最相葉月のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
下巻はSFの旗手としての星新一から、ショートショートの名手星新一となり、やがてショートショートを1001作品書くという呪縛にとりつかれたある一人の男性の姿が現れてくる。
読んでみて、私が産まれた頃にはもうSFは普通に娯楽の一環としてアリだったのだが、SFが市民権を得るまでにはここまでの苦労があったのかと驚いた。
推理小説、かつては探偵小説と呼ばれたジャンルもSFより前にその課程を経ている。
SFの旗手としてもてはやされ、ショートショートと言えば星新一と言われ、子供から大人まで誰にでも読まれる作家となる。場の中心におり、いつも面白いことを言う。けれども彼の心は誰にも開かれておらず、そして表向きの顔を辞めることは出来ない。
同時代に生きていた手塚治虫が一生マンガの第一線に立とうとしたように、星新一は普遍的に楽しまれるショートショートの名手であろうとした。
1アイディアで長編が書けるようなネタをショートショートとして出し続けてきた作家というのは、ものすごい。なんだかこう魂を削って、命を削っているような気がする。
すごかった。
けれども、私が今後星新一のショートショートを読むときに、こんなことは関係なく作品を楽しむような気がする。それはそれですごい。 -
Posted by ブクログ
ショートショートの神様と呼ばれる星新一。いま大人である人のなかで、彼のショートショートを1つも読んでいない人は居ないのでは無かろうか。
星製薬の社長であったことは知っており、展覧会で直筆の下書きを見たことがある。作品の軽やかさに比べると、ずいぶんと神経質だと感じた記憶がある。
文庫で上下巻となった上巻は、星新一ではなく、本名の星親一であった時代のお話。父親の星一の若きころから親一が産まれ、育つ。その背景には第一次世界大戦と第二次世界大戦の影響が色濃い。
こういう時代を生き抜いた父を持ち、その星製薬を継ぐこととなった星親一はいかにして作家の星新一となったのか。下巻が楽しみである。 -
Posted by ブクログ
私も15歳のときに読んだ「絶対音感」でノンフィクションの世界に華々しくデビューした著者の現時点での最新作となる本作は、<心の病>をテーマに、精神医学や心理学などがどのように発展してきて、どう人々の心を癒すのかについて書かれたルポルタージュである。
本書では、著者自らが両親の介護と死去に際して、自身も心の病を抱えていることを自覚しながら、自らも箱庭療法や絵画療法などを受けることで、深く治療の実態に迫っていく様子は強い説得力がある。5年間にも及ぶ取材と自らの治療を踏まえて書かれた本作は、そうした生々しい実態がわかりやすく描かれているともに、かつての治療では患者が喋りたくなければ10分間でも沈黙を続けられるような鷹揚な雰囲気があったが、近年の患者数の増大とそれに追いついていない医師・セラピストの人員数により、そうした治療が今や望めない等の問題提起がなされる。
個人的に強く関心を持ったのは、独自の絵画療法である風景構成法を生み出した精神科医の大家、中井久夫へのインタビューの中で、言語を操ることで、必然的に因果関係を作ってしまうという人間の根源的欲求について触れている点であった。
「言語は因果関係からなかなか抜け出せないのですね。因果関係を作ってしまうのはフィクションであり、治療を誤らせ、停滞させる、膠着させると考えられても当然だと思います。河合隼雄先生と交わした会話で、いい治療的会話の中に、脱因果的志向という条件を挙げたら多いに賛成していただけた。つまり因果論を表に出すな」ということです」(p366~367) -
Posted by ブクログ
この本を読んで、精神医学についてなにかがわかったとか理解したという感じではないけれど、読みものとしておもしろかった。なんだか読後感がすがすがしいような。
絵画療法を実際おこなったときの記録を読んで、なぜだかすごく心やすまるというか、心がひろがるような、静かに感動するような気がした。著者がセラピスト役、絵画療法の第一人者である精神科医中井久夫氏がクライアント役、となって、絵を描いたときの記録が、なんでもないやりとりのように読めるんだけど、中井氏のひとことひとことがなんだかとてもよくて。口絵に載っている、そのときの絵もとてもよくて。
河合隼雄氏もたびたび登場する。
どのセラピストも、治すとかそういうことじゃなくって、クライアントに寄り添うというような姿勢なのが心に残った。
クライアントの症状が解消されればうれしいけれど、解消されなくてもいい、というような言葉も印象的だった。 -
Posted by ブクログ
数年前の『龍馬伝』で話題になった坂本龍馬は、その二面性が魅力である。善人でもあり悪人でもあるという二面性だ。
そして、星新一はいくつもの二面性を持っている。まず、理系であり、作家である。だからこそSF作家になれた。
そして、自由奔放でありながら、完璧主義である。〆切の前にきっちり原稿を書き上げる完璧主義である。
さらに、家の顔と外の顔が違う。気さくなように見えて、人を信用しなかった。
もともとは金持ちのおぼっちゃんである。将来は星製薬を継ぐ予定だった。
東大大学院の同級生は日本を引っ張るリーダーたちだったろう。同級生たちに負けたくないというプライドもあったのではないか。
完璧主義でプライドの高い星新一は、売れることも賞を取ることも求めた。 -
ナグネ 中国朝鮮族の友と日本
- カート
-
試し読み
-
ナグネ 中国朝鮮族の友と日本
- カート
-
試し読み
Posted by ブクログ
私たちのすぐそばに暮らす
外国の友がいる
はたして 私たちは
どれほど 彼(彼女)のことを知っているだろう
「目の前にいるたった一人の中国人のことすらしらない。いや、これまで知うとすらしなかったではないか。その無関心は、ふだん苦々しく思っている一部の偏見や差別的言動と実は紙一重なのではないか。」
最相さんの言葉に
どきっ と させられてしまう
自分のすぐそばにいる
異国からの友のことを
思わず思ってしまった
きっと
そんなことを
意識するとこから
国際理解
とか
異文化交流
とかの
言葉が初めて言えるのだと思う
先ずは
ひとりから…
始めたい -
Posted by ブクログ
実によく歩き回った作品である。
なにげなく使っている言葉が、実はかなり深い歴史を持っていた。
「絶対音感」;その響きは、何かを想像させる。
五島みどりのおっかけストーリーを織り交ぜながら、
日本の「絶対音感」をもつ人の多いことについての考察
ヤマハそしてそのさきがけたる人物像。
「絶対音感」が、なくても、ある程度の演奏家になれる。
しかし、日本で絶対音感をもつことによって、
国によって、絶対音感が違ってくる。
ラ音 440ヘルツ
音というのは、ヘルツなんだよね。
○ピアノの平均率で出来ている純正律の音程
○440ヘルツ、442ヘルツ
音とは人と人の間の空間をどれだけ揺り動かすことが出来るか
無意識、あたらしいもの、自分の考えていること
「音響という物理現象が情動という心理現象へ移る接点」
「プロになるということは、
川の向こう岸に立つということです。
好きでないと出来ないけれど、
好きだけでは絶対出来ない。
誰にも頼ることは出来ない。
ソロの演奏家なら、一人で多くの人の前に
裸で立つ勇気を持っていない限りやっていけない。
音を紡ぎ、自分を表現できる音楽家って
幸せですかねといわれますが、
紡ぐ音なんて見えない、どこにもない。
その音を探すこと頃から始めるわけだから
途方に暮れるのです。
少しも幸せではないです。
だけど、最終的にはなにかの幸せが祈られていて、
そのために生きていくのでしょうね。」
涙は心臓より出ずるものにして脳よりにあらず。
科学論 レオナルド・ダ・ヴィンチ