コーマックマッカーシーのレビュー一覧

  • すべての美しい馬

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    イアン・マキューアンを読んで以来、現代海外文学の面白さに気づき、いろいろ読んでみたくなった。で、コーマック・マッカーシーを手に取ってみた。
    本作はメキシコが舞台の辺境3部作の一冊。

    いや〜面白かった。なんだろう。久しぶりの感覚。起承転結ありの正統派小説。血生臭くてグロくてあまりにも残酷な成長物語。

    馬と暮らしたい、牧場で働きたいとの漠然とした気持ちからグレイディは友達のロリンズと馬に乗り、テキサス州からメキシコへ国境を越えて行く。野宿をし銃で狩った兎をバラして食べ、川の水を飲み行く宛を探しながら旅をする。命の危険と隣合わせの旅。途中で見ず知らずの少年に会う。この少年も銃と立派な馬を持ってい

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    2025年09月30日
  • 平原の町

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    国境三部作のうち、すべての美しい馬と越境には幾度も目を通していたものの、この平原の町は未読のままだった。前二作が余りに素晴らしかったためその続編たる本作には何となく期待を裏切られそうな気もしてずっと手を出さなかったのだ。だが流石はマッカーシーいざ目を通してみればその心配は杞憂に終わった

    ジョンに起きた悲劇はキリスト教では邪悪な生き物とされる山犬(ジャッカル)の仔犬を彼が助けたことでもたらされた災いのように思えてならない

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    2025年07月04日
  • ザ・ロード

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    ハーラン・エリスンの「少年と犬」と並び、私のなかでは2大ディストピア小説。大好きだ。荒廃した世界で生きるために静かに移動し続ける父と息子。何度も読んでいるせいか時々断片的に夢に見る。

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    2025年06月13日
  • 越境

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    ネタバレ

    大まかなストーリーは背表紙に、捕まえた狼を故郷のメキシコへ越境して連れて行くと書いてありましたが、3分の1過ぎて予想外の展開に。

    前作よりストーリーのスケールは越境のほうが大きいと思いました。

    プリマ・ドンナや元老兵士そしてジプシー?や旅人が、様々な世界のあり方や捉え方を予言のごとく語ります。彼らにはビリーをどう見ていたのかどう映っていたのか。

    コーマックマッカーシーの本は時と場所を選んで静かに読みたいと思いました。

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    2025年04月19日
  • すべての美しい馬

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    全米図書賞と全米批評家協会賞受賞。映画化されている本作は、後の『越境』と『平原の町』を合わせて〈国境三部作〉と呼ばれる一作目。過酷な運命に翻弄される少年の成長を描く、ロードムービー的冒険譚の名作だと思います。

    あらすじ:
    16歳のジョン・グレイディ・コールは、祖父の死とともに牧場を失うと、一つ上の親友レイシー・ロリンズを誘って旅にでます。それは、高速道路に車が走る時代に、愛馬に乗って自らの居場所を求める越境の旅でした。途中、荒涼とした大地を旅するうちに、後に彼らの運命を翻弄することになる年下の少年と出会い、連れ立って旅を続けた一向に待ち受けていたものとは……。

    翻訳がいいのか、クセのある濃

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    2025年04月01日
  • 越境

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    著者の作品は、映画の脚本としては触れてきたが、小説は初めて読んだ。
    暗喩や挿話が多く、読み進めるのに体力が必要な文章。
    3度にわたる越境がビリーに大きな喪失をもたらすことになるが、成長や教訓のようなポジティブな要素を安易に提供してはくれない。
    アメリカと異なり、野生的な世界を感じさせるビリーから見たメキシコは観念的で、神話の世界のようでもある。

    3部作の1作目を読まずに本作を手に取ったが、全く問題なし。ただ、3作目は1作目の主人公とビリーが共演するようなので、1作目から読んでみたくなった。

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    2025年03月16日
  • すべての美しい馬

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    一家の営む牧場の売却を知った少年が自分らしく生きられる地を求め愛馬と共に越境して経験する喪失と再生の物語。単なる青春小説の枠に収まらぬ深遠で非情な世界は著者ならでは。中盤からの激しくも哀しい展開が心を揺さぶる

    我々は兎角人生の分岐点を運命と云う言葉で表現しがちだが本作のなかでアレハンドラの大叔母が語るようにそれはコインの裏表で未来を占う以前の鋳造段階からすでに結果が決められているものなのかもしれない

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    2025年01月26日
  • ノー・カントリー・フォー・オールド・メン

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    〈眼は魂の窓だとよく言うだろう。すると魂のない人間の眼はなんの窓なのかおれは知らないしどちらかというと知りたくない気がする。しかしこの世には普通とは違う世界の眺め方がありそんな眺め方をする普通とは違う眼があってこの話はそういうところへ行く。〉

     訳者あとがきで知ったのですが、タイトルの『ノー・カントリー・フォー・オールド・メン』はアイルランドの詩人イェイツの詩の一節で、「老人の住む国にあらず」が直訳になるそうです。理解できないものと対峙することになる非情な現実が、言葉という表現で強烈に迫ってくる、ちょっと他では代替できないような読書体験が味わえる一冊です。

     メキシコの国境地帯で麻薬密売の

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    2024年11月14日
  • 越境

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    過日亡くなった米国文壇の巨星による深遠で荘厳な放浪青春譚。手負いの牝狼を故郷に帰すべく主人公が国境を越える第一章の話は動物文学としても秀逸。何かと軽薄が持て囃される時代に抗う哲学的重厚さが心を揺さぶる。格調高き訳文も良い

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    2024年10月25日
  • ザ・ロード

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    ネタバレ

    ずっとドキドキしながら読んでいる
    読むのを止められない、少年が生きているか?死なないでと思いながら読む
    子持ちは読むのが辛い、ハッピーエンドを期待して読む
    ハッピーエンドなんてありえるのか?全く想像もできないけど少年が死ぬのだけは耐えられない

    今後存在しないものは今まで一度も存在しなかったものとどう違うのか

    男に刺されそうになる少年をなんとか守り抜いた彼、大事にしているのは少年の生なのか、それとも自分の希望なのかどちらだろうかと思った
    しかし最後まで読んでみて、そんなエゴの存在はわからなくなってしまった、自分より先にこどもが死ぬ、それが何よりも耐え難いのは分かりきったことだったなと思う

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    2024年06月13日
  • ザ・ロード

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    ネタバレ

    初コーマック・マッカーシーは、世界的なベストセラー小説でピューリッツァ賞も受賞しているこの本から。

    おそらく核戦争があった後のアメリカ大陸を歩いて旅する父と息子の物語。塵によって太陽光が遮られ気温が下がり、人間以外の生物もほぼ死に絶え、生き残った人々は、奪い合い殺し合い、死人を食らうようなことまでしつつ生きているディストピア。

    父子も、体臭と汚れにまみれたボロボロの服を着て毛布や防水シートをまとい、ショッピングカートに生活品を乗せて移動しつつ、廃墟を漁り日々を凌ぐ。読んでいるだけで寒いし飢えるし喉が渇く。だが決して人の命や財産を奪うことはしない、生きていくために廃墟を漁ることはしても、人の

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    2024年05月30日
  • ザ・ロード

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    ゾンビやターミネーターのいない未来社会と思われる世界を父と子が歩いていく。途中の出来事に徐々に吸い込まれる涙なくして読めない傑作。

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    2024年04月05日
  • すべての美しい馬

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    ブラッド・メリディアンでコーマック・マッカーシーのこと大好きになったけど今作もやっぱり面白かった。
    よく感動した作品などに心に刺さるって表現をするが本作は精神に沈み込んでくるような感覚を覚える。ゆっくりと読み進めてじわじわと精神に作用してくるような。
    にしてもボーリングのピンを立てる仕事ってなんなんだ

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    2024年01月30日
  • ノー・カントリー・フォー・オールド・メン

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    もともと『血と暴力の国』というタイトルで翻訳されていたものが改題、改訂、文庫化されたもの。

    解説にもあるが、確かに改題後、つまり原題のほうが保安官ベルの独白が物語の間に挟まれることにより意図されることが明らかな感じがする。
    犯罪者、というか、シュガーが特異過ぎてちょっと笑える。そして、事件が解決するとかはほんとにどうでもいいもころがマッカーシーぽくて、好きだとわたしは思ったのだ。

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    2023年12月15日
  • ノー・カントリー・フォー・オールド・メン

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    最初にモスが出てくるシーンからぐいぐいと引き込まれ、シガーとガソリンスタンド店主のやり取りで、たまらん感じになる

    しかしカーラ・ジーンが19歳ってどうなのよ、とは思う

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    2023年12月10日
  • ノー・カントリー・フォー・オールド・メン

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    ネタバレ

    ベトナム戦争の退役軍人で今は溶接工をしてるとかのモス、冷徹に人を殺しまくるシガー、老保安官のベルの3人が主な主人公。プロットとは別に、ベルの独白というかインタビュー?が挟まれ、話のテーマ的にもベルが中心に据えられていると考えられる。麻薬取引のトラブルをきっかけに、それぞれの人生が大きく動いていく。
    昔とは変わってしまったアメリカに対するベルの悲しさや虚しさが全体を貫いている。ただ、ある観点では昔は平和だったとはいえ、ベルの祖父世代、親世代そしてベル自身とそれぞれ戦争に行っているので、単純に昔が良かったとは言えなそう。
    今まで読んだマッカーシーの作品の中では一番分かりやすく、読みやすかった。

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    2023年10月22日
  • ブラッド・メリディアン あるいは西部の夕陽の赤

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    人生ベスト級
    句読点が少なくセリフに「」がなかったり読みづらくはあるのだが冷徹さと重厚さを備えていて唯一無二のその文章には圧倒される。人にはお薦めしづらい内容ととっつきにくさはあるのだが興味をもった人にはぜひ読んでいただきたい
    読んだあと意外だったのはこの話はSamuel E. Chamberlainの自伝『わが告白』に描かれているグラントン団での出来事を元ネタにしているということだった。名前までそのまんまだ。さらにびっくりなのがあの超人然とした判事までもがモデルがいるという。俺は本書の判事が好きで彼の語っていることは完全に同意せずともそれなりに共鳴するところもあり気に入っている。
    あまり関係

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    2023年10月03日
  • ノー・カントリー・フォー・オールド・メン

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    名作。コーエン兄弟のアカデミー賞受賞作『ノーカントリー』の原作。映画をみてから原作を読んだけれど、映画には映画としての良さがあり、小説には小説の良さがある稀有な作品。映画ではシガーの無表情に殺戮を犯して行くシーンや、アメリカの荒野の印象が深く、またモスの妻の妙な可愛らしさが印象的だったけど、小説ではここの保安官のベルのモノローグが印象的。彼のモノローグに漂う世界に対する絶望感が作品に満ちている。こんな酷い世界に生きる意味はあるのか。それでも人は生きているのだけれど、それって何でなんだろうか、、。そんな思いを抱く。

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    2023年09月23日
  • ザ・ロード

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    灰色の世界を生きる父と子の物語。
    作者の「息子に捧げる」という何とも心にズシンとくる計らい。
    父の子を守ろうとする強さと、子の父や(こんな状況でも)他人を思いやる純粋無垢さが、世界の荒廃、人間性の崩壊に対して、どう立ち向かい、導かれていくのか。
    星の光以外見えないような暗闇、静寂の中で読んだこともあり、世界、人間の行く末を、この本から見てしまったのか…?と深慮を巡らす。

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    2023年09月05日
  • ザ・ロード

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    ネタバレ

    終末を迎えつつある世界でなんとしてでも息子を守ろうとする男が、最後まで父親として存在していたのが良かった。信じられるのはお互いだけ、という点が揺るがなかった。だから孤独で危険な旅も続けられたし読者としても安心できた。
    父親のサバイバルスキルが高くて、色んな工夫を読んでいるだけで面白かった。読点がほとんどない、流れるような思考と会話の中に、記憶が混じってくるのも物語に没入できる理由なのかなと思う。
    人が人を食うほど食べ物がない事態で、自分も痩せ細ってしまったのに少年の心は清らかで、他者を殺してまでは生きたくないという意志が強かった。その彼が無惨に殺されるようなことがなく保護者が現れ、いくらか救わ

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    2023年08月18日