国弘喜美代のレビュー一覧

  • 死の10パーセント フレドリック・ブラウン短編傑作選

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    間違いない。大好きだ。読めば読むほど、この人の小説が好きになる。ミステリーもSFも、そして意外にもホラーテイストの作品まで、傑作揃い。もともっと読みたいぞ!!
    長編「シカゴブルース」を読んで、好きな方は必読だよ。

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    2024年06月24日
  • 死の10パーセント フレドリック・ブラウン短編傑作選

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    ブラウンのミステリ短編集第三弾。エド・ハンターシリーズから2作品入ってボリュームたっぷりの最高に楽しい一冊!→

    シカゴ・ブルース大好きな私はエドたちがでる2作品がイチオシだけど、それ以外ももちろん良作。
    「5セントのお月さま」は皮肉が効いていてマル(大衆が求めるのは月ではなく……?)
    「球形の食屍鬼」「殺しのプレミアショー」は謎解き部分が好き。
    「愛しのラム」は読み進めると感じる違和感の→

    正体が分かった瞬間に「ああッ……」ってなる。
    「どうしてなんだベニー、いったいどうして」はラストに「うわぁぁぁ」ってなったなぁ。
    「死の警告」のなんとなく感じるコミカルさや「最終列車」の余韻など、ブラウ

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    2023年10月20日
  • パトリック・メルローズ5 アット・ラスト

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    起きた過去は救いがなく、救われるのを待っているだけでは人並みの透明な心は取り戻せない。それでも人生は廻り続け、5歳の頃から歩き出せない主人公にも、人生のさまざまなステップが降り注ぐ。父の死、薬、女性関係、結婚、子育て、そして最後の呪縛を解き放った母の死。
    このシリーズを読みながら、著者の半自伝的小説なのだということがずっと心の奥にあった。
    ここまでの自己分析と、さまざまな思惑を持つ人々の描写、そして筆力。著者の人生はこれからも続いていくわけだが、この作品を書き上げ、文学にしたことで少しでも救いがあればいい。

    読んでいる間、私自身の人格にも影響が出てくるような、"侵食"が凄

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    2022年04月10日
  • パトリック・メルローズ3 サム・ホープ

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    ネタバレ

    タイトルどおり、希望の感じられる巻だった。
    主人公の経験と思考は、3巻分のお話を読んだくらいではとても消化できるような内容ではないはずなのに、ずっと付き添ってこられた。著者の表現力には本当に感嘆する。

    そしてもう一人、この物語の中で存在感を示したブリジット。かつては馬鹿なフリをする馬鹿な娘だった彼女が、強さを見せ、弱さを抱えて旅立つラストシーンはことさらに美しく見えた。

    父と息子、母と娘の再生が、邪悪なパーティ会場で響き合った第3巻。ここで終わらずあと2巻もあるというのが非常に嬉しい。

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    2022年03月29日
  • パトリック・メルローズ2 バッド・ニュース

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    "耽美"や”罪悪”という言葉を理解するのに、この本ほど
    適した小説はないのでは。2巻の大きなテーマは、残酷な父の死、そして薬物。薬物中毒者の脳内カオスの再現という、どう考えても困難な表現が流れるように描かれることで、ほんの数日の出来事が驚くほど濃密になって読者を引き込む。著者が"衝撃的な体験をしただけ"ではなく、真にイギリスを代表する作家であるということが隅々から伝わってくる作品だ。

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    2022年03月18日
  • パトリック・メルローズ1

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    展開の残酷さが衝撃的すぎて、そちらに意識がいくかもしれないが、ひどい暴力と絶望を体験した作者が、加害者である大人たちの心情をここまで効果的な比喩で表現していることがあまりにもすごい。

    具体的な行為については、パトリックの防衛本能が働くのか、少し空想を交えて語られるところなども逆にリアルで、心が疲弊するし、心臓がひとまわり小さくなったのではないかと感じるほどだった。

    なかなかお目にかかれない世界の話だからか、作者の筆力が凄まじいからか、消化するのが難しい話だけれど、訳者あとがきに上手くまとめられているのでそこまできちんと読むのをお勧めします。

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    2022年02月26日
  • スパイの血脈──父子はなぜアメリカを売ったのか?

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    【「だけど、ほら」ネイサンは笑いながら言った。「うちの家族には冒険がつきものなんだ。そうだろう?」】(文中より引用)

    CIAで高位の職につきながらロシアに寝返ったスパイのジム・ニコルソン。米当局との壮絶な駆け引きの末に彼は刑務所へと送り込まれるのであるが、その監獄の内側から息子のネイサンを同じようにロシアのスパイへと仕立て上げてしまう......。小説よりも奇なる事実を描いた驚愕のノンフィクション作品です。著者は、米『オレゴニアン』紙などへの寄稿を続けたブライアン・デンソン。訳者は、スリラー小説の翻訳でも知られる国弘喜美代。原題は、『The Spy’s Son: The True Story

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    2019年08月05日
  • 氷の双子 THE ICE TWINS

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    アンガス一家がヘブリディーズの孤島、トラン島(架空)に移住する
    エラン・ショナッハ島(Eilean Sionnach)がモデル 今でも島ではゲール語が話されている

    この家族大丈夫か?この家なんか変じゃない?犬は何を感じ取ってるの?…「ページをめくる手が止まらず」ってのを体感した でも、読後感は良かった この終わり方は好きだな

    建築士アンガスが安藤忠雄の本を読んでいたり、カースティがキティちゃんのシャツを着てたりと、日本が彼らの日常生活に自然に入っているところも面白い

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    2017年03月28日
  • 氷の双子 THE ICE TWINS

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    双子の娘の1人を喪ったアンガスとサラの夫妻は、残った娘のカースティと3人で、スコットランドのトラン島に移って新たに出発しようとしていた。
    そんな中、娘のカースティは更に「自分はカースティではない」と言い出す。サラに疑念が沸き起こった…
    そして次々と不可解な展開になり、夫妻の間で高まって行く相互不信…そしてカースティの様子…
    厳しくも美しい自然の、スコットランドの孤島や小さな町を舞台に心理劇が展開する…
    「次…」が気になって、どんどん読み進めてしまう…

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    2017年01月30日
  • 報復

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    ネタバレ

    「カルテル」を先に読んだけど、こちらの方が先に執筆されていたらしい。・・・なるほど。
    妻子をテロで失った男性の復讐劇、と言えば凡庸に聞こえるがそこはドン・ウィンズロウ、あまたある同様の作品レベルを遥かに超えている。
    傭兵部隊を組織しテロリストたちと戦う、という設定はアリステア・マクレーン(よりフレデリック・フォーサイス?)、ウェットな主人公の心情描写はジャック・ヒギンズを思わせる部分もある。
    しかし、歯切れよく展開される物語はまさしくウィンズロウ節炸裂。特にアクションシーン(冒頭の飛行機テロの描写の恐ろしさ!)はスローを交えたような演出が目に浮かぶようにリアルだし、何より現代の近接戦闘戦のリア

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    2016年09月16日
  • 報復

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     ドン・ウィンズロウの作品は久しぶりだ。ブーン・ダニエルズのシリーズとベンとチョンとOのトリオのシリーズ、トレヴェニアンの『シブミ』続編『サトリ』と、あちこちのヒーロー、ヒロインを追いかけたかと思うと、どうやらそこに落ち着く様子もなく、『フランキー・マシーンの冬』以来となる単発作品の本書を、ここで『失踪』とともに同時二作発売という鮮度で、しかも母国USでは未発表のまま、ドイツに続いて日本での翻訳先行で出版という奇抜さで、この作家の奇行とも取れる創作行動は世界を驚かせている。

     そして単発ながら、どちらもこれまでにない類いの内容を伴い、ウィンズロウという作家の彷徨の途上にあるらしい彼なりの才気

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    2016年03月03日
  • アオサギの娘

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    ネタバレ

    故郷のフロリダを離れ、ワシントンDCはスミソニアン博物館に勤務する鳥類画家のロニ・メイ。
    ある日弟のフィルからの電話で、母の転倒からの怪我、さらには認知症の症状があることを知らされる。介護施設に入所させたので、手伝いに戻ってきてほしいという。
    誇りであり、心の支えでもある愛すべき職場を離れることに後ろ髪を引かれる思いもありつつ、介護休暇を申し出て母の下を訪れるが、そこに何気なく見つけた父の死の真相究明への手掛かり。
    25年前、ロニの父は地元の漁業局で野生動物保護管理官として働いていたが、ある日沼地で溺死体となって発見される。
    状況的には自殺も疑われるような中、周囲の計らいもあって事故死として処

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    2024年11月09日
  • 死の10パーセント フレドリック・ブラウン短編傑作選

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    ネタバレ

    目次
    ・5セントのお月さま
    ・へま
    ・女が男を殺すとき
    ・消えた役者
    ・どうしてなんだベニー、いったいどうして
    ・球形の食屍鬼(グール)
    ・フルートと短機関銃のための組曲
    ・死の警告
    ・愛しのラム
    ・殺しのプレミアショー
    ・殺意のジャズソング
    ・死の10パーセント
    ・最終列車

    『5セントのお月さま』『フルートと短機関銃のための組曲』『死の警告』が初訳。

    フレドリック・ブラウンのSF短編全集が出たとき、どうしてSF限定なのだろうと思った。
    ミステリの短編もそこそこあるのに。
    『最終列車』が収録されたアンソロジーには、これが最後のアンソロジー未収録作品とあったような気がするけれど、その後にこれ

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    2024年06月03日
  • 死の10パーセント フレドリック・ブラウン短編傑作選

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    フレドリック・ブラウンのミステリ短編を集めた日本独自の短編集。
    好きでいえば表題にもなってる「死の10パーセント」は如何にもフレドリック・ブラウンという感じで好みだが、これってミステリ?という気がしないでもない。まぁ、面白ければどうでも良いことだが。
    巻頭の「5セントのお月さま」はちょっとO・ヘンリーとかの短編を思わせるテイスト。「殺しのプレミアショー」なんかは割と本格なミステリといった感じでバラエティ豊かな短編集。

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    2024年04月05日
  • 象られた闇

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    ゴシックミステリかもしれないけれど、禍々しさや不気味さはあまり(ほぼ)なくて、むしろポップ。切り絵作家というのは面白いな。アグネスを、勝手に若目に想定して読んでいて、結構歳が行っていることに気づいて驚いた。

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    2024年03月26日
  • 象られた闇

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    不安と悩み…人間の最深部にある闇が垣間見える、ヴィクトリア朝時代のゴシックミステリー #象られた闇

    ■あらすじ
    19世紀イギリスのヴィクトリア朝、切り絵作家として生業を得ていた主人公アグネス。苦しい家計ながらも肖像画の依頼を受けていたが、その客たちは次々と不可解な死を遂げる。過去、自身の妹を失ってしまったこともあり後悔の念に苛まれていた彼女は霊媒師の少女に相談、客たちの死の真相を探ろうとするのだが…

    ■きっと読みたくなるレビュー
    見える…人間の最深部が見える。こ、こわい…

    本作はヨーロッパ中世を感じさせるゴシックミステリーです。終盤まで大きな展開がされることなく、切り絵作家の女性と霊媒師

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    2024年03月24日
  • スパイの血脈──父子はなぜアメリカを売ったのか?

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    ネタバレ

    スパイものが好きで下北の「古書ビビビ」さんで購入した本。
    ノンフィクション。家族想いな父。にもかかわらず、結果的に息子を不幸に(巻き沿いに)してしまう。刑務所にいながらそんなことができるのであろうか・・。いやできてしまった。非常に見ごたえあります。

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    2023年05月02日
  • 善いミリー、悪いアニー

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    イギリスの作家「アリ・ランド」の長篇ミステリ作品『善いミリー、悪いアニー(原題:GOOD ME BAD ME)』を読みました。
    「P・D・ジェイムズ」に続き、イギリス作家の作品です。

    -----story-------------
    連続殺人犯「ルース・トンプスン」が逮捕されたのは、その実娘「アニー」が警察に密告したからだった。
    臨床心理士の「マイク」の家に里子として引き取られた「アニー」は「ミリー」という名前で素性を隠し、新たな人生を歩むことに。
    だが、「ミリー」の精神に「ルース」が落とした影は色濃く、さらに里親の娘に疎まれたことで転入先の学校でも孤立を深めていく。
    そして事件の裁判で彼女は

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    2023年04月03日
  • レックスが囚われた過去に

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    ネタバレ

    7人兄妹の2番目、長女レックス。
    かつて宗教に入れ込み過ぎた父から兄妹全員が虐待を受けていた”恐怖の館”から勇気ある脱出に成功した”少女A"。

    レックスが脱出したのを機に父は自殺、母は長期に渡る服役刑に処された。
    兄妹たちは父からの解放後、メンタルケアを受けながら散り散りに里親に預けられ、ある者は周到に素性を隠しつつ一定の成功を収めた人生をもぎ取り、ある者は過去すらも自身の売名道具に用いながら地位と名声を得た。またある者は先天的ハンディキャップもマイナスに手伝い、過去から逃れきれず苦悩にまみれた道を歩んでいる。

    物語は冒頭、母が刑務所内で死を遂げたところから始まる。
    意外にも、か

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    2022年12月04日
  • 塩の湿地に消えゆく前に

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    ネタバレ

    ボードウォークというアイデンティティを持ち、かつてカジノで栄えた町、ニュージャージー州アトランティックシティ。
    今やかつての精彩は消え、多くのカジノ、ホテルが閉鎖されゆく中、しがみつくように残っている商業施設と共に冴えない日々を送っている町の人々。

    この物語が焦点を当てるのは、この寂びれた町に人生を翻弄され、泥沼にはまり込んでしまった、あるいははまりそうなところを何とか抜け出そうともがいている女性達。

    町がら、カジノでのカクテルウェイトレスとして若さを売ることで対価を得ることにも華やかさや誇りを持てた時代があったが、次第に町自身の低迷と共にそうした者達の地位は下がり、またある者は年を重ねる

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    2022年03月05日