宮下規久朗のレビュー一覧
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[ 内容 ]
20世紀を代表する美術家であるアンディ・ウォーホル(1928‐1987)は、生前における多方面にわたる活躍やメディアへの頻繁な露出から、これまで様々な流言飛語に曇らされ、毀誉褒貶に包まれていた。
しかし、1989年にニューヨーク近代美術館で大規模な個展が開催され、94年にはアメリカにある個人美術館としては最大のアンディ・ウォーホル美術館が開館するなど、その多面的な芸術は正確に評価されつつある。
「孤独なトリックスター」の実像とは―。
本書は、日本での大規模なウォーホル回顧展にも関わった美術史家が、ウォーホル芸術の意味と本質に迫り、それを広く美術史の中に位置づける画期的論考である。 -
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ウォーホルって正直陰湿で粘着気質のキモい感じの印象を受けてしまっていたんですが(ごめんなさい)
見方が変わったかな。
彼が「死」というテーマを追っていたことはなんとなく知ってはいたけれど、それをより明確にしてくれた感じ。
商業としての美術。
いかに個性を際立たせないか。
自分も絵を描くけれど、
「無」になりたいという気持ちは勝手になんとなくわかる。
自分などいなくなってしまえばいいと、
自分の世界の中で思う。それが作品につながっていく。
もうなんか、絵を描くことによる自己主張とかそんなんじゃない。うまく言えないんだけど。
「わたしはここにいるよ」って嘆きと -
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アンディウォーホルの足跡を辿る一冊。事実の信憑性はさておいて、ウォーホルがその時々で誰に影響を受けその作品を創ったのか、アイデアのネタは何だったのか、作品を追って書かれているので、すごく斬新で重要な事のヒラメキを追体験している様に感じられて面白い。
抽象絵画時代からの脱却を念頭に置いて、現代におけるアートへの新しいアプローチを模索し、作者不在=汎用品の再利用 複製技術といった自己を希釈させるような手法を使う事で作品の独立性を増し、さらにメディアを使い操作した作者のブランディングがウォーホル自身を、逆接的に作者不在の作品、の作者たらしめている。
記号としての作者と作品の関係を巧みに操った作家 -
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カラヴァッジョの名と絵を知る人で、「あぁ、あの殺人を犯した、放浪の、呪われた天才画家……」といったことを知らない人は少ない、と思われます。むしろそちらのイメージが強烈で、自身の絵画を本気で観賞した人は少ないかも。これは、近年日本で刊行された、彼の生涯を追って作品についても語られるモノグラフ。入手しやすいカラヴァッジョへの入門書として。地図、図版(白黒だけどしょうがない)多数。とても参考になります。私も実は、彼の展覧会、国内で1度しか観たことがありません。でもそれらの絵は、私の想像どおり、というよりは想像を遥に超えたものでした。バッカスとかメドゥーサの絵が有名かもしれませんが、宗教画はものすごい
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宗教や倫理観、作家の人生などを背景に人間の欲望(権力、生存、性愛など)が投影された美術品を解説している。新聞の連載を下敷きにしているため一つ一つの作品に対する解説は短く、ダイジェスト的になってしまってはいるが、読みやすく美術鑑賞の入門編として良さそう。
刺青についての解説もあった。海外の「タトゥー」より、日本の「刺青」は迫力や生々しさ、人間観までも表現している世界でも稀な「芸術」と評しているのが興味深かった。おっかないイメージの方が強いが、そういう見方もできるのかと。
ピカソの「ゲルニカ」の解説も面白かった。反戦メッセージの濃い作品として知られているが、絵の端にはピカソの私生活における痴情 -
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ネタバレバロック美術についての歴史というか通史のイメージでいたら、絵のテーマに分けて、それらの変遷を述べる形をしているので、分かりやすい部分と分かりにくい部分が。
テーマを絞ると確かに見えやすくはなる。
一方で画家や歴史の話が他のテーマに跨ることもあるので混乱もするという。
また絵や彫刻の写真はそれなりにあるが、絵の読み解き本ではないので、絵に対する細かい解釈はあまりなし。
何なら作中でタイトルを出しておきながら写真での紹介がないものも多数あるので、何かこう痒いところに手が届かない感じはした。
ただ本の中でも言及があったとおり、バロック美術に焦点を絞った本はあまりお見かけしないので、それを一気に読めた -
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西洋のヌードに対して日本の裸体表現はいかなるものであったかを論じた書。
有名なケネス・クラークの『ザ・ヌード』によれば、ヌードとは、人体を理想化して芸術に昇華させたものであると定義される。これに対し、日本は?
山田美妙の小説『蝴蝶』に付された渡辺省亭の挿絵、黒田清輝の『朝妝』や腰巻事件については世の中を騒がせたトピックとして有名なで出来事であるが、著者はより広いスコープで日本の裸体画を取り上げ、考察を進める。幕末から明治初頭にかけての菊池容斎や河鍋暁斎、生人形作家、石版や写真での裸体表現など、正統的な芸術とは評価されてこなかったようなものまで。
見るー見られるの関係が西洋と日本では -
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読書録「モチーフで読む美術史」3
著者 宮下規久郎
出版 筑摩書房
p114より引用
“ このチーズは豆腐のように見えるが、イ
タリアのリコッタチーズは豆腐のように淡白
な味である。そもそも豆腐自体、中国人が唐
時代に北方民族のチーズを模倣して大豆で作っ
たものであり、味も食感も似ているのは当然
である。”
目次より抜粋引用
“犬
猫
羊
向日葵
分かれ道”
美術史家である著者による、絵画に描かれ
た動物などのモチーフを基に、名画の楽しみ
方を記した一冊。新聞連載「神は細部に宿るーー
モチーフで読み解く美術」の、加筆文庫オリ
ジナル。
身近な動植物からはっきりしない概念まで -
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ネタバレ東大文学部卒、美術史家、神戸大教授
● ポンペイの壁画
「赤ん坊のテレフォスを発見するヘラクレス」
画面下部の中央にいる鷲は、ヘラクレスの父であるゼウスと同時にローマ皇帝を表している。擬人像や寓意によって物語を表現するのは、古代から西洋美術に特有の手法であった。
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●美術史の意義
美術というものは古今東西を問わず、どんな天才的作品でも必ず過去の作品と密接な関係をもっており、時間と空間の制約の中からしか生まれないものであって、芸術家の天分や創意工夫などといったものはごくわずかな要素にすぎないのだ。
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美術を見るということは、感性だけの営為ではなく、非常に知的な行為なのだ。知識が