あらすじ
戦争の中で嘘が姉妹を繋ぐ「嘘つき姫」、電気椅子ショーに挑む魔女と技師「ニューヨークの魔女」ほか、書き下ろし2篇を含む全9篇。小説が待ち焦がれた才能、正真正銘「待望」の初作品集。
この本は、まるで鍵束だ。一つ読むたびに何かが解き放たれ、そして迷宮への扉が開く。
――岸本佐知子氏(翻訳家)
過去未来大小遠近あらゆる世界を鮮やかに的確に語りながら精緻な余白を残し、読者にその余白をこそ玩味させる。手練れの技だと思う。
――小山田浩子氏(作家)
この想像力が世界の有り様を拡張する。少し広くなった世界で、感情が、愛が息づく。
――斜線堂有紀氏(作家)
◎装幀=名和田耕平デザイン事務所(名和田耕平+小原果穂)
◎装画=はむメロン
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
衝撃的に面白かった。
完全にファンタジーなのに、どこかで実際にあった出来事なのかと錯覚してしまう。事実とフィクションの絡め方の塩梅がとてもうまい。
海外が舞台のお話は翻訳小説を読んでいるような構成と文章。
日本のお話は感情表現がとてもリアル。書き分け天才的!!
読み始めはどこにもないセピア色の不思議世界を描く感じかな(小川洋子さんのような)と思ったが、様々な色の世界を描いていてすべての物語がとてもよかった。
全体に漂うもの悲しさも大変好み。
久しぶりにお気に入りの作家さんに出会えた。
短編集
ニューヨークの魔女
ファーサイド
リトル・アーカイブス
リモート
私のつまと私のはは
あーちゃんはかあいそうでかあいい
電信柱より
嘘つき姫
日出子の爪
Posted by ブクログ
書店でSFコーナーにて展開していたが、実際に購入して読んでみるとエンタメと言うよりは文学・文芸小説といった印象だった。
かといって堅苦しい難解な純文学ではなく、とても読みやすい文体で、SF的な設定が現実社会のメタファーとなっており、すんなりと頭に入ってくる。
まるで玉露を飲んでいるような、スッキリとした味わい。
しかし、カフェインの含有量はえげつない。
そんな一冊。
Posted by ブクログ
いろいろな書評で話題をさらっている本書はSFにカテゴライズされているが、それよりもGL系の方がピッタリしている。現在のSFはサイエンスではなくLoveが主流を占めているような気がする。サイエンスの時代は人類愛、生命愛がテーマのものが多かったのだが、現在は世相を反映してかBL, GLものが多い。同性同士の愛の本質は私には判りかねるので、性の概念を排除して人間同士の愛と読み替えて作品を読み進めると幾分理解力が深まったようにも思える。
今回の作品の中には愛の対象が電柱というもの「電信柱より」もあるが、電柱と言う物体を擬人化するという発想には興味を持った。以前、何かの本で読んだ記憶があり、初めて読んだ時は心のどこかに引っかかっていた程度で、作者の名前も覚えていなかったが、流石に2回読むと作者の意図がグイグイ入って来る。
その他、気になった作品としては、やはり表題作の「噓つき姫」だ。人間の発する嘘がどんでん返しを誘発するのだが、推理小説のどんでん返しとは質が全く異なる。中山七里を良く読む機会があり、一定の割合で犯人を当てることができるが、本作品の結末を予想できた人が一体この世の中に何人いるだろうか。もう流れに任せて読むしかない。嘘の波に揉まれて次々と繰り出される驚きに打ち負かされるのもたまには良いだろう。
それともう一つが何と言っても「私のつまと、私のはは」。子育てキットと言う発想が凄い。これを読んだら子育ての大変さが倍増どころか、人によっては子育てを諦める、子育てを頑張るぞと張り切る人達に子育てに対するトラウマができてしまう。そのキットをリセットする方法が生々しすぎて、自分の子供に対しても実行してしまうのではという恐怖感が襲ってくる。とても後味の悪い作品でした。
次の本が出るのはだいぶ先かな?当面はいろいろなアンソロジーに顔を出すと思われる坂崎かおるに注目していきたい。
Posted by ブクログ
ニューヨークの魔女
ファーサイド
リトル・アーカイブズ
リモート
私のつまと、私のはは
あーちゃんはかあいそうでかあいい
電信柱より
嘘つき姫
日出子の爪
不思議な感じの物語ばかりで、どう解釈していいのか頭の中が???になってしまった。
けれども、わからないと投げ出さずに、読みたくなる不思議な本。
わからないものを、わからないなりに、受け取る感じが癖になりそう。
「歯」とか「爪」に焦点が当てられると、想像して鳥肌が立ちそうだったけど、妙に心に残った。
個人的には「ファーサイド」「リモート」「電信柱より」「嘘つき姫」がおすすめ。
Posted by ブクログ
短編集9篇
SFっぽい物語が多いが表題作はフランスを舞台にした第二次世界大戦時の物語。どうしても死なない魔女やタマゴッチのようなリアルな子育て、埋めた爪から指が生えてきたりと突拍子もない事態に目を奪われるが、その根底に漂う深い、あるいは説明し難い愛に心が揺さぶられた。ひとつづがそれぞれ違った味わいでとても面白かった。
Posted by ブクログ
タイトルと装画から想像するものと全く違った。
めちゃくちゃ軽いのかと思ってどちらかと言えば期待せずに読み始めたのだけど、装画のイメージと違ってすごく良かった!
9つの短編で、全て書き方やテーマが異なり、どの作品も面白い。私は外国が舞台の作品が好き。海外児童文学の翻訳という感じが良い。日本が舞台になると翻訳口調がなくなって、ちょっと普通になる。
「嘘つき姫」以外に共通しているのは今もしくは現実には存在しないものが出てくるということ。魔女とかロボット的なものとか。それからブラックな感じもいい。
Posted by ブクログ
表紙の女の子の可愛さとは裏腹に中身は結構ドス黒かった。百合っぽくてほわわーんって感じかと思ったら、全ッ然違った。百合ってゆうか、レズビアン。なんか、恋愛上の関係を同じなんだけど、百合はなんか「私たちの世界よ…キラキラキラーン」みたいな感じなんだけど、レズビアンは「私、子供欲しいの。だから、今度、精子を買うね…。ズーン」。いや、本当にこうなのかは知らないよ⁉︎私の勝手な思い込みだけど、百合だと思ってたから、かなりショックだった。で、あとグロいシーンもあったから、かなり、うん、すごくがーんってきた。あ、でも、めっちゃ面白かったけどね。
(自分で読み直してみると、読みにくいね。私の文)
Posted by ブクログ
表題作がお気に入り。
どこまでが嘘か。嘘を重ねて真と信じるようになってしまったこともあるのではないか。歴史の影でそんなことを想像した。
他の8編も良かった。
Posted by ブクログ
[嘘つき姫]第二次世界大戦中ドイツ軍の侵攻を受けて、マリーは母親と共にパリを離れます。道中孤児のエマと出逢い、冷戦の時代まで通じて関係が続いていきました。東西対立や西側諸国の赤狩りなどが起こっていた当時、生きづらい中でつかれるウソを取り上げた物語と感じました。静かで読みやすいものだったと思います。星3つ。
Posted by ブクログ
日本のSFっぽい話より
どこか遠い外国の昔の話の方が
小さな子供だった頃に
おとぎ話の続きを
ワクワクしながら読んだことを
思い出させてくれて面白かった。
せつなさ、恋しさ、さびしさ
やるせなさとか
何かと何かが関わることで生まれる
この世界にあるいろいろな感情と
逃れることのできない運命や
残酷さというものを
初めて知ったときのような感じがした。