長谷川宏のレビュー一覧

  • 哲学史講義 I

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    私は今まで哲学を学ぶにつけてある重大なことを蔑ろにしてきたことを告白せねばならない。それというのは、「最初の哲学はもっともまずしく、もっとも抽象的」だということ、或いは「哲学の発展ということを考えれば、古代の哲学的教養がいまだ把握するに至っていない概念内容をもちだしてきて、古代哲学にそれがないと非難するようなことは許されない」ということ、そして、「深い明確な概念を所持する今日の精神に、以前の哲学が満足をあたえることはありえない。」ということである。
    これは、私がプラトン、ヒューム、ルソーといった名だたる哲学史の名雄達を相手にした時に、その名声と比較した時の驚愕の、新鮮の度合いの相対的少なさを感

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    2025年08月03日
  • 哲学史講義 II

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    ソクラテスからアリストテレスまでの哲学史をヘーゲルの視点から振り返る。
    肯定と否定を内包し肥大化していく人間の精神史を、古代ギリシャの哲学形成の潮流に重ね合わせながら講義を展開していく。
    普遍と特殊を擦り合わせながら成長していく精神。「思考」という最上の手段を手にした人間という種に対する礼賛。
    アリストテレスの章は特に面白かった。


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    2025年07月27日
  • 哲学史講義 I

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    ヘーゲルの俺的哲学史講義を通して俺の哲学も混ぜた「俺本」
    ソクラテス前のギリシャ哲学者たちの思考の型を読み取れる。
    現在の常識とは異なる物の考え方を学ぶことは現在を客観的に見つめ直す契機になる。
    ここまで堂々と哲学を語れるヘーゲルに当時の人々が厚い信頼を向けた気持ちがわかった気がする。自信満々だよね、ヘーゲルは、

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    2025年07月13日
  • 幸福とは何か ソクラテスからアラン、ラッセルまで

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     本を読みながら、印象に残った箇所、覚えておきたい箇所をノートに写すようにしているのだけれど、この本は、全部写したくなるくらい最初から最後まで感動的な一冊だった。クセノフォン、エピクロス、セネカなど古代ギリシャから始まり、ベーコン、デカルト、ヒュームなど西洋近代を経て、アダム・スミス、カント、アラン、ラッセルの幸福論を復習っていく。時代とともに人々が「幸福」という観念に見出すものが移り変わることを学び、それを経て、2023年の今、どういう状態が「幸福」と言えるのかを考察する。
     最も印象に残ったのは本の後半、「幸福」と「自由」、「幸福」と「思考」あるいは「理論」がそれぞれ相反する観念であるとい

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    2023年05月23日
  • 幸福とは何か ソクラテスからアラン、ラッセルまで

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    本書はヘーゲルの本の翻訳などで知られている長谷川氏による「幸福論」の概説です。本書では、ソクラテスから始まり、アリストテレス、セネカ、そしてヒューム、アダム・スミス、ベンサムを経て、20世紀のアラン、ラッセルにいたる哲学者が幸福をどう捉えていたか、を解説しつつ、実は長谷川氏本人の「幸福論」も展開されている本です。結論から言えば非常に満足していますし、長谷川氏が冒頭に述べている「静かで平穏で身近」なところに幸せはある、という主張に100%同意できました。しかし、めまぐるしく外部環境が変化し、競争や効率性に対する強迫観念が渦巻いている現代社会に生きる我々からすれば、「静かで平穏で身近なところにある

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    2023年05月02日
  • 新しいヘーゲル

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     ヘーゲル「精神現象学」にトライするための前段として購入。著者は言わずと知れたヘーゲル研究の泰斗。本書は著者が「精神現象学」を訳出する前年に出版されている(ただし僕が読もうと考えているのは熊野純一のちくま学芸文庫版。やはり時点が新しいのと、なんと言っても嵩張らないサイズであるが大きい)。内容は非常に平易で読みやすく、今となってはややストレートにすぎる議論もあるが、単純に面白くて思わず一気読み。精神現象学はもう別に読まなくてもいいかも、とすら思ったほど(いかんいかん)。 
     まず著者が主張するのは、ヘーゲルの難解さはヘーゲル自身の著作にあるのではなく、特に日本の研究者に救いがたく根差す教養主義、

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    2021年08月25日
  • 新しいヘーゲル

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    ヘーゲルセレクションを読んでも全く理解できなかったので購入。
    弁証法とヘーゲルの思想に底流するものを理解するには非常に良い本。適当に正反合とかをしたり顔で使う前に、まずはこれを読むと良い。
    ビジネスでアウフヘーベンとかそういう系の語を安易に使う前に、ぜひ読んでおきたい本。

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    2021年06月04日
  • 新しいヘーゲル

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    名著である。難解な哲学の中でも難解と言われるヘーゲル哲学を理解できる形で提出されている。
    『現実的なものが理性的であり、理性的なものが現実的である。』
    ヘーゲルの哲学は、社会や現実、生活世界に開かれており、その現実との格闘において、精神は成長していく。

    ますます、ヘーゲル哲学に興味を抱いた。

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    2021年03月09日
  • 新しいヘーゲル

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    よくまとまってるし、面白いと思う!

    けど、そもそものヘーゲル自身の哲学にどうしても興味がもてなかった、、、

    次にいこう!人生は限られてる

    ドイツ観念論とは、なんかうまく馴染めなかった

    かなりの部分が、下手くそな日本語訳の謎の言葉に辟易した、ということにもあり、そういう哲学研究の歴史に腹が立つが、そこのところがこの本の冒頭にあって嬉しかった

    そうそう、もう少し日本の権威主義的なドイツ観念論が漂白されていくとよいのになーと思う

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    2021年02月12日
  • 幸福とは何か ソクラテスからアラン、ラッセルまで

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    哲学における「幸福」とは何かを、時代を追って振り返りつつ、私たちにとっての幸福を考える好著。

    幸福論と西洋哲学の相性の悪さが、内容の豊穣さを生んでいる。

    エッセイとして、静かに内省的に読める。自分の人生を振り返る糧になる。

    222pの「幸福になる義務」の節、そして、終論は味わい深い。

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    2020年12月11日
  • 幸福とは何か ソクラテスからアラン、ラッセルまで

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    西洋を中心に、単純な「快・不快」では割り切れない「幸・不幸」の歴史について。

    自己の捉え方の移り変わりとともに幸福についての考えも変わっていくのがよくわかりたのしい。

    近代の幸福論はヒューム『人間本性論』から始まる。感覚、印象、観念、知性、感情、道徳、行為、経験の読みやすい解説。

    そしてアダム・スミス、ベンサム、ラッセル。

    ラッセルのパラドックスと論理学でしか知らなかったラッセルに、『幸福論』という著書があってちょっと驚いたというか結構ラッセルのところが読み応えがあった。

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    2020年07月01日
  • 経済学・哲学草稿

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    「経済学・哲学草稿」は、昔、岩波文庫を買ったことがあり、長い間――数十年間(笑)――持っていたのだが、結局、中をチラと覗いたっきり、1ページも読まないで棄ててしまった。

    なぜ読まなかったかといえば、もちろん難しかったから。

    いや、1ページも読んでないんで、難しかったかどうかもわからん。
    難しそうに感じたからというのが正確か。なんか漢字も多かったし。

    そして実際読んでもやっぱり難しかったはずである。
    なんせマルクスの本ですから。

    ところで、長谷川宏という人の名前は、ヘーゲルをわかりやすく訳した人らしいということをどこかで聞いていて、光文社古典新訳文庫もなかなか粒のそろったラインナップで、

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    2020年04月19日
  • 日本思想史の可能性

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    天皇制について刺激的な論考があって読みごたえがあった。ただし、日本思想史の課題としては天皇制しかないという印象も受ける。それ以外にもテーマはいろいろあるのではないか。

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    2019年05月23日
  • 経済学・哲学草稿

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    マルクスが26歳の時に書き著した草案。

    全体を通して感じることは、
    労働者の隷属状態に対しての批判。


    これが書かれたのは1844年。
    産業革命は1700年代後半からイギリスでおこっていった。

    マルクスはドイツ人だ。
    この時にはドイツにも産業革命の波は届いていただろう。

    波とは、工業化の波である。
    前提として意識しておきたいのは、マルクスの批判しているのはこの時代の主産業が工業であるということだ。

    工場というのは、
    なるだけ24時間フル稼働させている方が工場にとって利益が出る構造になっている。

    すなわち、労働者にとっての長時間労働が工場主にとっての利益につながる。

    自然と労働者を

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    2019年03月26日
  • 新しいヘーゲル

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    近代が持つ様々な政治的、文化的、社会的イメージと、ヘーゲルの生み出した思想とがいかに重なっているかが分かる。
    現代においても学校や職場など建前上は近代主義の思想に満ち溢れている。近代的理性を持つ自由な意思の集合体が、素晴らしい社会や国家を形成するという。
    この建前が存在しなくなると、選挙制度すら足元を揺さぶられそうだ。
    いくらニーチェやキルケゴールやハイデガーたちが後世に現れて批判を繰り返そうとも、近代という思想はそれほど堅牢な思想だということだ。
    現在の社会制度を見る限り、根本的に取って代わる思想は存在しない。


    普段の身の回りの生活の影にヘーゲルがちらついて見えるようになった。

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    2013年08月01日
  • 新しいヘーゲル

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    在野のヘーゲル研究第一人者の手によるヘーゲルの入門書。冒頭でのヘーゲルに限らないアカデミズムに対する批判は痛快ですが、それでもやっぱり難しいものは難しいですよね。特に、『精神現象学』、『哲学史講義』、『歴史哲学講義』、『美学講義』あたりに関心のある方にはお勧めです。

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    2012年12月29日
  • 経済学・哲学草稿

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    読みやすさに定評のある長谷川訳ではあるが、ついに読み通すことができたという感慨がある。
    経済学のほうはたいして見るべきことはない。経済学史の授業で習うような事がわかっていればよいのだろう。
    面白いのは、マルクスの疎外、外化の概念や類的存在の概念が説明されているところと、さらに面白いヘーゲル批判である。
    マルクスのヘーゲル批判は、まず、マルクスは人間と生活手段を非理性的なもの、ヘーゲルは理性的になりうるものと考えていたという前提の違いから始まる。そしてマルクスは、ヘーゲルの論は意識に始まり精神で終わり、理念の域を出ないものであると批判する。さらに進んで価値の点で、ヘーゲルの考える人間は神、絶対知

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    2012年03月30日
  • 高校生のための哲学入門

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    著書は、「哲学」や「思想」は「個人の人生」と、どのように関わるのかを記す。答えは、「人生を楽しむ」ためというのが本書の主張である。
    著者は、塾に通う子供たちと山奥の合宿や演劇祭を行い、その子供の親たちと付き合い、PTAや地域の活動など、ながい模索を経て、「まわりに気兼ねしないで自分の考えをきちんと提示する魅力的な人物」や「一人の人間の個性的な生き方を支えるに足る透明な知と思考」に出合う(p208参照)。「人生を楽しむ」哲学者・長谷川宏とその人の魅力を髣髴とさせる一節。

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    2011年01月11日
  • 経済学・哲学草稿

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    岩波版の「経済学・哲学草稿」を一度通読した限りでは、さっぱりわからない事が多かったものの、光文社版では非常にわかり易い文章となっていた。
    マルクスの文章はまだ岩波版が多勢を占めているが、数少ない光文社版であることからも、初めてマルクスを読む人はこれがいいかもしれない。

    個人的には、経済学的思索の部分より哲学的思索の部分のほうが興味を持てた。例えばマルクスは、「資本主義のもとでは、労働者が作った商品が自分のものにならないことに『疎外』がある」と云った。元々労働は自分の為にあるのに、他人に強制されることは非人間的で非自然的である、ということだ。

    その疎外を克服するところに、社会主義があり

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    2010年11月01日
  • 高校生のための哲学入門

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    [ 内容 ]
    「自分」とは、「社会」とは。
    私たちの「生きにくさ」はどこから来ているのか。
    難解な語を排し、日常の言葉で綴る待望の哲学入門。

    [ 目次 ]
    第1章 自分と向き合う
    第2章 人と交わる
    第3章 社会の目
    第4章 遊ぶ
    第5章 老いと死
    第6章 芸術を楽しむ
    第7章 宗教の遠さと近さ
    第8章 知と思考の力

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    2014年10月28日