中島京子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
タイトルどおり、冠婚葬祭にまつわる四つの物語です。良い意味で裏切られましたぁ。この本が、冠婚葬祭という言葉から思い描く一般的なイメージとは、ちょっと違った視点で書かれているからです。
冠婚葬祭とは、人が生まれてから亡くなるまで、そうして亡くなった後に、家族や親族によって執り行われる、行事全般を指す言葉だそうです。そもそも儒教思想の影響があるらしく、この四文字が示す人生の節目の催しを、いずれも滞りなく行うことで一人前とみなす考え方もあるようですね。
けれど、この本は家族や親族などの、内輪のお話ばかりではありません。ふとしたきっかけで知り合った、赤の他人同士の関わりがしみじみと、またユーモラスに描 -
Posted by ブクログ
子供のころはいじめられっ子で、ジミで奥手な妹が、突然日本語もままならない台湾人の青年と結婚すると言い出しました。いつも「アイシテイル」と言ってくれるからという理由で、日常会話もろくに成立していないのにです。妹はちょっと世間の常識からズレているところがあって、初めて家に連れてきた恋人が、バードウォッチング好きの大柄な黒人青年という変わり者。主人公である姉はといえば、大学を卒業して有名商社に勤たものの、その後何社か勤め先を変えた後、いまは働きもせず、妹の住まいに居候。人あたりが良く、それなりに恋愛経験もしてきましたが、27歳の現在も踏ん切りがつかず独身です。新たに住む場所と収入源を考えなければなり
-
Posted by ブクログ
お正月休みを挟んで1週間以上かけて読み終えたのですが、一気に読んでしまうべき本だったように思います。
不思議な話です。
背景になる「迷子ツアー」は、ツアー中に行方不明になった一人を異国に取り残すことで、同行したメンバーに不思議な、何かを置き忘れたような感覚を残させるための企画です。中島さんは同じような仕掛けを物語の中に取り入れているようです。登場人物の記憶がすれ違い、何が真実か判らない。ミステリーっぽくもあるのですが、謎解きが主題ではなく、むしろその事によってどこか不思議な感覚を残すことを目的にしているようです。
返還前の胡散臭さのある香港を舞台にした答えの無い物語です。 -
Posted by ブクログ
田山花袋を研究しているデイブは
学会を理由に年下の恋人エミを追って日本まで来てしまった。
しかしエミにはユウキという同年代の恋人もいた。
一方エミの曽祖父であるウメキチはヘルパーのイズミに助けてもらいつつ
戦時中一緒に逃げたツタ子を思い出してやまない。
「布団の打ち直し」に沿って描かれた三角関係たち。
カバー装画:武藤良子 カバーデザイン:藤田知子
恋愛矢印がいろいろな方向を向いていて結構複雑な関係なのに
すんなりと人物図が掴めます。
キャラとしてはイズミが一番好きかなぁ。
ざっくりしているようでちゃんと考えているところとか。
解説にもあったけれど本当に女が強い物語です。
『布団』を読んだ -
Posted by ブクログ
今週は会社の展示会でずっと有明に出張。最終日の家族向けのイベントには多くの親子連れが朝早くから来られたけれど、私なんて子供にこんなことをしてやったことが無く、皆さん偉いなぁって感心して見てました。
で、嫁さんにリクエストされ買ってきたこの本、夫婦と祖母、引篭りの長男の4人が静かに暮らす家庭に、嫁いだ娘二人がそれぞれ訳ありで複数になって舞い戻り、期せずして4世代同居の大家族になってしまっての物語。
父、母、祖母、息子、娘、孫、娘婿、出入りの介護士…、それぞれの視点から描かれるそれぞれの事情と有り様。空いた時間でサクサクと読めて、時にシニカル、巧いです。
ただ、この家族、春子さんのお友達が言うよう -
Posted by ブクログ
昭和の時代が終わりを告げ、年号が平成と改められ、日本はバブル景気真っ只中。ベルリンの壁が崩壊し、天安門事件が起こった1989年、ある旅行会社が企画した香港ツアーで、ひとりの青年が消えました。
それから十数年の歳月が流れ去り、そんな青年がいたことすら、誰も覚えていませんでした。が、あることがきっかけで、同じツアーの参加者や添乗員など、青年とささやかな関わりを持った人々の記憶に、ふと彼のことが甦ったのです。けれど、その記憶が変なのです。なんだかぼんやり霞んでいたり、肝心要の部分が欠落していたり、当時青年が一方的に想いを寄せていた女性においては、記憶そのものが書き換えられていたりして・・・。
青年に