あらすじ
本書は、美術を生み出し、求めるときの様々な欲望に光を当て、美術というものをいろいろな観点から眺めたエッセイ集である。扱った作品は、世界的な名作から、通常は美術とは目されない特殊なものまで様々だが、いずれも美術史上の重要な問題につながると思っている。(「まえがき」より)「欲望とモラル」「美術の原点」「自己と他者」「信仰、破壊、創造」という四つの観点から、「美が生まれる瞬間」を探る。<オールカラー>
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Posted by ブクログ
個人的には中盤以降が興味深く発見があった。はじめのほうで読むのを断念しなくて本当によかった本。人の欲望とからめた幅広い芸術作品の紹介は、教養を学ぶためのみにとどまらず、人とはなにか、なぜ人はこういった営みをなすのか、筆者の当たり前のことを深く読み込む能力には感銘を受ける。
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産経新聞の夕刊に連載されていた(2011年5月~)コラムを加筆修正し、書下ろしを加えたもの、とのこと。
1つ1つの話が短いので、どこから読んでも大丈夫。ものすごい「修復」で有名になったフレスコジーザスの一件など、新しい話題もあり。
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欲望の美術史という題名だが、作者が興味ある美術テーマにエッセイを書いたような形の為、美術史ではない。
欲望に関しても最初の一章だけと感じる為、少々肩透かしではあったがそれを補うだけの作者の知識に裏打ちされた
面白いテーマが紹介されている。
特に日本の刺青やスペインのとんでもない修復の事件など、幅広く取り上げており、美術にさほど興味がなくても楽しめるのがよい。カラヴァッジョの本を多数執筆されている方なので、他の著書もぜひ読みたいと思う。
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素晴らしい芸術家たちも様々な欲望を抱えていたことや、美術館などではお目にかからないような風習などについても触れており、着眼点が面白かった。
芸術をもっと身近に感じてもいいと思える。
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美術館はたまに行くけど、「ふーん、キレイやな~」で終了する気の毒なわたくしに、色んな切り口で美術を紹介してくれる素敵本。
風景画には国威発揚の意味が込められてるものがあったりとか(俺たちの国土!)、捨てた愛人が赤ん坊連れで殴りこんできた修羅場が一部モチーフになってるピカソのゲルニカとか、トリビアな話題てんこ盛りで、お好きな人にはぜひオススメ。
病気の治癒を神に感謝するために奉納された"エクス・ヴォト"、早世した子供の来世での幸せを祈る"ムカサリ絵馬"など、全然知らんかったジャンルも紹介されてて、エエ勉強になりました(-_-)
Posted by ブクログ
『そもそも美術というものは、純粋に美を求める気持ちから作られ、鑑賞されたものばかりではない。美術作品は、モノとして社会に流通する商品であり、政治・経済のシステムに組み込まれている。
芸術家とよばれる人々は、かつては一介の職人であり、生活のために工房で毎日絵や彫刻を作り、それが売れれば量産し、売れないものは作らなかった。あるいは王侯貴族や聖職者に仕え、注文されたものだけを作っていた。自己の芸術的な信念のために、世間と妥協しないで納得のゆく作品しか作らない孤高の芸術家というのは、十九世紀に成立したロマン主義的なイメージにすぎない。もちろん、そうした芸術家肌の者も大昔からいたであろうが、そうした者の作品はほとんど残らないのだ。』と・・・
まえがきにあり・・・
全然美術とか詳しくないですが・・・
妙に納得してしまったので購入・・・
美術を生み出す原動力・・・
源は・・・
芸術家や、観る者の欲望である・・・
と著者は言う・・・
欲望ったって色々ある・・・
食欲・・・
愛欲・・・
性欲・・・
金銭欲・・・
見栄や虚勢だったり・・・
そういった欲だけでなく・・・
信仰心や・・・
病気治れ~って祈りの気持ちだったり・・・
追悼とか鎮魂だとか・・・
権力者の権力のアピールだったり・・・
よき死を迎えたいなって願いだったり・・・
や、ホント様々・・・
作る側、求める側や観る側のこういった色んな欲望や思いこそが美術を、芸術を生み出していく・・・
そして、美術、芸術という定義もまた様々・・・
著者は幅広く捕らえている・・・
世界的な名作だけでなく・・・
一般的には美術に含まないような、神社にある絵馬とか刺青とか芝居絵なんかも含んでいる・・・
これまた様々・・・
様々な欲望や思いによって作られてきた作品を、その欲望や思いごとに観ていく・・・
この絵にはこういう欲望が下地になっているのかぁ、と思いを馳せながら観ていくと、何となくスゲーなぁと観るより断然に面白いもんですね・・・
美術って高尚なもんばかりかと思いきや、スゲー人間臭いんだなぁと・・・
美術シロートのワタクシにとって参考になることが多かった・・・
この本はオススメちゃんですね・・・
Posted by ブクログ
美術展は好きで良く行くのだが、美術というと、静かな所で黙って見入る物だと思っていた。そういう意味では、この本は私の美術観をいい意味で打ち破ってくれた。確かに歴史的に見ても芸術家にも色々な人がいて、人間臭い世界があるのは分かっていても、美術館の様な荘厳な雰囲気だと、背筋を伸ばして鑑賞しなければならないような気になる。しかし、実際の所は大半の芸術家は金や名誉のために絵を描いていたのだろうし、色々泥臭い世界があったはず。この本はそういう世界を面白く、分かりやすく書いてくれていて、肩の力が抜けるというか、美術に親近感を抱くようになる。しかし、私が最も関心を持ったのは、民間芸術の件。歴史上には表れない、滅多に美術館に展示されることのない、でも、地方でひっそりと愛され続けている芸術があることを初めて知った。どこにどのようなものがあるのかよく分からないが、身近な所から訪ねてみたいと感じた。
Posted by ブクログ
美術に関する楽しい話しが28.詳しい知識に裏打ちされたものばかりで、非常に楽しみながら一気に読破した.特に面白かったのは「第3話 金銭への執着」. 確かにに絵が売れなければ暮らせないのだが、往々にして”物質的な見返りなどに頓着しない”芸術家を想像するが、それを見事に論破してくれている.
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美術品を、人間のいろいろな欲にまつわるテーマで語るコラム集。
下世話な話もまぜつつ、美術といわれるところのものの裏側を真面目に読みやすくまとめたところに好感が持てました。
取り上げられている作品も、ラファエロなどのアカデミックなものから日本の絵馬や刺青、草間彌生やアウトサイダー関連など多方面に渡っていて楽しめました。
一時話題になったスペインのキリスト画修復の件もちょろっと入ってます。
Posted by ブクログ
宗教や倫理観、作家の人生などを背景に人間の欲望(権力、生存、性愛など)が投影された美術品を解説している。新聞の連載を下敷きにしているため一つ一つの作品に対する解説は短く、ダイジェスト的になってしまってはいるが、読みやすく美術鑑賞の入門編として良さそう。
刺青についての解説もあった。海外の「タトゥー」より、日本の「刺青」は迫力や生々しさ、人間観までも表現している世界でも稀な「芸術」と評しているのが興味深かった。おっかないイメージの方が強いが、そういう見方もできるのかと。
ピカソの「ゲルニカ」の解説も面白かった。反戦メッセージの濃い作品として知られているが、絵の端にはピカソの私生活における痴情怨恨が描かれており、反戦メッセージは「後付けのようなもの」という見方だった。美術品の背景まで知っていると見る目もまた変わっていく楽しさがある。
Posted by ブクログ
美術分野に疎い私でも、美術の大枠の歴史を『欲望』という視点で追っていく点は大変分かりやすかった。人間が考える、本能・欲求が絵画に垣間見れるという面白さに気づける。
その一方で、美術作品のメジャーなところではない、筆者個人の趣味による美術作品も多く出てくるので、自分の知らない美術作品の教養を得るにはいいかもしれません。
有名どころの作品をたくさん見たい方には物足りなさが残る本かもしれません。
Posted by ブクログ
人間の歴史の中で美術が何を表してきたのか、シンプルにまとめてある。分かりやすい言葉で書かれており、美術に詳しくない人でも読みやすい。
美術品が製作された時代背景や環境をふまえると、同じ作品でも受け止め方が変わることに気づかされた。現代の価値観のみで美術を鑑賞するのではなく、美術品をとりまく環境にも目を向けて、包括的に美術を楽しみたいと感じさせられた。
Posted by ブクログ
他の著作同様、美術史についてのなるほどな見方が多く紹介されているが、他の著作と比べるとコラムだからか情報量は抑えめ。しかし読んでいて楽しい一冊。
Posted by ブクログ
人間の欲望を映す鏡として美術を捉え、美術をいろいろな観点から眺めたエッセイ集である。美術に関する話題を28話にわたって宮下節で語っている。刺青、戦争記録画、絵金などのマイナーな話題もあり、宮下ファンには楽しめる読み物である。
Posted by ブクログ
カラヴァッジョや刺青などの研究で有名な著者。本書は新聞用エッセーをまとめたものなので、それらの専門書に比べると非常にライトでキャッチーなものに仕上がっている。
最近色々な名画の解説本が出ているが、宮下氏の本は少し視点が異なり、アンダーグラウンド感が漂っている。そこが毎回手にとってしまう理由なのだろう。
今回もそうやって手に取ったが、新聞向けということもあり、著者のアンダーグラウンド感が薄かった。「欲望」というタイトルが突出し過ぎている気がする。
著者の本当の魅力を知りたいのなら、刺青とヌードの美術史(NHKブックス)がおすすめ。本書よりもっと濃厚な「欲望」を感じるだろう。