藤本ひとみのレビュー一覧
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Posted by ブクログ
やっぱり藤本ひとみの歴史ものは面白い。フランス革命ものっていうのはそれこそ星の数ほどあるかと思うんだけれど、なるほどこういう切り取り方もありか。王妃マリーアントワネットの幼なじみでオーストリアの士官である青年の視点で書いてある、ということはこれって政治的にはオーストリアの視点で描いてあるわけだ。西洋史を見るときによく混乱するのが王室の関係なんだけれど、そこのところがすっきりと説明されていてたいへんわかりやすい。けっきょくのところヨーロッパの各王家ってのは婚姻によってかくも密接に結びついているものなのだなあ、と改めて感心。アントワネットがあんまり身勝手な行動ばかりとると、その出自である国まで危うくなるわけだね。
もうひとつ面白いと思ったのはフェルゼンの性格設定、なんだかいかにもありがちで、これって真実にほど近いんじゃないかと苦笑してしまう。いたずらにフェルゼンを美化したりまたはその逆だったりする小説が多いんだけれど、ほんとのところはこんなものだったのかもなあ。このふたりの恋への主人公のからみ方もなんだか微妙で少々生臭くてよい。彼らに限らず、歴史上の人物たちをほんとうに身近に感じられるようによい意味で生々しく描いてあるところが秀逸なのですよね。 -
Posted by ブクログ
178ページ、4行目の「ビエン」は「ブルーノ」のまちがいだろう。ビエンの骸を収めた棺をあらために来たのに、死人が「息を吞んで」ものを言ったりしたらミステリでなくホラーだ。おそらく作者のミスだろうが、編集や校閲は何をしているのか。大事なシリーズ完結作であるのに、可惜という思いが湧いた。
作品自体は、イエスの死体を蔽った布にその顔が写し取られたと言い伝えられる、カトリックの聖遺物「聖骸布」の存在をめぐるハラハラドキドキのストーリー。ミステリというよりは冒険活劇か。
エーコの『薔薇の名前』に寄せるオマージュなのか、大学受験を目前にした日本人高校生が、頭頂部を剃ってアルプスの麓にある周囲と隔絶した修道院に潜り込むという荒唐無稽な展開に、ツッコミを入れたくなったが、もともとそういうノリのシリーズなのだろう。
そこここに作家が得意とする歴史に関する蘊蓄が盛り込まれていて、シリーズ物をはじめて手にした読者であっても、読む愉しさを味わうことができた。これを機に他の作品も読んでみたいと思わせるものがあった。