って辛かったです。ホント、挿絵の有る無しで本作って欲しいわぁ。好みじゃない絵師さんの時辛すぎる。 -
購入済み
ウケる
一穂さんのお話にしてはかなり珍しくくっきりとコミカル、計のイマドキっぽい(?)心中悪態つきまくりキャラに爆笑です。多くの人がしているであろう二面性を用いて社会生活を送る、をかなり面白おかしく極端に描いてますがどこか共感出来る感覚もあったり冗談のよーな流れの中にも葛藤があったりとただ笑えるお話で終わらないのはさすが一穂さん。都築がいまひとつパッとしないつゆーか計の強烈なキャラに飲まれちゃってたのが残念だな〜なんて思ってましたがいやいやのほほんとしつつもガッツリ一途だったりするところが可愛らしいわ。ところで余談ですが、、絵師さん、ちょっと作品イメージと合いませんでしたね。。
-
購入済み
深いですねぇ。
一穂さんのお話ってリアリティあって過分な派手さがない分、途中までは結構退屈だったりするんですが(すいません)山場の見せ方がめちゃくちゃ上手いので結局辞められない(笑)だってココって場面で必ず心打たれるんですよ。本作の渇き切って何も欲してない手応えのない隼人が若く純粋ながらも泰然としてる湊に絆されてくとゆーか熱くなっちゃう件は読んでて胸が苦しくなるくらいギュときます。楽観視出来ない2人の立場には障害が多く先行き明るいとは決して言えないのにそれでもどーにか希望を見出したいって思わせる魅力あるお話でしたね。