コーマックマッカーシーのレビュー一覧

  • ザ・ロード

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    『信号弾はしゅーっと長く音を立てながら暗黒の中へ弧を描き海面よりも上のどこかで煙混じりの光にはじけてしばらく宙に懸かった。マグネシウムの熱い巻きひげが数条ゆっくりと闇の中をくだり渚の波が仄白く光って徐々に消えた。彼は少年のあおむいた顔を見おろした。
     あまり遠くからだと見えないよね、パパ。
     誰に?
     誰でもいいけど。
     そうだな。遠くからは無理だ。
     こっちの居場所を教えたくてもね。
     善い者の人たちにかい?
     うん。ていうかとにかく居場所を教えたい人に。
     たとえば誰?
     わかんないけど。
     神さまとか?
     うん。そういうような人かな。』

    目の前の本を読みながらどうしても他の本のことが頭

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    2023年07月01日
  • ノー・カントリー・フォー・オールド・メン

    購入済み

    ミスなの?

    おもしろいけど、改行だらけかと思えば、最後の方は、改行もなければ「、」も一切ない。読みづらいったらありゃしない。わたしだけ?

    #アツい

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    2023年06月11日
  • ザ・ロード

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    世紀末、自然災害か核戦争か、草木さえ死に絶えた希望のない世界で、生きるために南の海を目指して歩く親子。
    読み切るにはなかなかの精神力を要します。
    いま自分が住んでいる世界と真逆すぎて、ファンタジーのように見える物語ですが、もしかしたら、人はみんなあんなふうにただ生きるために生きているのかもしれません。
    生きるとはどういうことか、当たり前にあるこの世界は何と素敵なものか、色々と考えさせられる作品でした。
    散文的で静謐な文体も読みやすく、美しかったです。
    ぜひ。

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    2023年06月02日
  • ザ・ロード

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    どこまでも続く灰色の世界。
    常に死を近くに感じながらも、南は向かう。明確な目的地はなく、ただ暖かいからという理由で。
    坦々とした文体で描かれる、容赦ない自然、無惨な光景。
    希望とをもつとか未来を見るとかいった言葉がただ上滑りするだけのような状況下、短く交わされる父と子の会話が、読み進めるほどに心に染みてきた。
    純粋でまっすぐな視線をもつ少年の、存在そのものが希望か。

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    2023年05月22日
  • ザ・ロード

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    「森の夜の闇と寒さの中で目を覚ますと彼はいつも手を伸ばして傍らで眠る子供に触れた」最初の一行が始まる。

    おはよう、パパ
    パパはここにいるぞ。
    うん。

    繰り返し描写される周りの情景、それは「寒さ」と「飢え」と「怯え」。
    理由の見えない状況のなか、南へ向かう父と子の会話は、まるで詩の一遍のような響き。

    本当であれば「暖かい家と家族」に囲まれながら将来を夢見るはずの子供が、人を食らう人に怯え、生きるために人を殺めることを恐れ、死を身近に感じたまま、父と話す。

    もう死ぬと思っているだろう
    わかんない
    死にはしないよ
    わかった
    なぜもう死ぬと思うんだ?
    わかんない
    そのわかんないというのはよせ

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    2023年04月26日
  • ザ・ロード

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    ネタバレ

    死んでいく世界の中、必死にお互いを支え合う父と子。読み終わり、涙が溢れてきた。二人の会話から伝わる状況や心境の変化。虚しさも痛みもひしひしと伝わってくる。生きる上でどこかで割り切らないといけないという父が下す正しさと、本当にそれで良かったのかと疑問を抱く少年の優しさ。お互いがそれぞれの学びとなり支えになる。父と同じように読んでいる自分も少年に暖かさを感じた。彼から優しさを分けてもらった気がした。

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    2023年04月16日
  • ノー・カントリー・フォー・オールド・メン

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    個人的に現代アメリカを代表する最も重要な作家の1人と考えているコーマック・マッカーシーの長編第9作。既に単行本時として翻訳されていたが、当時の『血と暴力の国』から改題され、原題と同じ『ノー・カントリー・フォー・オールド・メン』として今回、文庫化で復刊されたのが喜ばしい。

    コーマック・マッカーシーという作家の魅力を説明しようとしたとき、「血と暴力の国」というワードは極めてシンプルにその魅力を表している。単行本時にこのタイトルが選ばれたのもよくわかる。本作を10ページほど読むだけで、5名が無惨な暴力で殺され、血に塗れることになるのだから。

    マッカーシーの作品は一般的には犯罪小説などの意味合いを

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    2023年04月16日
  • ザ・ロード

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    たぶん近未来のアメリカ。たぶん核戦争後の世界。数多くの動植物が滅んだ終末の世界。僅かな食糧を奪いあう残された人類

    ただひたすらに南を目指して歩き続ける、ひと組の父子の物語。暴力が支配する世界で、人は善き存在であり続けることは出来るのか

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    2022年12月31日
  • ザ・ロード

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    はっきりと明示はされていないがおそらく核戦争後のアメリカだった国が舞台。植物は枯れ動物は生き絶え、死が全てを覆った世界。空は灰色の厚い雲に覆われ、どんどん寒冷化が進んでいる。そんな世界で生き残った父子が南を目指して彷徨い歩く。

    「北斗の拳」や「ウォーキングデッド」のような終末後の世界を描いた作品だけど、動植物がほぼ完全に生き絶えてて食物生産ができない状況な分こっちの方がずっと条件がキツい。今ある保存食が無くなったら人間は何を食べるのか?読み進めると地獄のような答えがそこに待ち受けている。淡々とした冷静でリアリズムに徹した描写が、その地獄を現実味を帯びた説得力のあるものにしている。

    地の文は

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    2022年06月25日
  • ブラッド・メリディアン あるいは西部の夕陽の赤

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    乾ききった大地を進み
    汚れに汚れ、殺す、虐殺する
    原住民であろうがなかろうが
    まるで、それが当然の自然の行為であるかのように
    語られるほどの神も法もなく、
    なんの感情も必要以上の情報も加えず描き切る。
    凄惨なはずの津を死も不合理な死も
    あさましい生と同等に当然、自然の存在、行為として
    なにもまじえず描かれる。
    自分たちが倫理の名のもとに飾っている世界が
    乾いた風に吹き飛ばされ、腐敗した肉と乾いた風に
    吹きさらされた骨と皮、朽ち果てるであろう人工物
    その葬列の中を生き延びた先に待つのは悪のダンス

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    2019年12月04日
  • ブラッド・メリディアン あるいは西部の夕陽の赤

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    アメリカ西部の歴史はある意味虐殺の歴史。

    荒野の焚き火の中で浮かび上がるような血みどろの判事の神々しさに、畏れを感じると同時に惹かれざるえない。

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    2019年04月15日
  • ブラッド・メリディアン あるいは西部の夕陽の赤

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    この著者の作品を読んだのは『ザ・ロード』以来の2作目でしたが、これは読み手を選ぶ作品ですね。自分の場合、初読時はまったく乗れませんでした。インディアンの狩りが延々続くストーリーは単調だし、映像化不可能かつPTA有害図書指定確実な極悪非道で残虐なシーンのオンパレードに辟易。極めつけは時折出てくる句点で区切らない異常に長い文章で、読みにくいったらありゃしない・・・といった印象だったのですが、頑張って読み返してみるとこれはこれでなかなか味があるようにも思えてきました。
    本作のキモはホールデン判事が語る言葉の数々であることは疑いようがありません。自分が一番シビれたのは「人間が登場する前から戦争は人間を

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    2018年11月25日
  • チャイルド・オブ・ゴッド

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    国境三部作以降しか読んでなかったので、かなり驚いた。そこで主人公たちは、ひたすら謙虚に慎ましく生きるものとして描かれていたからだ。レスター・バラードは怖れ、毒付き、卑小な欲望に流され、涙を流し、生にしがみつく。ある意味、それらの主人公たちよりも人間らしいと言えるかもしれない。これはコーマック・マッカーシーが絶対悪を描き始める前に、人間の卑小な悪、それこそが本質だとでも言うように描いたものだ。ただ、やはり精緻な日々の営みや、自然の描写は詩的、神秘的で美しい。氏の作としては短く、読みやすい。っても、子どもにオススメできるような内容じゃないけど笑

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    2017年08月02日
  • 平原の町

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    コーマックマッカーシーの小説に出演することは不幸である。不幸困難にに痛めつけられる運命はあらかじめ定められていると語られる。それは小説の中の彼らの運命であり、小説そのものでもあり、また現実である。ため息が出るほど悪い方向へ進む顚末のかろうじての救いとなるのは、老人たちの哲学である。

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    2015年10月01日
  • 平原の町

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    マッカーシーの国境三部作の最後を飾る…とは知らず、
    越境を抜かしてこっちを先に読んでしまったことを後悔。

    ジョン・グレイディが前作に増して、
    悲しいほどまっすぐである。

    彼の作品はどうも序盤からとっつきにくいのだが、
    読みだすと止まらない。

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    2015年09月29日
  • すべての美しい馬

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    てっきり競馬か何かの話かと思ったが全く違った。

    国境を足で超えるって一つのロマンだなぁと思う。
    恋愛、暴力、生死の不条理さの描かれ方は上手い。
    なぜマッカーシはメキシコ、テキサスそして国境をこれだけ描写できるのだろうか。

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    2015年09月24日
  • ザ・ロード

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    廃墟を親子で彷徨い、父親が死に、また子どもが彷徨うという話である。映画化されたとあるが、日本で上映されたであろうか?
     再度読んだが前に読んだことを全く覚えていなかったのはそれだけ印象が薄かったからなのだろうか。
    6月にマッカーシーが死亡して、その追悼文が新聞に掲載されたので、再度読んだ。
     本棚の検索ではザ・ロードやロードの検索ではヒットせずに、マッカーシーでヒットした。カタカナの本の名前では検索できないというアルゴリズムのバグがあるのかもしれないし、・が入る検索はできないのなのかもしれない。

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    2023年07月18日
  • すべての美しい馬

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    一度読んだだけでは著者の文章の魅力には気づけないだろう。はじめは退屈に感じたが牧場に到着してからが面白い。物語の展開よりも、節々に出てくる、登場人物の長々とした一人語りに最も引き込まれた。

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    2015年05月28日
  • チャイルド・オブ・ゴッド

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    とある連続殺人犯のお話。内面は描かず、動機は問わず、ただたんたんと田舎のうらさみしい土地にたったひとり小屋に住み着き(無断)、狩をし、まきを割って暖をとる、そして気ままに暴力を振るい、動揺やためらいもなく人を殺す。彼は結局彼自身が送った人生に相応するような無機質な最後を迎える。読み終わって後を引くのは疑問や同情じゃなく、単純な淋しさ。

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    2015年01月10日
  • 越境

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     1994年発表 、コーマック・ マッカーシー著。少年ビリーは家畜を襲っていた狼を捕らえた。狼を故郷の山に帰すためにメキシコへ一度目の越境するが次々に悲劇に見舞われる。そして弟のボイドとともに二度目の越境、更に三度目の越境と連なり、ビリーは全てを失ってしまう。読点を極力省いた息の長い文章、鉤括弧を使わない独特な文体。
     マッカシーらしい荒野を馬で旅するロードノベルといった小説だったが、かなり哲学描写に振り切っているため全体的に神話を読んでいるような印象があった。純粋に話として面白く美しいのは前半の狼を帰す一度目の越境だろう。狼の存在が気高くて生々しく、読んでいると泣きそうになってくる。しかし中

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    2014年02月25日