あらすじ
最大の哲学者、ヘーゲルによる哲学史の決定的名著。大河のように律動、変遷する哲学のドラマ、全四巻改訳決定版。『I』では哲学史、東洋、古代ギリシアの哲学を収録。
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Posted by ブクログ
私は今まで哲学を学ぶにつけてある重大なことを蔑ろにしてきたことを告白せねばならない。それというのは、「最初の哲学はもっともまずしく、もっとも抽象的」だということ、或いは「哲学の発展ということを考えれば、古代の哲学的教養がいまだ把握するに至っていない概念内容をもちだしてきて、古代哲学にそれがないと非難するようなことは許されない」ということ、そして、「深い明確な概念を所持する今日の精神に、以前の哲学が満足をあたえることはありえない。」ということである。
これは、私がプラトン、ヒューム、ルソーといった名だたる哲学史の名雄達を相手にした時に、その名声と比較した時の驚愕の、新鮮の度合いの相対的少なさを感じ得ないことへの一定の答えを提示していると言えよう。
或いは、我々が哲学について語るときに、ついつい先の時代の理論を後の時代に発展させたという事実を忘れてしまい、先の時代の言葉に後の時代の意味を載せて過大に評価・感心してしまうことへの警告とも捉えることができよう。(認識がもっと発展したときに得られるような満足を、それ以前の哲学に求めるわけにはいかない)
ただ、このことはヘーゲルの言う「真理の発展」の当然の帰結であるからして、全くもって過去の哲学を軽視することと同義ではないし、むしろ現存する哲学が過去の哲学から発展していることを踏まえて、より慎重に過去の哲学に向き合うべきであることを表している。