雫井脩介のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
ドラマ化もされた雫井脩介の作。書店のおすすめコーナーで知り、なんとなく気になって手に取りました。
かつて殺人事件で無罪判決を下した元裁判官、梶間勲宅の隣に、その被疑者であった武内真伍が引っ越してきたことによって始まる本作。善意や親切心を梶間家に向けながら日々を過ごす武内。梶間家の人々は徐々に武内に心を開いていきます。そこへかつての殺人事件の目撃者である池本が武内の引越し先を知り、近辺に姿を現すようになってから不可解な事件が次々と起こり始めます。
読んでいて付きまとう生あたたかさ、言いようのないぬるい空気感、見えない顔、つかみどころのない糸、印象によって変わる人間模様……その一つひとつの不快さを抱えながらも、次の展開を求める手が止まりませんでした。最後の場面で見られる狂気は、それまでに他人事と感じていた梶間勲に燻っていた感情そのもののように見えました。 -
Posted by ブクログ
巻島はニュース番組に出演しバッドマンを名乗る犯人に呼びかける。捜査本部にはニセモノを含めて多くの手紙が届き始める。その中から本物を選り分け、犯人に呼びかけるが、その姿勢が犯人寄りだと世間や警察内から非難を受ける。一方、キャリアの植草課長は私情を交えて情報をライバル番組にリークする。そして巻島は一か八かの賭けに出る。テレビを通して巻島は犯人に言い放つ。「我々はようやくお前を追い詰めた」そして宣伝コピーにも使われたセリフ「今夜は震えて眠れ」
犯人とのやり取りはテレビ放送での呼びかけと犯人からの手紙となるから緊迫感はあまりない。むしろ、クライマックスまで引っ張るのは、姑息な動きをする警察上司や視聴率ばかり気にするマスコミ、そこに左右される世論、被害者家族の気持ち…など巻島との葛藤が話を盛り上げる。
巻島はそれらを静かに飲み込んで、最後にドバッと吐き出す。もっと犯人逮捕に焦点を当てて派手に最高潮に持ってって欲しい気もしたが、これは警察小説なのである。全体のバランスを取るリアルさが大事なのだ。
さすが大藪春彦賞。面白かった。 -
Posted by ブクログ
6年前の誘拐事件の捜査でミスを犯し全責任を負わされた神奈川県警の巻島史彦警視。記者会見でも失態を演じて足柄署の特別捜査官に左遷される。特命係のようなポジションだ。そして6年後川崎で起きる連続児童殺害事件。行き詰まる捜査を打開すべくテレビニュースに警察が出演して市民に情報提供を呼びかけながら犯人と対峙する荒技に踏みきることとなった。そしてその大役に巻島が指名された。
まだ上巻ですからね。この6年前の誘拐事件の様子。メンツを守りミスを部下個人に押し付ける警察組織、警察を挑発し被害者家族との分断を煽り話題作りをするマスコミ、感情抑制できない被害者家族…。胸糞悪い描写である。作者としては読者に後半スカッとさせるためには主役以外は悪者として描く。そして主役を徹底して不条理なほど虐める。なんとも納得いかないのだが、ウケるエンタメ小説の書き方である。
そして6年が経って巻島が戻ってくる。左遷された足柄署で高い検挙率を誇る。警官らしからぬ長髪、以前とは違う冷静でふてぶてしい印象。組織を、マスコミを、そして犯人をやっつけてくれそうな頼もしい雰囲気になって帰って来た!この巻島を映画ではトヨエツが演じたのか!しかし6年前にミスを背負わせた上司で劇場型捜査を発案し巻島を指名した曽根本部長。そしてその甥で今回の捜査で巻島の直属上司となるキャリア組の植草課長。まだ若いゆえに植草が甘ちゃんで余計なことしそうな匂いぷんぷん。まるで絵に描いたようなキャストだ。
そして最初のニュース放送が始まる。ここで上巻は終わる。下巻はグルングルン進むんだろうな。