国弘喜美代のレビュー一覧

  • 死の10パーセント フレドリック・ブラウン短編傑作選
    ブラウンのミステリ短編集第三弾。エド・ハンターシリーズから2作品入ってボリュームたっぷりの最高に楽しい一冊!→

    シカゴ・ブルース大好きな私はエドたちがでる2作品がイチオシだけど、それ以外ももちろん良作。
    「5セントのお月さま」は皮肉が効いていてマル(大衆が求めるのは月ではなく……?)
    「球形の食屍...続きを読む
  • パトリック・メルローズ5 アット・ラスト
    起きた過去は救いがなく、救われるのを待っているだけでは人並みの透明な心は取り戻せない。それでも人生は廻り続け、5歳の頃から歩き出せない主人公にも、人生のさまざまなステップが降り注ぐ。父の死、薬、女性関係、結婚、子育て、そして最後の呪縛を解き放った母の死。
    このシリーズを読みながら、著者の半自伝的小説...続きを読む
  • パトリック・メルローズ3 サム・ホープ
    タイトルどおり、希望の感じられる巻だった。
    主人公の経験と思考は、3巻分のお話を読んだくらいではとても消化できるような内容ではないはずなのに、ずっと付き添ってこられた。著者の表現力には本当に感嘆する。

    そしてもう一人、この物語の中で存在感を示したブリジット。かつては馬鹿なフリをする馬鹿な娘だった彼...続きを読む
  • パトリック・メルローズ2 バッド・ニュース
    "耽美"や”罪悪”という言葉を理解するのに、この本ほど
    適した小説はないのでは。2巻の大きなテーマは、残酷な父の死、そして薬物。薬物中毒者の脳内カオスの再現という、どう考えても困難な表現が流れるように描かれることで、ほんの数日の出来事が驚くほど濃密になって読者を引き込む。著者が"衝撃的な体験をしただ...続きを読む
  • パトリック・メルローズ1
    展開の残酷さが衝撃的すぎて、そちらに意識がいくかもしれないが、ひどい暴力と絶望を体験した作者が、加害者である大人たちの心情をここまで効果的な比喩で表現していることがあまりにもすごい。

    具体的な行為については、パトリックの防衛本能が働くのか、少し空想を交えて語られるところなども逆にリアルで、心が疲弊...続きを読む
  • スパイの血脈──父子はなぜアメリカを売ったのか?
    【「だけど、ほら」ネイサンは笑いながら言った。「うちの家族には冒険がつきものなんだ。そうだろう?」】(文中より引用)

    CIAで高位の職につきながらロシアに寝返ったスパイのジム・ニコルソン。米当局との壮絶な駆け引きの末に彼は刑務所へと送り込まれるのであるが、その監獄の内側から息子のネイサンを同じよう...続きを読む
  • 氷の双子 THE ICE TWINS
    アンガス一家がヘブリディーズの孤島、トラン島(架空)に移住する
    エラン・ショナッハ島(Eilean Sionnach)がモデル 今でも島ではゲール語が話されている

    この家族大丈夫か?この家なんか変じゃない?犬は何を感じ取ってるの?…「ページをめくる手が止まらず」ってのを体感した でも、読後感は良か...続きを読む
  • 氷の双子 THE ICE TWINS
    双子の娘の1人を喪ったアンガスとサラの夫妻は、残った娘のカースティと3人で、スコットランドのトラン島に移って新たに出発しようとしていた。
    そんな中、娘のカースティは更に「自分はカースティではない」と言い出す。サラに疑念が沸き起こった…
    そして次々と不可解な展開になり、夫妻の間で高まって行く相互不信…...続きを読む
  • 報復
    「カルテル」を先に読んだけど、こちらの方が先に執筆されていたらしい。・・・なるほど。
    妻子をテロで失った男性の復讐劇、と言えば凡庸に聞こえるがそこはドン・ウィンズロウ、あまたある同様の作品レベルを遥かに超えている。
    傭兵部隊を組織しテロリストたちと戦う、という設定はアリステア・マクレーン(よりフレデ...続きを読む
  • 報復
     ドン・ウィンズロウの作品は久しぶりだ。ブーン・ダニエルズのシリーズとベンとチョンとOのトリオのシリーズ、トレヴェニアンの『シブミ』続編『サトリ』と、あちこちのヒーロー、ヒロインを追いかけたかと思うと、どうやらそこに落ち着く様子もなく、『フランキー・マシーンの冬』以来となる単発作品の本書を、ここで『...続きを読む
  • 死の10パーセント フレドリック・ブラウン短編傑作選
    フレドリック・ブラウンのミステリ短編を集めた日本独自の短編集。
    好きでいえば表題にもなってる「死の10パーセント」は如何にもフレドリック・ブラウンという感じで好みだが、これってミステリ?という気がしないでもない。まぁ、面白ければどうでも良いことだが。
    巻頭の「5セントのお月さま」はちょっとO・ヘンリ...続きを読む
  • 象られた闇
    ゴシックミステリかもしれないけれど、禍々しさや不気味さはあまり(ほぼ)なくて、むしろポップ。切り絵作家というのは面白いな。アグネスを、勝手に若目に想定して読んでいて、結構歳が行っていることに気づいて驚いた。
  • 象られた闇
    不安と悩み…人間の最深部にある闇が垣間見える、ヴィクトリア朝時代のゴシックミステリー #象られた闇

    ■あらすじ
    19世紀イギリスのヴィクトリア朝、切り絵作家として生業を得ていた主人公アグネス。苦しい家計ながらも肖像画の依頼を受けていたが、その客たちは次々と不可解な死を遂げる。過去、自身の妹を失って...続きを読む
  • スパイの血脈──父子はなぜアメリカを売ったのか?
    スパイものが好きで下北の「古書ビビビ」さんで購入した本。
    ノンフィクション。家族想いな父。にもかかわらず、結果的に息子を不幸に(巻き沿いに)してしまう。刑務所にいながらそんなことができるのであろうか・・。いやできてしまった。非常に見ごたえあります。
  • 善いミリー、悪いアニー
    イギリスの作家「アリ・ランド」の長篇ミステリ作品『善いミリー、悪いアニー(原題:GOOD ME BAD ME)』を読みました。
    「P・D・ジェイムズ」に続き、イギリス作家の作品です。

    -----story-------------
    連続殺人犯「ルース・トンプスン」が逮捕されたのは、その実娘「アニー...続きを読む
  • レックスが囚われた過去に
    7人兄妹の2番目、長女レックス。
    かつて宗教に入れ込み過ぎた父から兄妹全員が虐待を受けていた”恐怖の館”から勇気ある脱出に成功した”少女A"。

    レックスが脱出したのを機に父は自殺、母は長期に渡る服役刑に処された。
    兄妹たちは父からの解放後、メンタルケアを受けながら散り散りに里親に預けられ、ある者は...続きを読む
  • 塩の湿地に消えゆく前に
    ボードウォークというアイデンティティを持ち、かつてカジノで栄えた町、ニュージャージー州アトランティックシティ。
    今やかつての精彩は消え、多くのカジノ、ホテルが閉鎖されゆく中、しがみつくように残っている商業施設と共に冴えない日々を送っている町の人々。

    この物語が焦点を当てるのは、この寂びれた町に人生...続きを読む
  • 塩の湿地に消えゆく前に
    ニュージャージー州アトランティックシティを舞台にしたシリアル・キラーもの。とは言え、そもそも被害者たちは発見されておらず、誰もこの事件に気づいていない。ただ一人、占い師のクララを除いては。彼女は他者の思いをビジョンとして受け取るサイキックで、この能力を基に話は進む。主な語り手はクララと、夢破れて失意...続きを読む
  • パリで待ち合わせ
    ・料理のレシピはもっと掲載して欲しいし、料理の描写はもっとあってもいいなと思う。今まで読んできた日本の小説がいかに食べ物にこだわって描写していたかが反面教師的に痛感させられた。
    ・わたしもイヴとジャックのような友人が欲しい。
    ・この人の小説、もっと読みたいけどコラムしか出版されていないのが残念。もっ...続きを読む
  • 寒慄【かんりつ】
    元スノーボード選手だった著者ならではの作品。
    シーズンオフのスキー場の山頂のホステルに、10年振りに集められた元スノーボード選手の5人組。誰の招待か謎のまま、雪山に閉じ込められた状況の中で、じわじわと恐怖が進行する。5人の中のひとり、主人公ミラの語りのもと、事件の契機となった10年前の出来事と、現在...続きを読む