藤井誠二のレビュー一覧
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人を殺した罪は償うことができるのか。本書はそれをテーマにした内容だ。「贖罪」という言葉で直ぐに思い浮かぶのは、人類が犯した罪をあがなうために自らが犠牲となったイエス・キリストの姿だ。私はキリスト教徒ではないが、誰もが十字架にかけられたキリストの姿を教会などで見たことはあるだろう。また凶悪犯罪を犯した者が服役中や出所後に綴った手紙や書籍を見たことのある方もいるだろう。罪を償うとは、善行を行ったり、金銭的に(特に被害者に対して)賠償したり、法によって服役し労働する、その対価を弁護士などを経由して寄付するなど、やり方は様々である。だが本質的に他人を傷つけたり、命を奪ってしまった事自体が赦される事があるのか。本書は殺人という重大犯罪を犯した加害者とのやり取りの中で、それが可能であるかを犯罪と加害者を追い続ける筆者が考察する内容となっている。読み始めは誰しも(筆をとった筆者でさえも)人の命を奪うという人として最も罪深い所業に対して、被害者の家族や友人の悲しみを思えば、それは不可能だろうと感じるに違いない。だが、本書を読み進めていく中で加害者が塀の中で感じた事を包み隠さず述べていく内容を理解してくると、償うという言葉の定義やその意味について、自分なりの見解が確立していく事がわかる。
その可否以前に人を殺めること、殺めた人間が何を思い続けるか。筆者とやりとりする加害者は獄中で多くの書籍を読み、考え方やそれを表現(筆者との手紙のやり取りを含め)していく中で、何とかその答えを探し出そうとする姿。読んでいる自分(私自身)は勿論同じ経験をした訳ではないから、全く同じ気持ちになる事は困難だが、加害者自身が何とかそれを言葉で表現しようとする努力と、紡ぎ出した生の言葉から伝わってくる苦しみは、徐々に読者の心の中に様々な疑問や理解を生み出してくる事は間違いない。
本書の中で「謝罪されても私たちは何も救われない。謝罪したというあなたが救われるだけ」という被害者家族の言葉も、逆の立場に立たされた人々の心理を理解する上で響いてくる言葉だ。加害者・被害者いずれの言葉にも、拭い去ることの出来ない深い傷や痛みがある事が伝わってくる。勿論、私もその様な状況を生み出した加害者を赦して良いとは思わない。だからこそ、そうした状況を生み出した社会や人間そのものに対して、繰り返し何故という言葉をぶつけて理由を辿りたくなる。人が人を傷つけるという行為、その背景にある社会課題、それを表出させるきっかけ。そしてその後に生み出される大きな傷跡と心の受け止め方。
本書に明確な結論があるとは言えない。だが贖罪という事の意味を読み手に深く考えさせる、その機会をくれる一冊である。 -
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沖縄の歴史と今を知りたくて現沖縄県知事デニー氏のことも知りたいと思って手にした本。沖縄について佐野眞一氏のルポに心揺さぶられたけれど、この著者も客観的にでも優しい視点で沖縄についてデニー氏について書いている。沖縄アンダーグラウンドは読んでいたがこの著者の他の本も読みたい。
政治的なことについては置いといて、沖縄タレントから県知事になった人の幼少期や青春期。デニーさん愛情深く育てられたんだなと思いました。
それとは別に、ずっと前の知事西銘順治が沖縄の心とは?の問いにヤマトンチューになりたくて、なり切れない心だろうと言ったということにハッとしました。 -
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藤井誠二『沖縄アンダーグラウンド 売春街を生きた者たち』集英社文庫。
2010年代の始めに浄化運動により消滅した沖縄県の売春街の記憶に迫ったノンフィクション。
戦後の長き間、米軍により支配され続けた沖縄県。米軍によるレイプなどの性犯罪や性病の蔓延を緩和するために造られた色街。当時は、稼ぐ手立てが無かったり、借金のために売春に手を染めざるを得なかった女性も多く居たようだ。支配されながら生きるために身を削った女性たち。
やがて、時代は変わり、それでも色街はスタイルを変えながら生き残るが、時代の要請により消滅を余儀無くされた。色街が消えた今もなお米軍が沖縄県に留まり、米軍による性犯罪は無くならない。
本体価格900円
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購入済み
現代社会の闇
クソ親や無関心な世間、保身しか考えない若者。この日本の現代社会をどう変えていったらいいのか。落ちるとこまで落ちた人間の方が国はたすけてくれる。一方で被害者達はいつまで経っても報われない。日本は残念な国になってしまった。
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「日本は沖縄を犠牲に発展してきた」
沖縄が日本に返還されてから、あと数年で50年が経過します。
僕が生まれる少し前にはまだアメリカに属していたという事がとても不思議です。
関東地方で生まれ育ってきた僕から見ると、沖縄はとてもおおらかで楽しそうで羨ましいなあと単純に思っていました。青い空青い海、皆踊って歌って・・・。子供頃はそんな風に思っていたし、今でも頭の中にぼんやりそういうイメージが有ります。
本書は沖縄が第二次世界大戦終結から、産業も無い中でどれだけ女性の稼ぐドルに依存して発展してきたのか。米軍兵からどれだけの性暴力や殺人行為を受けてきたのか。色町という場所の存在から沖縄の戦後75年を見つめる本です。
正直興味本位にセンセーショナルな内容を想像して読み始めましたが、社会派で硬派で、且つしっかり沖縄というものと向き合った本になっております。
沖縄の人はもしかしたらこういう本を書かれるのは嫌かもしれない。でも、日本はこういう事で沖縄に色々な事を背負わせて、自己責任の名の元に知らんぷりしようとしているのではないでしょうか。それを直視させる本だと思います。
真栄原、吉原という2台色町を舞台にして、沖縄の裏戦後史を辿り、今この2つの町が無くなっていく姿を紙面に残しておきたいという気持ちが伝わってきます。
しかし、この町が治安を悪くしているのも確かであり、そこで住んで生きる糧を得ている人の為にその街を残すことはノスタルジーでしか無いとも感じます。
僕は半年ほど自転車で旅をしていたのですが、奄美大島と沖縄のご老人たちは僕にこんこんと、日本政府がいかに奄美、沖縄をないがしろにしてきたか聞かされました。
とても辛い話で、聞かされた時には嫌で嫌で仕方が有りませんでしたが、今思えば聞かせてもらってよかったとも思います。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ沖縄に降り立てば灼熱の太陽と南国特有の熱気そして「なんくるないさ」と大らかな人々が出迎えてくれる。しかしそこは約19万人もの命が奪われた太平洋戦争唯一の国内戦地であり、1972年まではヴィザとパスポートを必要としたアメリカであった。構造的矛盾が生み出した歪と闇の緩衝機関が「真栄原新街」を代表とする特飲街であった。
本作品はその沖縄の特飲街を取材対象としたルポタージュであるがとにかく内容が濃い。「売春」がテーマだけに負のオーラが強く読んでる側の体力が削られるが、しかしそれに対価する内容だ。特飲街の歴史的生い立ちから従事した人々の生活と今昔、当時のメディアの捉え方など、あらゆる角度から「売春街とは何であったか」を解釈しようと試みる。
困窮した生活のなかに倫理性を要求するのは酷であろうし「当時」を今の価値観で評価するのはフェアではないだろうが、それにしても「性の防波堤」という考え方は衝撃的だ。その正否には多少の疑義はありつつも国策的側面から「多少の犠牲はやむなし」との判断のもと、特飲街に生きる人々の暮らしにも多少の享楽はあったであろうが、我々の生活はそうした矛盾が瓦解した結果に成り立っていることは理解しておくべきだろう。文字でこれだけの情報量であるから、より感じる為に本書内で紹介されていた『モトシンカカランヌー』を観てみようと思った。