コーマックマッカーシーのレビュー一覧

  • 平原の町

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    国境三部作の完結編。
    1作目『すべての美しい馬』の主人公ジョン・グレイディと2作目『越境』の主人公ビリーとが共演する。

    物語は、二人が同じ牧場に勤めているところから始まる。気のいいオーナーの元、多くのカウボーイ仲間に囲まれて、ジョン・グレイディもビリーも平穏な生活を手に入れたかと思わせる。
    しかし、彼らも仲間もどこか落ち着かない。本作でも三部作を通して描かれてきたテーマ、失われつつある西部がモチーフだからだ。彼ら自身、自分たちの生活はもう時代遅れになりつつあり長くは続かないだろうことを知っている。そこから生まれる何とも言えない悲哀が全体に漂っている。

    話の本筋は、ジョン・グレイディが惚れた女のために、ナイフでの決闘を挑み、命を落とすという、それ自身ある意味大時代的な筋書きである。
    徹頭徹尾、彼は前時代の人間であったのだ。

    主人公たちの生活は失われる運命にあった。三部作を通して共通していたのは、その哀愁を、全く大衆迎合的にではなく描ききっているところであり、個人的にはそこがこの三部作の魅力であるように思う。

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    2010年05月11日
  • 越境

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    国境三部作の2作目。
    本作もアメリカ西部に住む少年が、メキシコへと越境し、数々の苦難の冒険を経験するという粗筋である。

    が、こちらは『すべての美しい馬』以上に強烈な喪失の物語である。
    主人公ビリーの3度にわたる越境が描かれるが、そのたびに近しいものを失っていく。失われていくものを何とか取り戻そうとしても、全ては逆効果、予めそう決まっていたかのように失っていく。

    主人公の喪失の物語の合間に3つの挿話があるが、それも全て主人公の運命を示唆し、主人公の孤独を強調するかために配置されているのは明白である。

    しかし、何故か陰鬱な雰囲気、悲しげな雰囲気はない。全ては淡々と進んでいく。

    西部のカウボーイという、失われし時代、失われていった人種、失われた社会を象徴しているのかな、とも思うが、もっと宗教的なテーマなのかもしれない。

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    2010年05月06日
  • ノー・カントリー・フォー・オールド・メン

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    ベトナム帰還兵のモスは男たちの殺戮現場から大金を見つけてしまう
    モスに対して殺し屋が迫る
    保安官ベルは日々凄惨な事件が増えることに嘆き今回の事件の捜査を進めていく
    血と暴力の国では一寸先は闇であり、勧善懲悪や因果応報は機能せず、善良な人間が望むようには出来ていないまさに「老人の住む国にあらず」

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    2026年09月05日
  • すべての美しい馬

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    存在場所を求めてテキサス州からメキシコへと、友人とともに愛馬で旅する馬を愛する少年の物語。ハックフィンの冒険のようにアメリカで愛される王道の青春ストーリーだが日本人の自分としてはそこまでのめり込めず、ザロードのほうが内容は面白かったものの、切れ目ない独特の文体は楽しめました。越境もいつか読んでみたい。

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    2026年07月11日
  • ザ・ロード

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    NYタイムズ紙が選ぶ「21世紀のベスト100冊」よりコーマック・マッカーシー/ザ・ロード
    運命の日からしばらく、灰に覆われ日が差さなくなった世界を行く主人公と幼い息子。「善き者」であろうとお互いを鼓舞しつつ、南を目指し荒野を歩き続ける。

    世界崩壊の当日やXX年後の物語は多くあるけれど、数年後の死にゆくさまを描いているのは稀有かもしれない。
    描写が悲しくも細やか。冷えきった世界で漠然と南を目指すのは、まだ生きたいと願う動物としての本能かな。徹底して削ぎ落とされた冷徹な文体で、終末世界の残酷さを容赦なく突きつけます。

    そんな絶望の底にいるからこそ、父と子の間に通い合う無償の愛がいっそう尊い。「火を運ぶんだ」という、祈りにも似た言葉が深く、極限状態での人間の尊厳を問い直されたようでした。

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    2026年06月10日
  • 平原の町

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    ネタバレ

    「すべての美しい馬」のジョン・グレイディ・コール、「越境」のビリーが「平原の町」では同じ牧場で働いている。

    「越境」でのビリーは世捨て人のような、世界に背を向けようが何をしようが、お構いなし、という感じだったが、ここではジョンの兄貴分として、大人になっている。

    「すべての美しい馬」のジョンはどう生きるべきなのか、世界にもまだ淡い期待を持っていたように見えた。ここでもそれは変わらない。
    そしてジョンは娼婦に恋をする。意味を持つ世界を信じるジョンは娼婦に入れ込み、結婚を申し込む。

    ビリーをはじめ、誰もが諦めるようにジョンを説得するが、ジョンは聞かない。
    ジョンにはなんとかなる、という淡い期待がある。普通、これを”若さ”として描くのだろうが、マッカーシーは”狂ってる”若者として描く。

    やがて、娼婦は殺され、ジョンは死ぬ。
    これを単なる愛憎劇と見ることもできる。
    だが、生き方を変えられない、自分の物語に縛り付けられた人間の姿にも見える。

    過去も未来も、そして歴史の中でも、人は物語を作り続ける。
夢の中でも。
    それが人間なのかもしれない。
    だが、それを“生きている”と呼べるのかどうかはわからない。

    人は人の言葉でしか世界を語れない。
    それでも世界は動き続ける。

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    2026年04月29日
  • チャイルド・オブ・ゴッド

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    なんとも恐ろしい小説を書くものです。凄惨な事件の内容ではありません。タイトルが示すように主人公が神の子であれば私もまた神の子だということ。高みから見れば個々の差など無いに等しく、それを納得させられてしまうことが恐ろしい。

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    2026年02月22日
  • すべての美しい馬

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    白黒映画のようだ。
    荒涼たる砂漠。
    理不尽や不公平が覆う世界。
    血は赤では生々し過ぎる。
    黒がいい。
    太陽の光と、ドス黒い血。
    強烈なコントラストの中で、馬だけが美しい。

    マッカーシーのカギ括弧が無い文体が、心の叫びのように聞こえてくる。
    救いがない、理不尽の世界でも、大地は変わらない。
    人はここで生きていくしかない。
    必要なのは勇気なのか。
    いや、そんなことを考えるのは人だけで、大地は今日も日に照らされ、生き物を育み、死をのみ込む。

    それでも生きることには意味がある。
    と、マッカーシーは言っている、と思いたい。

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    2026年02月17日
  • ノー・カントリー・フォー・オールド・メン

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    人は選択のミスにより、取り返しがつかない境地に陥ることがある。ただ、その選択は運なんかではない。選択は本人の責任であり、その結果、導かれたものが運なのかもしれない。まさに運命。命を運びし選択。乾き荒れた地に吹きすさぶ無情の死神者、シガー。

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    2025年12月20日
  • ザ・ロード

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    荒廃した世界を旅する父と子の物語。
    多くの人々が倫理観を忘れた世界で道半ば出会った人々を助けようとしたり、善きものであろうとする子供の純粋さが美しい。

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    2025年10月09日
  • ザ・ロード

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    ネタバレ

    大厄災の後、ほとんどの動植物種・文明は絶滅し、灰色の厚い雲に覆われ、生き残る人類の大部分は人食い部族として存続している地獄の世界。
    そんな地獄の中を、主人公の親子は、飢餓や凍死の危機をはじめとする様々な恐怖を経験しながら、倫理や理想を捨てずに進み続けようとする。
    極限状態に追い込まれていく描写がとてもリアルで、読みながら何度も何度も「頑張れ!まだ死ぬな!」と応援してしまった。食糧にありつくたびに、自分がとても安堵した。
    信仰を捨てず、こどもに無償の愛を注ぎ続ける父親が死んでしまうシーンはとても悲しかった。
    少年が新たな夫婦に出会う、救いのあるラストでまだよかったが…いや、この世界には救いなどないか…。
    父親がほんとに理想のパパすぎる。自分に息子ができたら、こんな父親になりたいと感じた。

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    2025年09月25日
  • すべての美しい馬

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    やはり特徴的なのはこの一文が長い文章だろう。しかもほぼ句読点もなし。あえてのこの書き方なのはわかるが、それでも読みずらい。平易な文章で書かれているが、この書かれ方にする必要性を感じなかった。

    ストーリーはサクサクと進むが、これといって起承転結に感情が揺さぶられることはなかった。

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    2025年08月23日
  • ザ・ロード

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    あとがきの表現を借りると、北斗の拳の世界の子連れ狼。ありえるかも知れない死と灰の世界で、人間はどのように行動し思考するかという視点ではリアリティを感じられましたが、物語は割と単調に感じました。

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    2025年08月14日
  • ザ・ロード

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    ピュリッツァー賞受賞作。
    最後までまったく面白くなかったのに、文章の流れにのると没頭できてしまった。サラエボ包囲を想像して読み進めてからは、純文学的な言葉の川に溺れることができて、それはそれでよきでした。言葉と言葉で緻密に紡がれて形成されたその場限りの世界に篭りたい時ってあるよね。

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    2024年12月07日
  • ザ・ロード

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    読書会課題本。ストーリーは「何だがわからないがめちゃくちゃ荒廃し、住民がほぼ野生化したアメリカの近未来で、とある親子が放浪の旅をする」という話。荒廃した理由が不明な上、矛盾している描写も多いので、SFとして読むとかなり物足りない。しかし、現代社会を風刺した寓話として読むと「ああ、なるほど」というのがある。そういう意味で、現地でヒットした理由も、ピューリツァー賞受賞も納得がいく。

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    2024年11月16日
  • すべての美しい馬

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    独特な文体で詩的にメキシコとテキサスの荒涼とした景色の中を美しい馬たちと愚かな人間たち、そしてそのようなものには無関心な世界を描く。正直なところ流れていく文章が理解する前に読み進めていってしまうようで、スタイルに慣れていない序盤の部分があまり理解できていなかった。「ノーカントリー・・・」とはまた違う印象。

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    2024年05月18日
  • ノー・カントリー・フォー・オールド・メン

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    コーマック・マッカーシーの代表作である。
    国境での麻薬取引が襲撃され麻薬と金(かね)の奪い合いが始まる。金を横取りするベトナム帰還兵、追いかけ回す密売集団、スタンガンのような特殊な武器を使う殺し屋の執拗で冷酷な追跡、それを捜査し追走する保安官・・・。
    独特の表現で、今のことなのか過去のことなのか、状況なのか会話なのか、話ことばに鍵かっこを使わず、凄惨な場面が次々と起こる。めまぐるしい展開に説明がない、何がどうなっているのかわからず読者も振り落とされそうになる。
    各章冒頭の随想のような文章で一息入れる。
    欲望と殺戮と僅かの日常が混在し、全編を貫くスピード感と虚無感に満ちたテイストの風変わりな小説である。
    映画化されてアカデミー賞を受賞する。

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    2024年05月11日
  • ザ・ロード

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    破壊され尽くした世界を父と息子の二人が「火を伝える」という目的を持って南に向かって歩き続ける。
    廃墟の中、辛うじて残った食糧や必需品を漁る緊張感、掠奪者や老人・子供に遭遇することが孤独を紛らわし物語の現実感を醸し出す。ボロボロの地図を頼りに雨や雪、疲労と飢え、病気と怪我に抗して南に向かう。海に辿り着いても状況は何も変わらない。
    二人にとっては「防水シート」がいろいろな場面で何度も出てくる万能資材であり、「カート」が必要品を運んでくれる頼り甲斐のある同行者だ。
    大状況がわからないということはこれ程不安を感じさせるものなのか。読者は一瞬も気を抜けず漠然とした期待を求めて読み続け、南にこそ可能性があると思い込むしかない。作者は多くを語らず読者の想像力に委ねる。温暖化による破綻なのか核戦争による破滅か、破壊された世界で二人の親子愛が辛うじて希望の火を灯す。いつまでどこまで続くのかわからない恐怖と諦観そして絶望が異空間を味あわせる。
    コーマック・マッカーシーのピューリッツアー賞受賞作である。

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    2024年05月05日
  • ノー・カントリー・フォー・オールド・メン

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    洗練された重みのある文章。。。わかっちゃいるんだが。どうにも自分とは相性が悪いようだ。多分四作くらい読んでいるのだが、毎回読後があんまりよくなかった。必要以上に暗い気がする。どうも自分はユーモアとか皮肉とかがないと読んでるのがしんどくなってくるようだ。

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    2024年04月11日
  • 越境

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    アメリカとメキシコを行ったり来たりしつつ、悲劇に見舞われながら生きる主人公と対話する人々との哲学的な挿話で構成されている。様々な暗喩が込められて語られる会話がほぼ全体を支配してるので、相変わらず読みにくいが、分かり易い物語や伏線回収云々な小説よりずっと心に残るし、何度も再読出来る小説だと思う。

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    2024年04月07日