ドミニク・チェンのレビュー一覧
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はじめてドミニク・チェンさんの本を読みました。
読み始めから、見識の深さと文体の美しさを感じ、クラシックを聴いてるかのような読書体験でした。
(特にクラシックを普段聴いているわけではないですが笑)
「わかりあえない他者と共に在るとはどういうことか」という普遍的なテーマについて、言葉の限界を考えながら、それでもあきらめず関係性をつむぐことの尊さを感じさせてくれます。
言葉は、個々の感覚の最大公約数でしかない。
言葉を最大公約数と表現するセンスが素晴らしい!
そういえば、RADWIMPSに「最大公約数」という曲があったなと思い出して歌詞を見てみました。
(歌詞から抜粋)
「何を与えるで -
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言葉とはその人の考えの翻訳
相手の中の記憶を生きること=共にある感覚
分かり合えなさを理解しようとして生じる余白を埋める努力していく連続が未来につながる
世界をどう受容するか、
世界をどう生み出すか、
よりよくするために生み出すのではなく、
生み出されたものがすでに良い世界の破片
自分の成り立ちを知ることで異質な相手を知る、知ることは関係を結ぶと表現
非言語的な遺言
言葉が届くかどうかわからないけど残すことは祈ることに似ている、言葉だけではない、思い出や記憶も思いが伝わる表現の1つ、だから生きてる存在の記憶や思い出が誰かの中で自分が伝えたい自分であるように生きていく必要がある。
渡邊 -
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ネタバレユクスキュルの環世界論。暇と退屈の倫理学も同時に読んでいたので、この本でも出てきたことに運命を感じた。また、Spotifyの超相対性理論でも紹介されていたこともあり、即購入した。
内容は娘の誕生という、生と死の同時に感じた出来事から分かり合えなさについて、言葉について、自己を拡張することについて、学びについて述べられている。ドミニクチェンの人生から自分の人生について考えさせられる一冊。
印象に残った部分
学習行為とは個の中だけで行われるのではなく、他者との関係性の中で発達すると実感した。
学習を行う必然性が娘に生じる状況を、一種の場のデザインとして作り出した。
ひとつの能力が線形に上昇するプロ -
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原題は「ポジティブ・コンピューティング」ということで、ITあるいはデジタル技術をいかに人間のウェルビーイングにつなげるか、を問いかけた本になります。そのため前半ではウェルビーイングの定義やそれを規定する要因について、医学、心理学、社会学、経済学など様々な分野のアプローチを紹介し、どのような要因がウェルビーイングを構成しているのか解説しています。大きくは3つの因子が紹介されています。
1. 自己因子(ポジティブ感情、動機付け&没頭、自己への気づき、マインドフルネス、心理的抵抗力・回復力)
2. 社会的因子(感謝、共感)
3. 超越的因子(思いやり、利他行動)
そしてそれぞれについて、どうすればテ -
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クロスボーダーという言葉が地域を指す言葉だけではないことを、文章という純粋なものだけで示した作品。本人がトリリンガルであること、リセに通っていた頃の語学がエキサイティングな自分の領域を拡張するものであったこと、さらに、ゲームはこうした意識、世界観をただスイッチを入れるだけで変えるツールであったこと、そして何より娘を授かったことによって自分の死を予報されたと感じたこと。生死を考えることと、意識を拡張していくこと、その二つが織りなす美しい体験ができる。
昔であれば筆跡から、その書いた人の息遣いを感じることができた。今は、タイピングであり、もはやデジタルである。しかし、そのタイピングそのものに息遣い -
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「死」を学際的に検討する過程で、よりよい「生」とは何かについて考えされさせられた。死とは生物学的な個体の絶命という意味を超えた観念であると感じた。死者を弔うのは他者であるが、その死者の存命中はもちろん、死後に至っても相互作用の中で誰かの自己と社会が形成されていく。そのような「分人」的観点で捉えると、「死」は自己完結するものではない。また、「弔う」ことの本質は儀式という表層的なものではなく、生成変化を伴う生者と死者の社会的な共生だと思った。
一方で、テクノロジーによって新たに生じる死者の権利、死後労働の観点は非常に悩ましい。生命はその有限性によってこそ輝くが、死後も残り続ける SNS 上の情報や -
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「日本近代文学は、いまや誰でも今ここでアクセスできる我々の共有財産(コモンズ)である。そこにはまだまだ底知れぬ宝が隠されている。」(本書の帯より)
帯に記されたこの言葉と、本書の冒頭に示されている「文芸オープンソース宣言」だけでも、一読の価値がある。とくに、文学の教育、言葉の教育に関わる人たちには読んでほしいと思っている。
高等学校国語科再編において、文章を「論理的な文章」「実用的な文章」「文学的な文章」の三者に大別し、科目ごとに扱いうる「〇〇な文章」を限定したことが話題となっている。この分け方には「文学的文章では、論理は学べない」といった偏見が見え隠れするが、一方でそれに対して反論する側の -
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◾️概要
ポジティブコンピューティングの設計論を、自身の専門分野へ生かすため読みました。本書で最も印象に残ったのは、「ウェルビーイングと相関する因子は、全ての因子が全ての人にとって同じように良いわけではない。
自律性をどう刺激するか、ということが重要。」です。
◾️所感
テクノロジーが進歩したのに、人々の幸福が育まれていないのはなぜか?という問題意識を発端にしています。本書では、心理的ウェルビーイングと人間の潜在能力を高めるテクノロジーの設計および開発を、ポジティブコンピューティングと呼び論じています。今後、GDPに変わる指標として幸福感のようなものが採用される未来が来るかもしれません。その -
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