コーマックマッカーシーのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
国境三部作の完結編。『すべての美しい馬』のジョン・グレイディがふたたび登場し、『越境』のビリー・パーハムとともに物語を織り成す。前二作と比べると前半部分は退屈な感が否めないが、後半からぐっと物語は面白みを増す。
本作品は純愛物語であり、マグダレーナに対するジョンの破滅的な愛の物語であり、エドゥアルドの歪んだ愛の物語でもある。理不尽かつ原初的な情感が漂うメキシコで過酷ながらも美しい情景を紡ぐ。エピローグのビリーの物語はやや意外(唐突感?)なものだが、アウトローの終わりを告げる物語として相応しいものかもしれない。荒々しくもロマンティックな時代の終焉に浸れる傑作の三部作であった。 -
Posted by ブクログ
コーマック・マッカーシー氏の国境三部作の第二作目。
アメリカ南西部とメキシコを舞台に大自然と人々との関係を描く。雄大な自然と過酷な運命。出来事全てを等価に扱い、残酷さも慈愛も綯い交ぜにしてある意味で無関心かつ突き放す文体はとても哲学的。
主人公である16歳のビリー・パーハムは内的な衝動で行動し、ビリーを襲う不条理な運命はまるで聖書のヨブのよう。それなのにビリーの心理描写や感情変化はほぼ描かれる、メキシコで出会う人々の剥き出しの人間性との繋がりのなかで読者に伝えられる。
16歳にしてハードボイルドでタフガイ。しかし美しい情景が目に浮かぶ文章は詩的。魅力的な作品。 -
Posted by ブクログ
ネタバレとても美しい小説だと聞いて、手に取った。
ここのところ、アメリカ文学を読んでいる。
「ジェームズ」「ハックルベリー・フィンの冒険」は南西部ミシシッピ河流域の小説、「エデンの東」は、カルフォルニアの小説、そしてこの小説はテキサスから国境を超えてメキシコへ渡る小説だった。アメリカは広いなあ。小説によって舞台になる土地の雰囲気が全然違うから脳内旅行が楽しい。
テキサスでカウボーイをしていた十六歳の少年ジョン・グレイディがお祖父さんの遺産の牧場が売られてしまうことを知り、アメリカに自分の居場所がないと思い、愛馬に乗って、親友ロリンズと途中で出会った十四才くらいの少年プレヴィンスと共に国境を超え、メキシ -
-
Posted by ブクログ
凄い言葉を生むための物語。
胸に押し当てたいほど美しいものは全て苦悩に起源を持つ。それは悲しみと灰から生まれる。
- 63ページ
かたちを喚び起こせ。ほかになにもないところでは無から儀式を創り出しそれに息を吹きかけよ。
- 86ページ
善意が見つけてくれるんだ。いつだってそうだった。これからもそうだよ。
- 326ページ
全て凄い言葉。言葉に、“凄さ”を付与するための話。
「火を運ぶ」という言葉が多義的に解釈されている。解釈に一側面を付け加えるならば、これは“律”だ。そして律は、人間の主観なしには作り得ない。人間が作るものには全てが信仰が含まれる。それは律であっても例外ではない。
世 -
-
Posted by ブクログ
荒野に放置された弾痕の残る車輛と複数の死体、多額の現金と麻薬を見つけたら、そのまま放置して警察に連絡するに限る。現金を持ち帰り、再度現場を訪れるようなことをすると、地の果てまで追われることになる。
冒頭から物語に引き込まれ、ストーリーや登場人物の行動、セリフに引っ張られ、終盤まで連れていかれる。章立て冒頭の保安官のモノローグの印象が残っているうちに、主人公と追手が繰り広げる逃走劇が脳内に入り込んでくる。ストーリーが脳内に入ってくるのは、著者の作品『ロード』でも同じだ。その文体がそうさせるのだと思う。
主要な登場人物はすべて戦争経験者だ。オールド・メンの条件が戦争経験のように思うが、ア -
-
Posted by ブクログ
舞台は1940年代のアメリカ・メキシコ国境地帯。主人公の少年は、三度び国境を越え、馬に乗ってメキシコの地を延々と放浪する。
一度目は捉えた雌狼を生まれた地に送り届けに、二度目は盗まれた馬を取り戻すために、三度目は生き別れた弟を探しに。
主人公は孤独な旅を逞しく続けるが、その過程であらゆるものを抗いがたい暴力によって喪失していく。
壮大で厳格な喪失の物語である。
文庫本で600ページを超える大作だが、最初の1、2ページを読んだところで、あまりの読みにくさに挫折しそうになった。
独特な言葉遣いと長いセンテンス、詩的な情景描写、短い言葉を交わすだけのダイアログ、場面の切り替わりのわかりづらさ。
心 -