坂崎かおるのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ芥川賞候補作家の短編集。この本の冒頭作は日本推理作家協会賞短編部門受賞作というのだから、才能あふれる人なんだろうとは思ったが、それ以上に面白い小説を書く作家さんでとても気に入った。
6編の短編が収録されているが、全てテイストが違って、しかも捨て作なし。短編小説の醍醐味が存分に詰まっていて、1作読むごとに満足感が半端ない、それこそ下手な長編小説読むよりよほど密度が濃い。それなのに読みやすいのは文章が上手いんだろうな。
表紙のイラストも雰囲気が出てて良かった。いや、またしても気になる作家さんを見つけてしまった。
前2作も読んでみようと思う。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ短編が6作品載っている。
どの作品もとても面白かった。主人公の性格や年齢がバラバラなのが読んでいて全く飽きなかった。
表紙には、それぞれの物語に関係した物が描いてあって、読んだ後や途中にふと目に入ると微笑ましく思った。
【あらすじ】
6作品の中の最初のお話を紹介。
「ベルを鳴らして」
タイプライターを極める少女(シュウコ)のお話。女性がバリバリ働くのが良しとされない時代。シュウコはタイプライターの学校で「先生」と出会う。先生にライバル意識を持ち勝負を挑むも完敗。シュウコは先生に淡い思いを抱くが、先生が気にかけていたのはシュウコではなく、、、
【感想】
「ベルを鳴らして」
悲しみの優しさの物 -
Posted by ブクログ
ネタバレまず、不思議で、ちょっと不気味な表紙絵に惹かれた。
クラゲのような頭を持つおんなのこ。急須の頭に鳥の羽根と足を持つ生きもの。空を飛ぶ飛行機のような魚…。
ファンタジックな世界観に、ファンタジーだと思う方もいらっしゃると思うが、作者は芥川賞候補作家で、この短編集の中の冒頭の作品『ベルを鳴らして』は、日本推理作家協会賞短編部門受賞作品である。
6編の短編、いづれも年齢も出自も生きる環境も違う女性が語り手で、女性同士の関係性が重要なテーマとしてある。
友だちのようなもの、だったり、母と娘だったり、姉と妹だったり、店員と客だったり。
よく、こんなにカラフルでグラデーションのある関係を微細に書けるなと感 -
Posted by ブクログ
ネタバレ静かで目には見えないけど、確かにある感情が力強い。すごい。
「ベルを鳴らして」
タイプライターの先生と、彼が守りたかった秘密が静かに浮き上がってきて心が震えた。自分の存在を消そうとする先生と、彼の存在を追い続けるシュウコの勝負は、初めてタイプ勝負をしたときから決まっていたのかもしれないと感じた。次の行へ移るときに鳴るベルが象徴的に響く。
「イン・ザ・ヘブン」
テンポよくストーリーが展開していく。エリサたちが語る本からの引用セリフはどこか浮いていて、地獄の中で手を取り合うカミラとの絆だけが現実と結びついているような不思議な感覚。
「名前をつけてやる」
とても好き。朝世とすみれの関係性には名 -
Posted by ブクログ
衝撃的に面白かった。
完全にファンタジーなのに、どこかで実際にあった出来事なのかと錯覚してしまう。事実とフィクションの絡め方の塩梅がとてもうまい。
海外が舞台のお話は翻訳小説を読んでいるような構成と文章。
日本のお話は感情表現がとてもリアル。書き分け天才的!!
読み始めはどこにもないセピア色の不思議世界を描く感じかな(小川洋子さんのような)と思ったが、様々な色の世界を描いていてすべての物語がとてもよかった。
全体に漂うもの悲しさも大変好み。
久しぶりにお気に入りの作家さんに出会えた。
短編集
ニューヨークの魔女
ファーサイド
リトル・アーカイブス
リモート
私のつまと私のはは
あーちゃんはか -
Posted by ブクログ
「噓つき姫」で一躍有名となった坂崎かおるの最新刊。文學界2月号掲載の作品がもう出版されることから期待が大きいことが伺える。本には赤い帯が付いていて、芥川賞候補作と書かれている。御本人のnoteを見たけど、この様な地味な作品が候補作にノミネートされたのを意外だと感じているようだ、謙遜かもしれないけど。地味、確かに奇抜な文体でもなく、社会に切り込むといった意欲作という訳でもない、もう至って落ち着いた作品。登場人物が激昂する場面もなく、最後まで単調に穏やかに常に距離感を保つ人の結びつきが心地良い。最近の映画界ではこの様なテイストの作品がいろいろな所で話題となっている。例えば役所広司で言えば、「per
-
Posted by ブクログ
いろいろな書評で話題をさらっている本書はSFにカテゴライズされているが、それよりもGL系の方がピッタリしている。現在のSFはサイエンスではなくLoveが主流を占めているような気がする。サイエンスの時代は人類愛、生命愛がテーマのものが多かったのだが、現在は世相を反映してかBL, GLものが多い。同性同士の愛の本質は私には判りかねるので、性の概念を排除して人間同士の愛と読み替えて作品を読み進めると幾分理解力が深まったようにも思える。
今回の作品の中には愛の対象が電柱というもの「電信柱より」もあるが、電柱と言う物体を擬人化するという発想には興味を持った。以前、何かの本で読んだ記憶があり、初めて読ん -
Posted by ブクログ
ネタバレ•『ラサンドーハ手稿』高原英里
この作品が最初で良かった。退廃的な世界観、暗い路地裏から話しかけてくる仮面たち、ひょっとして私たちの世界でも起きているかもしれないよと錯覚させるような精神が入れ替わるストーリー。百点満点です。
•『串』マーサ•ナカムラ
奇妙なお役目がグロい!
連綿と続いていくんだなと主人公の微笑みで感じます。なんだか鬱りたくなるのに爽やかで奇妙な読後感。
•『うなぎ』大木芙沙子
あーっ、純文学!うなぎが臍から出てくる超自然的現象はさておき、不良と仲良くしているところをいい子ちゃんの家族(になりかけの人と母親)に見られたくないっと顔を背けてしまった…小さなしこりが今も残り続け -
Posted by ブクログ
第171回芥川賞候補作
海辺の老人ホームに派遣の清掃員として働くワタシ(クズミ)
ウガンダから来た同僚のマリアさん
手抜きばかりしていた元同僚の神崎さん
ホームの敷地にあるニセモノのバス停で来ないバスを毎日待っている入居者のおばあさんのサトウさん
いきなりニセモ丿のバス停を磨きあげるワタシ(クズミ)の描写から始まる
このバス停は認知症が進み、家に帰りたがる入居者を一度そこに連れて行き「なかなか来ないですね…また明日〜」とクールダウンのような場として機能しているらしい…
そのバス停に「ニセモノのくせに」と笑いかけるワタシ(クズミ)
そして必要以上にニセモノを磨き、ピカピカにしてサトウさんとおし