黒川創のレビュー一覧
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ネタバレ●本の概要
様々な人物の思想を鶴見俊輔が語ったものを編集者が纏めている。そのため、テーマとして何かしら一貫したものはない。それぞれの枚数もバラバラである。何名かを書きだそう.
イシ(先住アメリカ人ヤヒ族最後のひとり)、ジョージ・オーウェル(英国人作家)、金子ふみ子(アナキスト)、ハヴェロック・エリス(性心理学者)、ガンジー(インドの弁護士、思想家、政治指導者)、由比忠之進(エスペランティスト、反戦運動家)、新島襄(同支社創立者) etc
●好きな場面
いくつかを抜粋、※で補足や所感を記述する
尚、長文が多いため、一部を省略し、辻褄を合わせるために、文章を一部編集している
イシは文明人を知識 -
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外祖父・後藤新平の大きな屋敷で育った生い立ち。父・祐輔の野望から伊藤博文の若かりし日の俊輔を名付けた!俊輔と和子が大家族の中でも母とともに重要な位置を占めていたという。俊輔の正常中学時代の悪ガキぶりはすごい。上位8割が上へ進めるのに、彼は下から6番目の成績だった。そして中学中退のまま米国・ハーヴァード大学に入学したというから恐ろしい天才である。日本語さえ十分でなかった俊輔が米国で勉強した日々は壮絶だっただろう。天才少女の模範生・姉・和子が俊輔の前ではくすんでしまったように感じる。10代での悪行の限り、そして鬱、自殺未遂、精神病(統合失調症の疑い)の日々は全くの驚きである。海軍としての参戦、安保
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重苦しい小説です。
途中で息苦しくなって何度も閉じてしまいたくなりました。
それでも、やはり気になってまたページを開いてしまう。
使用済み核燃料の処理の問題、
それに関する市民運動への弾圧、
「積極的平和維持活動」という名の軍隊、そして参戦、
軍の施設から脱走する兵士、それを手助けする人たち
ー戦場に行くのはいやだ、家に帰らせてもらいたいー
というただ一つの要求を掲げて原発に籠城する兵士、
その生々しさに辟易しながらも、
まさにそれらが起きてしまう可能性を重ねながら読み進めてしまう
「この先、人類はもう滅びるしかないないでしょう」、と籠城する兵士の言葉が哀しい。 -
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短編集。
1、うらん亭‥震災のニュースを聞きながら、叔父さんを思い出す
2、波‥東北大震災のある家族、アザラシの上に乗って
3、泣く男‥プレスリーと原爆を研究するミチオさん
4、チェーホフの学校‥キノコ狩りに出かけるチェーホフ
5、神風‥サラエヴォの女性シンガーが福島の地震で故郷へ
6、橋‥関東大震災の津波で亡くなった厨川白村
現在と過去とそしてたぶん未来もが、とりとめもなく浮かび上がってくるままに綴られたような感がある。それが地震とか原発とかに触発されつつも、そこには営まれる日常がある。そして、切り取られた日常、あるいは思い出や記憶が、恐い物として差し出されている。 -
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声高に昨年3月のあの震災や津波、あるいは原発事故による放射線被害という一連の出来事を語るわけではなく、それらとは遠くはなれた時代や場所での出来事を通して、ゆるやかに「あの日々」を思い起こさせる物語が6つ並んでいる。
物語の語り口の穏やかさの陰で、悲惨なことを忘れ去ってしまうことの怖さ、この日常があの日から続いているのだと言う事実を突きつけられる思いにかられる。
ここに収録された作品の多くには本筋とはあまり関係のない作中話が挿入され、その時代と場所を越えた重層構造が物語を一見とらえ難いものにする。まるで関係のない時間軸で紡がれるいくつかの物語が、読み手の心のどこかで焦点を結ぶとき、実に印象 -
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本著は世界を旅した体験と経験と知見と思索の過程を伝える良書である。
私たちは狭い視野の世界で生きている。文化や価値観というのは場所に根ざしており、それは風土による影響だったりもする。世界を見ても寒い国と暑い国とでは思想も宗教も価値観も異なることは歴史が証明している。
さて、本著は旅に出て、その先で出会った名も無き人々や文化、価値観に触れ視点が広くなった体験を述べる。国外へ旅をするのもいいだろう。国内を旅をするのもいいだろう。大切なことは多くの人たちと出会い、価値観を知り、深め、自分の中で思索し、落とし込むことで視野が広くなることだろう。これは、お金では買えない。体験するだけでは足りない。目的を -
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ロシアのサンクトペテルブルクに招かれた一人の日本人作家が、徳川時代のロシアと日本との「縁」を語る中で、漱石の小説『門』に描かれた伊藤博文暗殺事件と安重根、そして漱石が所属した東京朝日新聞記者の杉村楚人冠と幸徳秋水との関わりが紐解かれていく。小説の体裁をとった歴史エッセイ、というところか。連想が連想を呼び、後半は荒畑寒村、管野スガ、大石誠之助にまで話題が及ぶ。リサーチ力はさすがで、いろいろ教えてもらった。
ただし、学生を前にした講演という設定にもかかわらず、まったく対話性が感じられないことに驚かされる。ずっと口語体が維持されているから、「講演」という設定は一貫しているものの、こんな話を延々と -
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黒川創氏の作品「京都」が好きだ。美しい観光地としての京都ではない京都。だから黒川氏の作品を読みたいと思っていた。
ウィーンと二人きりの兄妹と外交官、そして兄の周りの人々。
外交官の章がよかった。
ウィーンの美しいだけではない別の顔、オーストリアの複雑な歴史等々。
静かな、だけど深い、様々な解釈が出来る話のように感じた。
最後にコロナウイルスによる混乱もしっかり描かれているのは今の時代のかな。
「第三の男」を絡めて書かれていたのも面白かった。
「第三の男」は学生のときに英語の授業で読んだ。
当時は訳に必死で背景、その本題など理解できていなかった。
改めて読んでみたくなった、日本語で。