あらすじ
日本文学の冒険はじまる。
男たちの眼前で、トウシューズが煮えていく。靴の主は、マリー・タリオーニ。
十九世紀を代表する、ヨーロッパの名ダンサーである。
その伝説の靴を、愛好家たちは競り落とし――食べようとしていた。
えっ、本当に食べるの? 鍋をのぞき込みながら、牽制し合う男たち。
ぐつぐつ、ぐつぐつ。
気づくと中には、ピョートル一世、井上保三郎、高崎の観音像、そして令和の大学生まで。洋の東西、過去現在を超えた食材が投げ込まれていた――。
異能の作家が、世界文学の門をくぐり、供した一皿。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
3人の男が鍋を囲んでいる場面から物語は始まる。場所はロシア。グツグツ煮詰まる鍋の中にはトウシューズが煮えている。なんで?
こんな訳のわからない場面から始まる小説が面白くないわけがない。
サンクトペテルブルクと日本の高崎が交錯する物語です。
サンクトペテルブルクと高崎を組み合わせた坂崎さんのセンスの良さに唸ります。
サンクトペテルブルクのピョートル1世から高崎で高崎観音を建てた井上保三郎の話に移ったかと思えば、更にその話を聞いていた大学生の「わたし」が出てきて…と、話は入れ子構造的に込み入っています。
サンクトペテルブルクと高崎と現代の東京のとある大学を目まぐるしく往復する話なのですが、とにかく面白くて夢中で読みました。
Posted by ブクログ
ロシアの話かと思えば日本の大学生の話、それから高崎の名士の話へとまさに闇鍋のように次に何が出てくるか分からない小説
何がなんだかよく分からない
なのにめちゃおもしろい!
時代も国もごちゃまぜになってぐつぐつと煮える闇鍋小説
クセになります
Posted by ブクログ
好きと嫌いが真っ二つに分かれるだろうなと思った。なんともシュールな展開が嫌いではないし
新しい分野みたいな気がして、もし機会あればまた読んでみようかなと思わせる作家さんだった。
Posted by ブクログ
確かにこの作品そのものが闇鍋みたいな読後感だった。そもそも今読んでる舞台は日本なのか?ロシアなのか?とても不思議な気持ちになる。
序盤は作者にかなり煽られるが、不思議と嫌な気分にはならずむしろ心地良いまであった。
Posted by ブクログ
およそ食材にするものではない物もひとつところに突っ込んだ鍋の沁み出た灰汁もそのままに濁った出汁へと箸を差し入れて具を摘み上げ、それを安い電球の白々しいひかりの中で首を傾げながら矯めつ眇めつし、結局何なのか何故ここにあるのか分からないまま口に運んで食べ合う闇鍋のような渾沌が渦巻いていました。語弊を恐れずに言えば分かりやすく面白い小説ではないと思います。けれど、美味しいんだか不味いんだかよく分からないものを食べる時間が時として最高に楽しい時間になるように、この小説の魅力は、混ぜ合わされた時代と場所と語りの饒舌硬質の答えが明確に見えてこないからこそぼんやりと、それこそ湯気のように掴みどころなく立ち上ってくるものなのだと思います。