<全15巻:全編への感想です 原作読破済み>
シリーズ途中で原作小説を読み、大筋にのみ乗っ取り、キャラクター像や登場キャラクター、エピソードは山口氏(以下「作者」)の独自創作・改変が予想以上に多いことを知り、納得しつつも改めて驚きました。
狂気の暴君・大納言忠長が駿河城にて主催した真剣御前試合。その第一試合に登場した二人の剣士は、片や全盲、片や隻腕という異様な取り合わせ。
二人の一見奇矯な剣法がぶつかり合おうとするシーンから一転、その因縁が1から語られ、最後は試合の決着がついて終わります。
残酷物の傑作として知られた原作に劣らず、(もう表紙からして)血と内臓、不条理と狂気の応酬。迫力は素晴らしく、特に序盤の吸引力は流石と評するしかありません。
ただ途中から、作者の魅力である描線が細く、コントラストも弱めになって(というか最終的なクリーンナップを行っていないデジタル処理に見える部分も)行くのが個人的に残念。絵柄が研ぎ澄まされていったとも言えるのでしょうが、鮮明かつねっとりとした線のほうが好きでした。
また改変・オリジナル部分もあまりにもエキセントリックなところが多く、正直中盤以降口飽きする感は否めませんでした。
ここは原作既読かどうかによって大きく異なるでしょうが、虎眼先生をあそこまでエキセントリックで痴呆がかった老醜の剣客(それでも腕は確かという怖さはそれはそれでよかったんですが)として描く必要はあったのかなど、疑問に思う部分も読み進むにつれて増えてきました。
特に別エピソードである「がま剣法」から屈木を出演させる意味と意義が今一つ伝わらない感じでした。
その辺りの中盤のダレと、原作の行間を補強するのはいいのですが、これ必要だったのかな?というエピソード群が残念。
全体で7~8巻ぐらいにまとまっていれば文句なしの名作だったかもしれません。
ラストは十分に残酷な原作に輪をかけて過酷です。これは悪くなかったし着地点として評価したいと思います。
ただ、この御前試合の真の残酷さ、そして呆然とするほどの無意味さはやはり、原作のラストにこそあると考えます。ぜひ原作小説も併せて読んで楽しんでいただきたいですね。
最後に「無明逆流れ編・完」とあるのは、機会があればほかの章も漫画にしたいという作者の大望なのでしょうか。
この作品以降、作者の魅力であった「テンポの良さ」が失われた感(完結後に執筆・連載中の「エグゾスカル零」でも顕著)が強いのが残念。単なる作風の変化と受け取るべきなのでしょうか、ちょっと今は判断できません。
駿河城御前試合・無明逆流れのエピソードは、その鮮烈さと残酷さゆえに、年代を問わずクリエイターの完成に響くところがあるのでしょう。
この物語をカバーした映画や漫画は他にもいろいろとあるので、読み比べてみるととても面白いです。