中島京子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
田山花袋を研究しているデイブは
学会を理由に年下の恋人エミを追って日本まで来てしまった。
しかしエミにはユウキという同年代の恋人もいた。
一方エミの曽祖父であるウメキチはヘルパーのイズミに助けてもらいつつ
戦時中一緒に逃げたツタ子を思い出してやまない。
「布団の打ち直し」に沿って描かれた三角関係たち。
カバー装画:武藤良子 カバーデザイン:藤田知子
恋愛矢印がいろいろな方向を向いていて結構複雑な関係なのに
すんなりと人物図が掴めます。
キャラとしてはイズミが一番好きかなぁ。
ざっくりしているようでちゃんと考えているところとか。
解説にもあったけれど本当に女が強い物語です。
『布団』を読んだ -
Posted by ブクログ
今週は会社の展示会でずっと有明に出張。最終日の家族向けのイベントには多くの親子連れが朝早くから来られたけれど、私なんて子供にこんなことをしてやったことが無く、皆さん偉いなぁって感心して見てました。
で、嫁さんにリクエストされ買ってきたこの本、夫婦と祖母、引篭りの長男の4人が静かに暮らす家庭に、嫁いだ娘二人がそれぞれ訳ありで複数になって舞い戻り、期せずして4世代同居の大家族になってしまっての物語。
父、母、祖母、息子、娘、孫、娘婿、出入りの介護士…、それぞれの視点から描かれるそれぞれの事情と有り様。空いた時間でサクサクと読めて、時にシニカル、巧いです。
ただ、この家族、春子さんのお友達が言うよう -
Posted by ブクログ
昭和の時代が終わりを告げ、年号が平成と改められ、日本はバブル景気真っ只中。ベルリンの壁が崩壊し、天安門事件が起こった1989年、ある旅行会社が企画した香港ツアーで、ひとりの青年が消えました。
それから十数年の歳月が流れ去り、そんな青年がいたことすら、誰も覚えていませんでした。が、あることがきっかけで、同じツアーの参加者や添乗員など、青年とささやかな関わりを持った人々の記憶に、ふと彼のことが甦ったのです。けれど、その記憶が変なのです。なんだかぼんやり霞んでいたり、肝心要の部分が欠落していたり、当時青年が一方的に想いを寄せていた女性においては、記憶そのものが書き換えられていたりして・・・。
青年に -
Posted by ブクログ
なんとも近代的な名前をつけてもらったものだ。
美穂。
美しい、実り。
原作では名前さえ与えられなかった女性が本作では主人公の座を射止め、物語を語りはじめた。
田山花袋の『蒲団』を題材にとって瑞々しい女たちの姿が動き始める。
自分の夫が奔放な女弟子に翻弄される姿を悔しい思いで見つめつつ
生活が荒れないようにあたりに目を配る主婦の目。
華やかな女弟子の姿に母としての日常に追われ「女」を捨てている、と目が覚める瞬間。
その気づきが豊かな実りをもたらすのだろう。
「女」なだけでは身につけられない母の豊かさ。
永遠の男の子である夫の目には気づかれないかもしれないが、女は何食わぬ顔でと変化を遂げるのだ -
Posted by ブクログ
「おすすめ文庫王国2008」にちょこちょこ書名が挙がっていたので手にしてみる。
明治時代、日本の奥地を旅して『日本奥地紀行』を著したイギリス人女性研究者イザベラ・バードとその通訳を務めた伊藤亀吉。
その『日本奥地紀行』にインスパイアされ、作者は、道行の中でイトウがI・Bに惹かれていった、との物語を企てる。
時代の息吹の中で力む日本の若者と母親ほども歳の離れた外国人女性の心の交情。
「文明」が「開化」するかしないかというような頃、「近代化の波」が列島を覆いつくす以前といった、危ないバランスの時代の息使いやそこに生きた若者の心の様子が、イトウの手記として丹念に綴られる。
物語はイトウの手記のパート -
Posted by ブクログ
イトウとI.Bの旅も、シゲルと先生の出会いも、最初、すごくわくわくして、手記の謎とあいまって、どうなるんだろうと楽しく読んでいったのだけれど。読んでいって、え、これで終わり?と思ってしまった。だんだんイトウとI.Bの関係が苦しくなっていくにつれ、読むのも苦しくなっていったような。イトウ手記がだんだん長く感じられてしまって。手記のパートも、現代のパートも、謎解きも、もっとぱーっと広がっていくことを勝手に期待していて、わたしとしては不完全燃焼のうちに終わってしまったような。もっとシゲルと先生の話が読みたかったような。イザベラ・バードにそもそも関心があればもっとおもしろく読めたのかもしれないけど。