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Posted by ブクログ
昨年の東京国立近代美術館の企画展「コレクションを中心とした特集 記録をひらく 記憶をつむぐ」はインパクトのある展覧会でした。まさに戦後80年というタイミングに立ち止まって考える機会になりました。美術館の企画力とは時代に対する編集力である、と思い知りました。その中でも藤田嗣治の《アッツ島玉砕》の発する圧力にはたじろいでしまいました。フランス時代の『乳白色の肌』とは全く違う混沌の色調、しかし暴力を描きながらもその描線にはフジタらしい美への執着のようなものも感じました。今までは彼の戦争画は彼の画業の中の特異点として無視していたような気がしましたが、白いヌードも黒い暴力も、もしかしたら一直線のものだったのかも知れません。個人の表現欲と社会の要請と時代の眼差しの中で美術というものが存在するのだとしたら「戦争の美術史」は美術の正史なのかも知れません。この新書は「絵を描いて世間に発表すること」の意味を考えさせてくれました。戦争が終わって80年、戦争を巡る芸術が社会の真ん中にいないように思える日本、もしかしたら、この時間もまた特異点なのかも知れません。
Posted by ブクログ
岩波新書の『戦争の美術史』を読みました。
戦争という共通の主題をもとに西洋美術と日本美術を通時的にさらっていく流れ。新書という紙幅の制限で深いテーマを描いていくというよりは、事例を沢山紹介してそこから先は読み手に委ねるというような流れでした。
それでも前近代と近代、第一次世界大戦以降の戦争の性質が全く違うものであるというのが、美術の面からもはっきりと伝わってきます。戦争の前では近代西洋美術が打ち立てた視覚理論も無意味になり、リアリズムへと回帰していく様子も興味深かったです。
そして第二次世界大戦と日本の美術については、藤田嗣治の話がやはり中心になります。他にも近年、東京国立近代美術館を中心に展開されている戦争画に関する話題も終えるようになっていて、まさしくこの話題の入門書としてはふさわしい本だったなと思います。
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