あらすじ
日本文学の冒険はじまる。
男たちの眼前で、トウシューズが煮えていく。靴の主は、マリー・タリオーニ。
十九世紀を代表する、ヨーロッパの名ダンサーである。
その伝説の靴を、愛好家たちは競り落とし――食べようとしていた。
えっ、本当に食べるの? 鍋をのぞき込みながら、牽制し合う男たち。
ぐつぐつ、ぐつぐつ。
気づくと中には、ピョートル一世、井上保三郎、高崎の観音像、そして令和の大学生まで。洋の東西、過去現在を超えた食材が投げ込まれていた――。
異能の作家が、世界文学の門をくぐり、供した一皿。
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
ロシアの話かと思えば日本の大学生の話、それから高崎の名士の話へとまさに闇鍋のように次に何が出てくるか分からない小説
何がなんだかよく分からない
なのにめちゃおもしろい!
時代も国もごちゃまぜになってぐつぐつと煮える闇鍋小説
クセになります
Posted by ブクログ
およそ食材にするものではない物もひとつところに突っ込んだ鍋の沁み出た灰汁もそのままに濁った出汁へと箸を差し入れて具を摘み上げ、それを安い電球の白々しいひかりの中で首を傾げながら矯めつ眇めつし、結局何なのか何故ここにあるのか分からないまま口に運んで食べ合う闇鍋のような渾沌が渦巻いていました。語弊を恐れずに言えば分かりやすく面白い小説ではないと思います。けれど、美味しいんだか不味いんだかよく分からないものを食べる時間が時として最高に楽しい時間になるように、この小説の魅力は、混ぜ合わされた時代と場所と語りの饒舌硬質の答えが明確に見えてこないからこそぼんやりと、それこそ湯気のように掴みどころなく立ち上ってくるものなのだと思います。