坂崎かおるのレビュー一覧
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芥川賞候補にもなった2024年の新人作家の短編小説集。
本のタイトルの小説はない。
短編が6つ。
その中で秀逸と感じたのは最初の「ベルを鳴らして」。
今は博物館ものの「邦文タイプライター」をめぐる戦中を描いたドラマ。
邦文タイプ、見たことはあるがどう触るのか見当もつかなかった。
つまり小説の中にある描写は全然イメージできないのだけれど、
それでもなんだか高尚な、高貴な、知的な感覚を持って読むことができた。
佳作。
そのほかの作品は、ファンタジー的なものもあれば、
人間の毒を吐いてるものもあり、、、
「ベルを鳴らして」よかった
「ベルを鳴らして」(日本推理作家協会賞短編部門受賞作)
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まず、表紙がいいですねー
淡い水色のバックに青一色の細い線で描かれた絵。余白もたまらない。
この絵のように静かで孤独な物語だったなぁ。
老人施設で清掃の仕事をしているクズミ(名字)。
クズミはどうも小学生の頃から他人と馴染めなかったらしく、それを受け入れ一人で生きることにしたような印象を受けます。いつも頭の中でブツブツと独り言を言っている、そらがそのまま文章になったような文体。
でもウガンダ人のマリアが同僚になって、カタコトの日本語でたくさん話しかけられるようになってから少しずつ意識が変わってきます。
このまま仲良くなっていくのかなぁと思っていたのだけれど、マリアの仲間たちのコミュニティにも疎 -
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稀有なワードセンスに脱帽! 女性の人間関係を幻想的かつ無情に描いた作品集 #箱庭クロニクル
何ですか、この稀有なワードセンスは。派手ではなく木訥と綴られる言葉の渦に溺れそうです。たしかに新人先生とは思えないですね~、これからの作品にも期待しちゃいます!
本作は幻想的な世界観の中でも科学的な視点もあり、社会・歴史問題に切り込む純文学寄りのエンタメ。どなたでも気軽に読める短編ですね。
●ベルを鳴らして
日中戦争戦時下の頃、邦文タイピリストの女性の物語。中国人のタイピングの先生、友人とのやりとりを描く。日本推理作家協会賞短編部門受賞作。
邦文タイプですか、そんなのがあったんですね。かつての最 -
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磨き上げられたバス停標識。
素数しか使われていない時刻表。
でも、永遠にこの海岸通りというバス停にバスは来ない。老人ホーム雲母園の居住者の拠り所となるためにあるだけだから。なんか、悲しいなと思った。わからなくなっても、帰りたいとか、どこかへ行きたいという気持ちはあるはずだから。
ここで働くクズミさんは、ちょっとずるいことをしたり、家賃を滞納したりしていたけれど、自分よりも弱い立場のマリアさんと接しているうちに少し変わってきたように思えた。弱い立場の人は、必ずしも弱いだけではなく、自分に都合のよいように行動してしまうこともあると思う。これは、仕方のないことのような気がする。それでも、裏切られた -
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表紙の女の子の可愛さとは裏腹に中身は結構ドス黒かった。百合っぽくてほわわーんって感じかと思ったら、全ッ然違った。百合ってゆうか、レズビアン。なんか、恋愛上の関係を同じなんだけど、百合はなんか「私たちの世界よ…キラキラキラーン」みたいな感じなんだけど、レズビアンは「私、子供欲しいの。だから、今度、精子を買うね…。ズーン」。いや、本当にこうなのかは知らないよ⁉︎私の勝手な思い込みだけど、百合だと思ってたから、かなりショックだった。で、あとグロいシーンもあったから、かなり、うん、すごくがーんってきた。あ、でも、めっちゃ面白かったけどね。
(自分で読み直してみると、読みにくいね。私の文) -
Posted by ブクログ
かなり好きだった。
派手な作品では無く、
ドラマティックな何かが起こるわけでもない。
小説にしては短い方だけど、
物語としての厚みがあったように感じた。
完全に主人公目線で進むのもなかなか面白かった!
そもそも主人公自身がユニークで頑固で、
でもだからこそ素直に共感できて、
たまにちょっと応援したくなる。
喜劇や悲劇が好まれやすい映画などと比べたら、
取るに足らない物語に分類されるだろうけど
息を呑むような体験というのは人生の中でそうそうある物では無いし、ドラマティックな事などもっと少ない。
今この瞬間を現実的に生きている自分の目線だからこそ、リアリティがあって少し勇気をもらえた気がす