東直己のレビュー一覧
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表題作は、短すぎて起承転結がダイナミックさを欠く。オチが弱いというか、後半のどどどっという怒涛の展開があっけなさすぎる。まあ仕方ないよな。娘がまだ無邪気なお子様で、かわいい。子どもたちの成長を見守るのも本シリーズの楽しみの一つである。
渇きは、嫌な刑事である井原がいい味を出している。うねはらに対する嫌味が陰険で陰惨で、たまらない。
2020.3.5再読。
凡百の書き手なら美談にしかねない井原の真摯さを徹底して疑ううねはらの態度、筆者の人間観察の際の冷徹な視線が垣間見える。
印象に残ったのは、ラスト。これまで自分の子どもの大切さというのが実感としてはわかっていなかったのだろう。
空手の描写が弱い -
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表題作は、短すぎて起承転結がダイナミックさを欠く。オチが弱いというか、後半のどどどっという怒涛の展開があっけなさすぎる。まあ仕方ないよな。娘がまだ無邪気なお子様で、かわいい。子どもたちの成長を見守るのも本シリーズの楽しみの一つである。
渇きは、嫌な刑事である井原がいい味を出している。うねはらに対する嫌味が陰険で陰惨で、たまらない。
2020.3.5再読。
凡百の書き手なら美談にしかねない井原の真摯さを徹底して疑ううねはらの態度、筆者の人間観察の際の冷徹な視線が垣間見える。
印象に残ったのは、ラスト。これまで自分の子どもの大切さというのが実感としてはわかっていなかったのだろう。
空手の描写が弱い -
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私立探偵畝原シリーズ第二弾。
本書の単行本が発行されたのが99年。
オウム真理教、パナウェーブ研究所、林真須美のヒ素カレー事件が思い出される。
出版された年に読んでいたら、さぞ不気味だったことだろう。
最初の依頼のマンションの一室で、良からぬことが起こっているようなので、その調査から物語は始まる。
その後、新興宗教から保険金殺人へと。
悪の根源はなく、悪の臭いを持つ者同士が互いに弱みを握り合いながら、より悪事に麻痺し溺れて行く様が実に人間臭い。
毎度、長編にもかかわらず、場面運びは秀逸だ。
しかし、最後のオチの仄暗さは何度も言い表し難い。タイトルの通り。
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私立探偵畝原シリーズ第二弾。
本書の単行本が発行されたのが99年。
オウム真理教、パナウェーブ研究所、林真須美のヒ素カレー事件が思い出される。
出版された年に読んでいたら、さぞ不気味だったことだろう。
最初の依頼のマンションの一室で、良からぬことが起こっているようなので、その調査から物語は始まる。
その後、新興宗教から保険金殺人へと。
悪の根源はなく、悪の臭いを持つ者同士が互いに弱みを握り合いながら、より悪事に麻痺し溺れて行く様が実に人間臭い。
毎度、長編にもかかわらず、場面運びは秀逸だ。
しかし、最後のオチの仄暗さは何度も言い表し難い。タイトルの通り。
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ススキノ探偵シリーズ11作目。
しごく当たり前のことだけれど、ススキノ探偵の「俺」にだって若いときはあったのだ。
高田とはもちろん交遊があり、桐原ともすでに顔見知りだ。
どんな生活なのかと思えば、あまり大きな違いはない。
「俺」はやっぱり若くても「俺」で、基本的な性格は変わってはいない。
大学生活を送りながら、怠惰な時間を送る日々。
だけど、ススキノの歓楽街に出入りはするものの、まだススキノに溶け込んではいない。
親しくなった女性が姿を消したことから、「俺」は彼女を捜してどんどん深みにハマっていく。
気づけばけっこう怪しげなところまで踏み入っていて、謎は少しも解けそうにない。
いかにも「俺」ら -
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理由もわからないままトラブルに巻き込まれ、いつものことがけれどやくざから追われるはめになった「俺」。
かつてススキノを席巻したモンローから、久しぶりの連絡を受けた「俺」は、面倒がりながらも結局は手を貸すことになる。
過去から這い出てきたような女の存在は、「俺」を思いもよらぬ事態へと引きずり込んでいく。
あるのかないのか、まるで信憑性のない蜃気楼のような「印紙」を追い求め、入り乱れる人間たち。
損得勘定で動く彼らには、真実はいつまでたっても見えないのだろう。
自分たちの見たいものしか目に入らないし、自分たちの信じたいものしか信じないのだから。
何ごともほどほどがいい。
過ぎたるは及ばざるがごとし -
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顔馴染みのミーナから猫の世話を頼まれた「俺」。
約束通り餌をやりに行けば、ソウルにいるはずの飼い主が殺されていた。
事件を担当した刑事の茂木から、猫を飼うのに必要なものを教えてもらう「俺」。
かくして、猫の世話をしながらミーナを殺したやつを「俺」は捜し始める。
「俺」もすっかり年を取り中年どころか初老のおじさんになっていた。
そんな「俺」が慣れないながらも猫の世話をし、しかも癒されている図はなかなか微笑ましいものだった。
若い頃とは違って無理のきかない年齢なのに、相変わらずやってることは無茶が多い。
真相に迫っていく粘りも変わってはいないけれど。
何気なく話をし、どうでもいいことで笑いあう。
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Posted by ブクログ
「俺」も人並みに年をとり、45歳という世間的にはそれなりの年齢になっているのが本作である。
しかし、45歳になってはいても「俺」は変わらない。息子を持つ親父になっても「俺」は変わらない。
誰がなんと言っても譲れないものは譲れないのだ。
「俺」だけに通用する「俺ルール」が、けっこう好きだ。
男という生き物はなんと切ないのだろう。
甘ったるく、それでいて意地っ張りで、大切なものへの思いを胸に生きている「俺」が特別な存在なのだろうか。
男は夢に生き、女は現実に生きる。
まさに今回の騒動は、そんな男と女のしがらみが引き起こしたものかもしれない。
このシリーズはどれも好きだけれど、中でも「探偵は吹雪の果 -
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