あらすじ
スミソニアン博物館勤務の鳥類画家ロニはフロリダ州テネキーの実家で「ボイドの死について話したい」というメモをみつける。ロニの父ボイドは25年前に沼地で謎の溺死を遂げていた。ロニは父の死の真相を追うが、背後には湿地に囲まれた田舎町の大きな闇が……
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Posted by ブクログ
故郷のフロリダを離れ、ワシントンDCはスミソニアン博物館に勤務する鳥類画家のロニ・メイ。
ある日弟のフィルからの電話で、母の転倒からの怪我、さらには認知症の症状があることを知らされる。介護施設に入所させたので、手伝いに戻ってきてほしいという。
誇りであり、心の支えでもある愛すべき職場を離れることに後ろ髪を引かれる思いもありつつ、介護休暇を申し出て母の下を訪れるが、そこに何気なく見つけた父の死の真相究明への手掛かり。
25年前、ロニの父は地元の漁業局で野生動物保護管理官として働いていたが、ある日沼地で溺死体となって発見される。
状況的には自殺も疑われるような中、周囲の計らいもあって事故死として処理された。
釈然としない思いを抱きながらその後の日々を過ごしてきたロニだが、久しぶりに帰郷した地で父の死の真相を探り始める。。。
父は死は自殺だったのか、事故だったのか、はたまた他殺だったのか。
関係者達から重要な話を聞いて心が揺れる様が描かれる場面が多くあるのだが、どの立場からどの立場に揺れたのかよく分からず(自殺だと思っていたけどやっぱり事故だったのかも。。。とか事故だと思い始めていたけど実は他殺!?みたいな)、また真相も予想の範疇内でそこを巡るサスペンス劇は若干消化不良。
でも、そのサスペンス要素とは別の、物語としての地力は結構好きだった。
『ザリガニの鳴くところ』に通ずるような自然とミステリの融合小説。
『ザリガニの鳴くところ』は世間から隔絶された野生の道を生きる湿地の少女カイヤを描くことで自然を際立たせたが、本書はあそこまでの原始性はなく、どちらかというと都市的生活を送りながらも、金儲け主義とは一線を画する自然を愛す人々を描く。
鳥類画家であるロニの鳥を愛する心(とにかく数多くの鳥の名が出てくる。ナンベイタゲリ、アンデスイワドリ、ショウジョウコウカンチョウ、エボシクマゲラ、ムラサキバン・・・)、鳥の姿をスケッチするために幾度となくカヌーで訪れる沼地、その沼地での父との思い出、同じく自然を愛し地質学を学んだカヌーショップの男との歯がゆいロマンス、認知症の母との過去からの確執の中で緩衝地帯のような役割を果たすハーブの話、等々。
ロニの絵を書く才能がうらやましい。
言葉にできない場面を絵という形に落とし込むことで心の浄化作用があるように思う。
自分は絵を書く能力が全くなくて悲しい。
こんな風に絵がすらすらと書けたら楽しい、いや楽しいのとはちょっと違うかな、心が休まるだろうな。
絵が書けないので何とか言葉で気持ちをアウトプットするようにしているが、言いたいことの半分も適切な言葉が見つけられず悶々とする。
と、全然内容とは関係ない方向に思考が伸びていってしまった。。
Posted by ブクログ
スミソニアン博物館に鳥類画家として勤務するロニのもとに、歳の離れた弟から、実家で一人暮らしをしていた母親が手首を骨折して入院しているとの連絡を受ける。母親は、認知症のようだとも言う。介護休暇を申請して実家に戻ったロニは、母親の日記や手紙を読むうち、子どもの頃に事故で亡くなった父親の死の真相を探り始める。
当時10歳だったロニ、赤ちゃんだった弟。父親や母親への思いは微妙に違う。若い頃の知り合いと再会しながら、当時の状況を探るロニ。真実に気づいてからは一気にサスペンス感が加速していく。ミステリー風味の家族ヒストリーかな? ロマンス風味も少々。
スミソニアン博物館でもダウンサイジングの傾向にあるのだと、別なところにも反応してしまう。