コーマックマッカーシーのレビュー一覧

  • 越境

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    読後しばらくしてから、じわじわと話が心に沁みてきた。
    細部を咀嚼し切れていないので、あくまで感覚的なものだけれど、無性に胸が詰まる。
    この作品(「すべての美しい馬」もそうだけれど)における「メキシコ」とは、“どこか別の場所”ってことなんだろう。自分が生まれ育った世界(=アメリカ)ではない、異世界。
    希望も絶望も、夢も血も暴力も、何もかもが混沌とした場所。
    ビリーは運命に流されて三回の越境をしているように見えるけど、ただ流されているのではなくて、そこには彼の意思があっての選択だったのだと思う。

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    2011年01月04日
  • すべての美しい馬

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    起こった出来事を淡々と描いて、心理描写的なものはほぼない。それなのに読後感の良い不思議な小説でした。主人公のジョン・グレイディはずっとクールだし、人との会話も余計なおしゃべりをしない。アメリカのカウボーイ的なものに対するイメージというのはわからないけど、異国に住む自分が読んでもなんだか男臭い渋さがあるなとは思う。ジョン・グレイディが恋した娘と別れる場面で「握った手から彼女の心中を推し量ろうとしたが何もわからなかった」という描写とか、わからないのが良い。わからないものはわからない。そういう描写が結構ある。

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    2026年07月14日
  • ザ・ロード

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    終末世界における巡礼として読み進めた。キリスト教信仰の宣伝?「たとえ明日、世界が滅びようとも、私は今日リンゴの木を植える」を想起した。神学を補助線にするのが有効と思われる。

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    2026年06月18日
  • ザ・ロード

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    ネタバレ

    こんなに全編を通して暗くて徹底的に一切の希望がない小説は初めて。ただ暗いという訳ではない。暗いけどジメジメとはしてなくて、同情を誘うような湿り気もない。
    父と子が荒廃した地球を歩いている、それだけなのにグッと引き込まれた。
    お父さん、息子に対して絶対に怒らず、何か問題が起きても必ず自分のせいだ自分の落ち度だと言い、息子のせいでも息子のせいにはせず、声を荒げてしまえばすぐに謝る。めちゃくちゃ大変な状況なのに、凄すぎる。息子がたとえ大切な銃をうっかり置いて来てしまっても、絶対に責めない。本当にすごい。

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    2026年05月24日
  • ザ・ロード

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    「ぼくが死んだらどうする?
    パパも死にたくなるだろうな。
    一緒にいられるように?
    そう、一緒にいられるように。
    わかった。」
    心にズシンと響いた。
    読んでいると心に染み入るような感じを受けた。

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    2026年04月22日
  • 越境

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    ネタバレ

    原題はThe Crossing。
    横切ること。交わること。交差点。

    これを「越境」としたことで、イメージが果てしなく広がる。

    マッカーシーの描く世界はとても冷徹だ。
    神の視点に近いかもしれない。
    この世に物語はない。陽は昇り、大地を照らし、沈む。または陽は昇る。
    その中をビリーは生きる。
    なぜ、生きているのかはわからない。
    でも生きる。

    ビリーは3度、メキシコへ渡る。
    1度目は狼を送り届けるため。
    2度目は親を殺され盗まれた馬を取り戻すために。
    3度目は唯一の肉親である弟を救うために。

    1度目は心の赴くままに、
    2度目は自ら課した義務のために、
    3度目は孤独に押し出されて旅をする。

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    2026年03月21日
  • 平原の町

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    国境三部作の完結編。『すべての美しい馬』のジョン・グレイディがふたたび登場し、『越境』のビリー・パーハムとともに物語を織り成す。前二作と比べると前半部分は退屈な感が否めないが、後半からぐっと物語は面白みを増す。
    本作品は純愛物語であり、マグダレーナに対するジョンの破滅的な愛の物語であり、エドゥアルドの歪んだ愛の物語でもある。理不尽かつ原初的な情感が漂うメキシコで過酷ながらも美しい情景を紡ぐ。エピローグのビリーの物語はやや意外(唐突感?)なものだが、アウトローの終わりを告げる物語として相応しいものかもしれない。荒々しくもロマンティックな時代の終焉に浸れる傑作の三部作であった。

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    2026年02月20日
  • 越境

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    コーマック・マッカーシー氏の国境三部作の第二作目。
    アメリカ南西部とメキシコを舞台に大自然と人々との関係を描く。雄大な自然と過酷な運命。出来事全てを等価に扱い、残酷さも慈愛も綯い交ぜにしてある意味で無関心かつ突き放す文体はとても哲学的。
    主人公である16歳のビリー・パーハムは内的な衝動で行動し、ビリーを襲う不条理な運命はまるで聖書のヨブのよう。それなのにビリーの心理描写や感情変化はほぼ描かれる、メキシコで出会う人々の剥き出しの人間性との繋がりのなかで読者に伝えられる。
    16歳にしてハードボイルドでタフガイ。しかし美しい情景が目に浮かぶ文章は詩的。魅力的な作品。

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    2026年02月13日
  • すべての美しい馬

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    ネタバレ

    とても美しい小説だと聞いて、手に取った。
    ここのところ、アメリカ文学を読んでいる。
    「ジェームズ」「ハックルベリー・フィンの冒険」は南西部ミシシッピ河流域の小説、「エデンの東」は、カルフォルニアの小説、そしてこの小説はテキサスから国境を超えてメキシコへ渡る小説だった。アメリカは広いなあ。小説によって舞台になる土地の雰囲気が全然違うから脳内旅行が楽しい。
    テキサスでカウボーイをしていた十六歳の少年ジョン・グレイディがお祖父さんの遺産の牧場が売られてしまうことを知り、アメリカに自分の居場所がないと思い、愛馬に乗って、親友ロリンズと途中で出会った十四才くらいの少年プレヴィンスと共に国境を超え、メキシ

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    2026年02月01日
  • ザ・ロード

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    なんだろう。
    物語としての抑揚は全くなく、ずっと1本の線をみているかのようで一気読み。
    特別な事も起こらないけど、ただ1日1日の生活を美しい言葉で表現していたり。
    何故か読み進めていた。
    家で読書をする時は、いつもYouTubeで雨と雷の音を流しながら読書をしていて、この本にはそれもぴったり。少年の名前も知らないけど、物語が続くならどうか、その考える力・想像力を無くさないで、無事に平穏な暮らしができていますように。他の作品の3部作と血と暴力も積読してあるので、読むのが楽しみ。

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    2025年11月29日
  • 通り過ぎゆく者

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    マッカーシーの遺作となった2作。翻訳作はほとんど読んだけれど、私は良い読者ではなかった。全ての現実は喪失の運命にあり、世界は非常さに満ちている。今のところ、これがマッカーシー作品を通じて私が得た理解の全てです。理解が及ばないながら、マッカーシーと同時代に生きてその作品を読むことができたのは幸運だった。

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    2025年11月23日
  • すべての美しい馬

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    米国文学の巨匠コーマック・マッカーシーの国境三部作の第一作目。テキサス州からメキシコに至る道はさながら青春ロードムービーのようであり、美しい情景が目に浮かぶような自然描写。牧歌的な叙事のあとに訪れる理不尽で強烈な暴力の数々。原初的な人々が織り成す激情の衝突は、近代アメリカが封殺した善悪を増幅したような沸騰する生命力を感じさせる。一番の驚きは物語終盤に完璧なタフガイに成長した主人公が16歳ということか。荒野に佇む余韻の味わえる良質な小説。

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    2025年08月27日
  • すべての美しい馬

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    ネタバレ

    テキサスからメキシコへ友人と家出同然で飛び出し、働き口も見つけ上々の新生活スタートとも見えたが··· 
    とにかく真っ直ぐなジョンのセリフが印象的
    殺るか殺られるかだ中間はない 等。

    少し読解力が追いつかなくて 追手は何故最後馬を連れて行かなかったのか等気になる点も·

    とにかく友人と旅をしている描写が面白く、後半からはジョンの行動に目が離せない。

    彼女が残ってくれたら恐らくあの行動にはでていない。

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    2025年04月06日
  • ザ・ロード

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    純文学性が高いが一気読みした。ポストアポカリプスものではあるが、SFという感じはしない。
    人間を食べるか食べないかは人として究極の善悪の彼岸だが、善悪というルールは世界の破滅と共に消えてしまった。そんな世界でも人を食べないと誓い、ひたむきに生きる親子はとても美しく、火を運ぶものを名乗ることには神話性も感じる。
    2018.3.22

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    2024年08月09日
  • ステラ・マリス

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    ネタバレ

    正直なところ、『通り過ぎゆく者』はそれほどじゃなかったのだけれど、こちらを読み出したら、俄然面白い。やー、すごい。さすがだ。コーマック・マッカーシーはこんなところへまで到達していたか。しかしやはり『通り過ぎゆく者』あってのこと。あくまで対であり、『通り過ぎゆく者』を先に読んでのことかと思う。そしてこの後もう一度『通り過ぎゆく者』いん立ち帰れば、更に良さそう。

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    2024年05月29日
  • ノー・カントリー・フォー・オールド・メン

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    映画を先に見てあまりのインパクトに原作も気になりやっとの思いで購入。改訂前の方?全然売ってなかった!

    映画のシュガー訳わからんかったけど原作も訳わからん。普通に話してると思ったら次の行で平然と人殺しててめちゃ怖かった。
    第一章のベルの語りがこの恐怖の全てを物語ってるわ…
    生きてると何が起こるかわからないけど、こういうサイコパスと遭遇せずに一生を終えたすぎる

    ヒッチハイクで出会った女の子とモスの会話だけがこの物語の唯一の癒し

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    2024年05月26日
  • ザ・ロード

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    凄い言葉を生むための物語。

    胸に押し当てたいほど美しいものは全て苦悩に起源を持つ。それは悲しみと灰から生まれる。
    - 63ページ

    かたちを喚び起こせ。ほかになにもないところでは無から儀式を創り出しそれに息を吹きかけよ。
    - 86ページ

    善意が見つけてくれるんだ。いつだってそうだった。これからもそうだよ。
    - 326ページ

    全て凄い言葉。言葉に、“凄さ”を付与するための話。

    「火を運ぶ」という言葉が多義的に解釈されている。解釈に一側面を付け加えるならば、これは“律”だ。そして律は、人間の主観なしには作り得ない。人間が作るものには全てが信仰が含まれる。それは律であっても例外ではない。

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    2024年05月06日
  • ノー・カントリー・フォー・オールド・メン

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    追われる男、追う男、その跡をたどる男

    雨と銃と血の匂いのする物語は、ストーリーの矛盾を回避しようともせず、ひたすら“何か”を描き続ける。
    作者は、暴力と流血の中に、この世界と人の絶望を、独特の文章で綴る。

    「できることが何もないなら、そもそもそれは問題ですらない」
    そのことが、また、絶望につながる。

    わかったようでわからないこと……唯一無二のこの読後感は、嫌いではない。

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    2024年04月03日
  • 悪の法則

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    おれにわかるのはあんたが自分のした間違いを何とかしようとしている世界はあんたが間違いをしてしまった世界とは別の世界だってことだ。
    あんたは今自分が十字路に立って進むべき道を選ぼうとしていると思っている。でも選ぶことなんてできない。受け入れるしかない。選ぶのはもうとっくの昔にやってるんだから。

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    2024年03月26日
  • ザ・ロード

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    荒廃した世界をひたすら南に進む父と子の話。
    父として、息子としての考え方や心情態度の変化がおもろい。

    火を運ぶ者たちである。

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    2024年02月16日